「楽して登るな」困難極めた聖地への鉄道計画

鉄道会社目指していた「身延山ロープウェイ」

「水戸岡デザイン」に生まれ変わった身延山ロープウェイ。もともとはケーブルカーが建設されるはずだった(筆者撮影)

山梨県南部の身延山(標高1153m)は、日蓮宗の総本山「久遠寺」があることで知られる。この地で晩年を過ごした宗祖・日蓮は、故郷(現在の千葉県鴨川市小湊)のことを思い出しては身延山の険しい坂を登り、山頂から故郷のほうを見て両親を追慕したという。山頂の近くには「奥之院思親閣」と名付けられたお堂がある。

現在、身延山南麓の本堂と奥之院は「身延山ロープウェイ」で結ばれている。運営しているのは、富士急行グループの「身延登山鉄道」。2011年7月には、JR九州『ななつ星in九州』や富士急行『富士登山電車』などで知られる工業デザイナー・水戸岡鋭治さんのプロデュースによりリニューアルされた。

ロープウェイだが「鉄道」会社

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鉄道事業法では、鉄道による運送業を「鉄道事業」、リフトやロープウェイなどの索道による運送業を「索道事業」と定義。鉄道と索道を明確に分けている。厳密に言えばロープウェイは鉄道ではなく、それを運営する会社が「鉄道」を名乗っていることに、少し違和感を覚える。

これには理由がある。三井建設の花井頼三社長を代表とする発起人グループが1958年2月6日、地方鉄道法(現在の鉄道事業法に相当)に基づきケーブルカーの地方鉄道免許を申請。同年12月13日に免許が下りた。ケーブルカーは法規上「鋼索鉄道」に分類されており、当初は正真正銘の鉄道を建設しようとしていたのだ。発起人には、後に自民党の衆議院議員として政界に君臨した金丸信も名を連ねていた。

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