「より安全な原子力」でエネルギー問題解決?45年ぶりのトリウム溶融塩炉がオランダで試験開始
メルトダウンが起きにくく廃棄物も毒性が低い
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オランダの原子力研究機関NRGが、燃料にトリウムを使う「より安全な原子炉」の試験を開始したと発表しました。オランダでは45年ぶりのトリウム原子炉(溶融塩原子炉)の運用となります。
一般的な原子力発電ではウランやプルトニウムを燃料として使います。一方、トリウム原子炉ではトリウム232の原子核に中性子を1つ与えてトリウム233とし、それがプロトアクチニウム233を経てウラン233へと変化させて核分裂反応を引き起こします。
NRGが研究を進める溶融塩原子炉では核反応のための冷却剤として低圧下でフッ化物塩を使います。トリウム塩をこの溶融液に溶かしこみ、そこに中性子を照射することでトリウムを変換して、エネルギーを抽出します。
トリウムを燃料とする原子力発電は、かつては米国やドイツなどで研究されました。またトリウム資源が豊富なインドでは現在8基が稼働しています。トリウム原子炉には、一般の原子炉に比較して安全性が高く、しくみ上メルトダウンなどを引き起こす可能性が低いといった長所があります。
ではなぜトリウムを燃料とする原子力発電がさほど普及してこなかったかと言えば、トリウム原子炉ではウランよりもエネルギー源として優れるプルトニウムが生成できないことが挙げられます。ウランを燃料とする原子炉では、エネルギー源として優れるプルトニウムが取り出せることから、(軍事的な使用目的もある)より高純度なプルトニウムを生成できる高速増殖炉などの研究開発が盛んでした。
しかし最近の世界情勢では、気候変動の問題などからよりクリーンなエネルギーへの関心が高まり、災害が発生した場合にその処理が難しい原子力発電をやめる流れも生まれています。ただし脱原子力だけではエネルギー供給の穴を埋めることはできません。このためトリウムを使う安全性の高い原子力発電がその解決策のひとつとして研究されています。
NRGでは今後、原子炉内の熱を維持する耐熱性と溶融塩への耐腐食性能をそなえる材料開発を進めるとしています。また毒性こそかなり低いとはいえ、やはり生成される放射性廃棄物を処理する方法を発見する必要があるのは、一般的な原子力発電と同様です。
[Image : NRG]