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「キュート」はほめてない 米西海岸・起業家の旅 ウォンテッドリーCEOの仲暁子さん

2016/10/11

仲さんは、「調達金額の規模が小さい」という意味で「キュート」といわれ、グサっと突き刺さったという

 一方のシリコンバレー。足元の景気は伸び悩み、破綻する企業もある。しかし、実績ゼロの無名のスタートアップ企業でもビジネスモデルや製品サービスが評価されると、ベンチャーキャピタル(VC)は多額の投資をしてくれる。 人材の流動性はダイナミックで、日本のように大企業に人材が滞留し、高齢化しているわけではない。「雇用が安定しているのはいいけど、活性化していない。日本の未来を考えると怖くなった」という。

 実は仲さんがシリコンバレーを訪れたのは初めてだった。京都大学卒業後、米系投資銀行に勤務。その後、フェイスブック日本法人を経て、起業した。学者の母親が名門の米デューク大学で研究活動をしていたこともあり、1年間をノースカロライナ州で暮らした経験もある。それだけに米国に強い憧憬を抱いていたわけではない。シリコンバレーに滞在したのは約1週間程度で、スタンフォード大学やフェイスブック本社などいくつかの企業を回った。街自体は「東京に比べて殺風景な感じの地方都市」という印象しかなかったが、その街で躍動する人々の姿に強い刺激を受けた。

 だからといって米国市場を今すぐ攻めようとは思わない。「米国市場の攻略には優れた戦略と武器が必要」。しかもビジネスSNSではリンクトインなどのネット大手が米欧の英語圏で先行している。「我々のサービスと相性がいいのは日本に近いアジア。特にシンガポールやインドネシアではまだビジネスSNS市場は開拓しつくされていない」。今、仲さんは、シンガポールやジャカルタを頻繁に訪れている。近くシンガポールにオフィスを開設する予定だ。仲さんの目は今、東南アジアに注がれている。

仲暁子氏(なか あきこ)
ウォンテッドリー代表取締役CEO。1984年生まれ。2008年、京都大学経済学部卒、ゴールドマン・サックス証券入社。退職後、フェイスブック日本法人に初期メンバーとして参画。10年9月、現在のウォンテッドリーを設立し、フェイスブックを活用したビジネスSNS「ウォンテッドリー」を開発。12年2月にサービスを正式公開。

(代慶達也)

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