時代の正体〈511〉ミサイル避難訓練(上)もう「戦前」ではないか
- 公開:2017/08/25 12:58 更新:2017/08/27 11:47
- 神奈川新聞
北朝鮮の弾道ミサイルの飛来を想定し、県内で初めて行われた平塚市の住民避難訓練。参加者約200人が体育館に集まり頭を抱えてうずくまった。自治体担当者は趣旨について「まず必要な行動を知ってもらいたい」と強調する。だが識者からは「意味がない」「非常時の心理を日常化する狙いではないか」と問題視する声が上がる。飛来する弾道ミサイルに対処する訓練に、一般市民を参加させる。これはもう「戦前」ではないか-。
続きを読む
19日午前、平塚市では毎年恒例の「総合防災訓練」が開催されていた。その冒頭、午前9時15分。関東近辺に向けて弾道ミサイルが発射されたと想定し、会場となった体育館周辺と市総合公園に「訓練、訓練。ミサイル発射、ミサイル発射」と、全国瞬時警報システム(Jアラート)の音声が響き渡った。
同20分。参加者らは窓ガラスの少ない体育館2階の客席に誘導され、また放送が流れた。「落下の可能性があります。頭部を守ってください」。参加者は頭を抱え、うずくまった。
同21分。「ミサイル通過。この地域の上空をミサイルが通過」と放送され訓練を終えた。
あいまいな想定
政府は今年4月、各都道府県の危機管理や災害対策の担当者約70人を集め、弾頭ミサイルを想定した住民避難訓練を開催するよう求めた。
平塚市はこれを受け、検討を開始。毎年実施している総合防災訓練の冒頭に組み込む方針を7月20日に決定した。防災危機管理部の6~7人の担当者が協議したが、「意味がない、やる必要はない、という意見が出ることはなかった」という。
担当者は「ミサイルが体育館を直撃すれば意味がないかもしれないが、そうでなければ屋内の方が爆風を避けられる。頭部を抱えた方が命を守れる」「Jアラートのサイレンを聞いたことのない人も多かった。どのような音が鳴るのかを知るだけでも訓練の意味はあった」と強調した。
「ミサイル攻撃の対応ということは戦争への備えだ。つまり戦前。そうした訓練を実施しているという認識や自覚はあるか」と記者が問うと、平塚市の担当者は答えた。「戦争になるかどうかは国の話。市としては市民に脅威が迫ったときに、どうすればいいのか伝えなければいけない」
だが、訓練の前提となる細かな「想定」はない。どのような種類のミサイルが、どこに落ちてくるのか分からない。そのため被害程度も不明だ。避難行動の根拠を問うと、こう返答した。
...
COMMENTSコメント
※このコメント機能は Facebook Ireland Limited によって提供されており、この機能によって生じた損害に対して株式会社神奈川新聞社は一切の責任を負いません。