先日、坂爪圭吾さんという方のジーザスクライストスーパースターみたいなブログを発見してしまいました。(読者が4300人近くいるので、ご存知の方も多いのでしょうが)
この記事のブコメで精神科医通いを勝手に止めるのはヤバイ。という意見が多く、まあ、お気持ちは分かるのですが。結局坂爪さんに対する「羨ましい」という気持ちに流されている方が多いように感じました。
れいじさんも、「嫉妬で狂いそうになる」(程面白い、楽しいことやってる)とおっしゃっていますし。
過去記事まだ、読み始めたばかりないので、やめとこうかな、とも思ったのですが、今、書きたいと思ったので、書いちゃいます。
私の直感でいくと、この方、「神様の声」が聞こえているんだと思います。
活動も、大変ロックで、ジーザスクライストみたいだし(なんて言うと、キリスト教の方に怒られそうですが)。
それを、双極性障害のせい、精神病のせい、としてしまえば良いのか、というと、うーん。どうなんでしょうね。「自分や、近しい他人が精神的苦痛を味わう」というのが私的、精神病の定義なので。
双極性障害の方の治療は困難を極めます。
生涯治らない。
というか、一回診断されてしまうと、将来、又、どえらい躁状態になって、人生を棒に振る危険を避けるために、お薬を一生のみ続ける方も多いです。
が、気分安定剤みたいな
「お薬飲んで躁状態の素晴らしい気分を味わえないくらいなら、生きている意味なんかないやろ!」
と、治療を拒否される方も多いのが、双極性。
はっきり言って、御家族の方達が、困られるんですよね。
テンパってくると、何言っても聞かないし、勝手にお金はじゃんじゃん使うし、クレイジーな事を誰彼かまわず、まくしたてて、信用を失ったりもするので、もう、目が離せません。
躁状態から下りてくると、ドン底です。躁状態の時にやってしまったことを思い起こすと、自己嫌悪で死にたくなる。ってのもあるあるです。
しかし、別名、創造の病、とも言われるほどに、クリエイティブな方々に多い双極性障害。
美術、文学、音楽等、多分野に渡って活動的な方々には、双極性罹患率が高いのが特徴です。
躁状態(比較的稀ですが、鬱状態でも)の時には統合失調の症状が出たりもします。
他人には見えていないモノが見えたり、聞こえたりしちゃう、アレです。
表現力のある方は、妄想に形を与えることができるので、芸術家として名を上げることができるのでしょう。
躁になると、自分は何でもできる、という、自己肥大感、俗に言う、誇大妄想に駆られます。
アメリカの都市部では路上によくいらっしゃる、
「自分は救世主であーるー」
とか、言っているおじさま達が、そうですね。(彼らは、純正の双極性なのか、ヤクの影響でそうなっているのか、怪しい新興宗教開祖なのか、判断に苦しむ所なのですが…)
宗教家の方々も、躁状態時に聞こえる「神のお声」を言語化し、伝えているとも解釈できます。
コミュ力さえあれば、カリスマ的に、同調者を集めることが可能ですから。
双極性障害=才能である、と勘違いされては困るので、明確にしたいのですが、クレイジーな妄想に、他者からの共感を得られる形を与え、伝達する、という作業には大変な自制心と不断の努力を伴います。
坂爪さんの例でいくと、持ち前の「貧乏性」で、病がもたらす「自己肥大」に打ち勝つべく、不断の努力をなされておられる、ということなのではないか、と思います。
坂爪さんは、面白おかしく、端的に「貧乏性」と要約されておりますが、病と看做されるほどに、絶大な破壊力を誇る、躁状態における浪費衝動に拮抗するには、並大抵ではない自己嫌悪感を克服し、自制心を働かせなければならないのだと思います。
その努力故に、楽しい事をどんどんやれるし、発信力も偉大で、人がどんどん彼の周りに集まるのではないでしょうか。
ジーザスクライストの様に、嫉みに駆られる大衆に磔にされて、壮絶な死を遂げられないことを、心からお祈り致します。
なんて、過激なことを書いてしまって、誤解されると困るのですが、坂爪さんの自己啓発メッセージも、楽しいご活躍も、素晴らしいと感銘致します。
が、メラニー・クライン曰く、人の最も破壊的な衝動は愛するモノ、良きモノを滅茶苦茶に破壊したくなってしまう、ネタミであります。
坂爪さんは、そういった、残虐な破壊衝動の対象になり得るほどに、羨望を集めてしまうのではないか、と危惧する私はワナビー楽観、実は悲観論者です。
以下、蛇足です。
因みに、私が交流のある精神科医の間では、パキシルを含む、セロトニン系のお薬を、躁状態になったことがある患者さんにいきなり処方することは禁忌とされております。(鬱を緩和するお薬なので、一気に躁状態に移行する危険性のため)
双極性の傾向が疑われる欝の患者さんには、まず、ウェルビュートリン等の、非セロトニン系のお薬から、処方するのが常套手段となっております。
効き目や、副作用を考慮した上で、後々、セロトニン系を試すことはあっても、双極性障害の診断を下した患者にいきなりパキシルをどんどん処方増してくる医者は完全にヤブでしょう。なので、通うの止めて大正解だと思います。(しかも、気分安定剤が処方されていない…)
それと、パキシルは短期間で効き、即効性があるのですが、いきなりやめるとインフルエンザに罹ったような禁断症状があらわれることがあります。そんなことになりたくなかったら、徐々に減らせばよいだけのことですし、急に止めても、命に関わる重大事には中々なりません。
っでか、お薬止めたいって思うような患者さんは往々にして、飲み忘れたりしているので、急に止めたとしても、実はそんなに急ではないことの方が多いですしね。
加えていえば、過剰服薬の方が、よっぽど命に関わる危険性は高いそうです。なので、ブコメの反発も、ちょっと、アレじゃない?と思います。
信頼できる医師を見付けるのはとても大切ですが、気分安定剤を一生飲み続けることだけが双極性障害への対応ではないとも考えられています。分析家と、2足の草鞋を履く精神科医には、昨今のお薬屋さんと化してしまった医学に不満を覚えておられる方も多いですから。
「薬を飲みたくないのなら、もう来なくて良い」
とか言わずに、副作用の症状をきちんと把握し、患者の
「お薬を止めたい」
という要望に真摯に対応してくれる、良医と出会いたいものです。
詰まる所、自己理解を深め、病的になり始めた時点で、気付いてくれるなり、話会える相手(良医や、家族)との信頼関係を築くことが一番重要だと知り合いの精神科医も言っております。