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【論文紹介】子育て中の夫婦における育児価値観の日中比較

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「子育て中の夫婦における育児価値観の日中比較」という面白い論文を発見しました。

家事育児問題について論争になることは多いけれども、あまり諸外国との比較を見ることがないなあと思っていたので、とても興味深かった。

日本人夫婦と中国人夫婦の子育て観を比較したこの論文の結論をいうと

  • 日本人のほうが「子育ては女性の役割」と思いがち
  • 日本人のほうが、子育て中心の生活になりがち
  • 日本人のほうが、外部の手助けに頼らず、夫婦だけで子育てを引き受けがち

 

もうちょっとだけ詳しく見てみましょうかね。

 

 

論文について

千葉大の森恵美先生を中心に、4名の日本人(准教授・大学院生)と1名の中国人教授が執筆した論文のようです。

引用数は4つ。論文執筆は2012年で、調査は2005年のよう。

また、残念ながら私の検索スキルでは日本語論文を見つけることができなかったので、拙訳で我慢してね。

onlinelibrary.wiley.com

 

私は結論だけを書くので、調査対象者の属性や、調査手法や分析方法などの細かい点は、論文を参照してね😉

 

論文要旨(abstract)のさらに要約

質問紙法(『子育て観尺度』という、執筆者が開発に関わったものがあるらしい)で、432組の日本人子育て夫婦、235組の中国人子育て夫婦に質問をした。

  • 「親役割観」(訳者注。親は○○すべきという考え方か)については、日本人夫婦の平均点が顕著に高い
  • 「子育ての否定的印象」と「周囲との関わり」は、日本人の父親が、中国人の父親に比べて顕著に低い

つまり、日本人の夫婦は、母親が子育ての役割を負うものだという認識が強い。この認識が、夫婦外の他人によるサポートを得る障害になっている。一方、中国人の夫婦は、家事育児を分担すべきという思いが強く、公的・私的なサポートをコミュニティから得ている。

これらの研究結果から、子育て中の夫婦はコミュニティとヘルスケアのサポートが必要だと指摘している。

 

サマリー(summary)の要約

この調査でわかった結論としては、冒頭でも述べた通り、次の3点。

  • 日本人夫婦のほうが「子育ては主に女性の役割」と思いがち。中国人夫婦は、役割は分け合うと考える傾向に。
  • 日本人夫婦のほうが、子育て中心の生活になりがち。(子育てはトッププライオリティであり、親は子育てのために犠牲になってもやむを得ないと考えがち)
  • 日本人夫婦のほうが、外部の手助けに頼らず、自分たちで子育てを引き受けがち。一方、中国人夫婦は、外部の手助けを得て当然と考える傾向。

 

これらの違いは、文化的、社会的環境の違いによるものと、執筆者は推測している。

  

p値(有意確率)0.1%の問い

日中の比較において、有意確率が0.1%であった問があった。有意確率の話をするとややこしいのだが、めちゃめちゃ乱暴に言って、次の3点を日本人夫婦は(中国人夫婦とくらべて)信じているといっても差し支えない、と思ってもらったら良いと思う。

  • 夫婦は、子どものために犠牲にならないといけない
  • 夫婦は、子育てを人生のトッププライオリティにおかなければならない
  • 母親は、自分自身を、子育てに捧げなければならない

 

一方、中国人夫婦は(日本人夫婦と比べて)、次の点を信じているといっても差し支えない。

  • 子どもが良好に成長するか、悪く成長するかは、親の努力にかかっている

 

この調査に限ってのことではあるけれども、日本人は(中国人とくらべて)、育児に人生をかけがちであるという結果が見られる。調査対象となった日本人は核家族の専業主婦家庭が多めである一方、中国人は拡大家族(多世代世帯)の共働き家庭が多めである、というような環境の違いもあるのだろうね。

 

外部の手助けに頼るということ

家庭の環境が違うので、必ずしも中国人の考え方が参考になるわけではないけれども、「外部の手助けに頼る」という考え方は、もう少し日本でも取り入れられたら……と私も思っている。

「外部の手助けに頼る」ことについては、以前、北欧かどこかの国の事例を聞いたことがある。その事例によると、北欧のどこかの国の共働き夫婦の場合は、家で料理をすることはほとんどなく、出来合いのピザかなにかを買ってきて、レンジでチンするのが一般的、という内容だった。

(どこまで「北欧家庭」として一般化できる内容なのかはわからないけどね)

私の奥さまにも若干そういう部分があるけれども、「子どもにはちゃんと手作りの愛情こもった料理を食べさせないと」という義務感が、日本人にはあるのかもしれない。

 

私が子どもの頃のことだけど「鍵っ子はかわいそう」と言われていたことがあった。昭和の終わりごろでも、共働き夫婦やシングルマザー・シングルファーザーは当然にいて、そのような家庭では、学校から帰った子どもは一人で留守番をし、作りおきのおかずをレンジでチンして食べるという生活だった。

そして、そういう子どもが哀れみの目で見られ、鍵っ子にしてしまう親に非難の目があった、という風に記憶している。

 

私たちは、そういう価値観の中で子ども時代を過ごしてきた。鍵っ子、親の不在。親子そろった温かい家庭で、手作りの料理を食べる「べき」という価値観が、家事育児の外部化に対する罪悪感を生んでおり、その結果として、子育てのために自己を犠牲にすることや、親としての自分の役割を過度に意識するということにもつながっているのかもしれない、とこの論文は想像をさせる。

 

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