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何故みんな、VALUで失敗するのか? - 本田康博 (証券アナリスト)

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先週の日経QUICKニュース(2017/8/25付)「市場の注目を集めた記事一覧(17~23日)」で、ランキング上位に国内外の株式市場等にまつわるニュースが並ぶ中、3位に挙げられたのが『VALU「売り逃げ」騒動』を取り上げた記事でした。人気YouTuberが起こした騒動が世間の耳目を集めたことで、VALUの「名前は知っている」という人は、かなり増えたことでしょう。

「だれでも、かんたんに、あなたの価値をトレード。」

WEBサイトのトップページでVALU自身がそう謳うように、VALUは、個人の価値を仮想通貨で取引するサービスだとされています。

一人一人に発行されたその人固有のVAと呼ばれるVALUトークンを、本人から他の誰かに売却したり、他人同士で売買したりすることで、その人の価値が取引されるという仕組みです。(※ トークンとは、特定の場所や目的でしか使えない仮想通貨的なもの。)

■「だれでも」「かんたんに」は本当か?

「だれでも」「かんたんに」と公に謳われてはいるものの、自らのトークンを自分の思うように売り出したり、自分が保有する誰かのトークンを自分の思うように売買することは、実はそれほど簡単ではありません。ただ、発行後間もない間に限れば、自身のトークンを徐々に売り出すのは、通常それほど難しくはありません。

筆者自身のVALUトークンは、1VAあたり1,000円ほどからスタートしましたが、徐々に売却しながら約一か月かけて10,000円程度まで値上がりしました。この間、筆者からトークンを購入した他の方からの保有分売却はありませんでしたが、本来であれば、保有する他人のトークンを売却する場合もこのフェーズで処分するのが最も容易なはずです。

しかしながら、この上昇フェーズが終わると様相は一変します。売りが売りを呼びつつ第三者間の取引を伴いながら値下がりするのはまだ良い方で、売買が成立せずに値下がりすらできないケースの方が、むしろ多いように見受けられます。

この、買い優勢から売り優勢に反転した後に、売り手にとっても買い手にとっても難しくなるという状況は、必ずしも売り手や買い手の責任ではありません。

これは、実は本質的には構造的な問題なのです。筆者はこれを、「VALU市場の失敗」と密かに呼んでいます。

■「VALU市場の失敗」のしくみ

VALUの取引価格は、前日までの最終価格に対し、上値は150%(ストップ高)、下値は75%(ストップ安)以内に値幅制限されています。その値幅制限の中、とにかく上昇フェーズで価格を上げようとするならば、前日の150%価格で少数ずつ売り出していくのが最も効率的だと言えます。

図では、毎日1VAずつストップ高で売り出していき、ついに買い手がついてこなくなった時点を考えてみました。

VALU市場の失敗のしくみ

トークンのほとんどを保有するのは発行者ですが、VALUが発行者の価値をトレードする市場である以上、均衡価格を決めるのは、発行者以外のトークン保有者の供給曲線(オレンジ色)とトークン需要者の需要曲線(黒色)が交差する地点です。均衡価格が現在価格よりも高ければ上昇圧力、低ければ下落圧力です。図に示す通り、少数売出しのため供給曲線は緩い右肩上がり、需要曲線は右肩下がりとなります。

株式等とは異なり、多くの場合、VALUの需要曲線の根拠となっているのは本源的価値(ファンダメンタルズ)ではなく、「皆が上がるだろうと思うはずだからきっと値上がりするだろう」という、ただの「値上がり期待」というのが大きな特徴です。一種の「美人投票」のようなものです。

需要の根拠が「値上がり期待」だけだとすると、買い手がついてこなくなった時点で期待は急速に萎むことになり、需要曲線は急激に左シフトします。結果、需要曲線のシフトに伴って、青☆から赤☆へと均衡点が移動します。

このとき、もし市場が効率的に機能していれば、均衡点に向かって価格は調整されていくでしょう。ただ、値下がりが更に期待を萎ませるため、いずれは本源的価値に見合うレベルか、あるいは合理的に値上がりが期待される水準まで、徐々に価格が調整されることになります。

ここで問題なのは、新しい均衡価格が値幅制限の下限を超えてしまいがちだとういう点です。VALUでは、いくら売り気配(売りのニーズ)が強くなっても実際に取引が成立しない限り現在値が下がらない仕様のため、均衡価格が値幅制限を大きく下回る場合、いつまで経っても価格調整が行われません。値下がりもしないがまったく取引が行われない「死にトークン」が生まれてしまうことになります。

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