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- ・シェアオフィスの新しい波「コワーキング」
- ・クリエイター向けではなく法人向けのシェアオフィス「WORKSTYLING」
- ・「コミュニティをうまく作ること」と「生産性の向上を示せること」
激化するシェアオフィス市場にどんな勝算があるのか?三井不動産の法人向けシェアオフィス「WORKSTYLING」を手がける川路武氏に現状と将来性を聞く。(聞き手:厚切りジェイソン・佐々木紀彦NewsPicks編集長)
「コワーキングビジネス」とは?
厚切りジェイソン:
「コワーキング」と「シェアオフィス」はどう違うんですか?
川路:
実は、明確な定義はないんです。2000年より少し前から、欧米を中心にコワーキングという新しい働き方が生まれました。クリエイターやフリーランス、エンジニアの方々が同じ大空間で机をひとつにしてモバイルで仕事をする形態です。
もっと前から、レンタルオフィスやシェアオフィス(自社で1室借りるのではなく、小分けにして受付機能などをシェアする)ビジネスは行われていました。
厚切り:
日本企業はそういったサービスを利用している?
川路:
コワーキングという新しい波を、企業は今まではあまり利用してこなかったと思います。日本におけるコワーキングの歴史は、今盛り上がっているコワーキングスペースの創業時期は、だいたい2010年~2012年くらい。
佐々木:
現在の事業者数はどれくらいなんですか?
川路:
一説には、都内には200を超えるコワーキングスペースがあるといい、競争が激化しています。
「WORKSTYLING」のサービス
厚切り:
利用者はスタートアップ系が多い?
川路:
そうですね。エンジニア、クリエイター、スタートアップの方が今までは多かった。
川路:
我々が手掛けているのは、「法人向けの多拠点型シェアオフィス」です。どういうものかというと、複数個所を1つのIDで利用できます。法人向けなので、何百人という社員全員が好きな場所を使えます。もう一つの特徴は、従量課金です。これまでのコワーキングスペースは「1席でいくら」「月額いくら」というモデルが多かったのですが、WORKSTYLINGでは「10分いくら」なので、毎度スマホでチェックインをして、月額の加算額を請求させていただきます。
佐々木:
月額課金が多かったコワーキングスペースで、従量課金は画期的ですね?
川路:
個人の方は月額課金の方が安心できると思うのですが、企業の場合だと、今月は利用しないとか、ある部署は頻繁に利用するとか、いろいろな場合があります。そういう意味では、勤務管理にも繋がるんです。管理画面には、全従業員が月間でいつ・どこにいたのかが分かる。そうすると、コワーキングビジネスとはまた違ったものになってきますね。
厚切り:
日本の企業、特に大手は、身内としか働きたくないというか、ライバルと隣り合わせで仕事をするのはセキュリティ面からも敬遠されるのでは?
川路:
それが1番重要なところなんです。大手企業はセキュリティ面を非常に気にされます。今回我々は、大きな机をシェアする場所もあるんですが、個室や会議室のスペースも設けました。同じ会社の人間だけで打ち合わせをしたい場合は会議室、セキュリティ情報を扱う場合は個室を利用してもらう。この3つのスペースを行き来するようなオフィスを作っています。
厚切り:
会議室を借りられるサービスは他にもありますが、競合になってくる?
川路:
これまでの貸し会議室は30時間単位で前日までに入金をする、というのが主流でしたが、WORKSTYLINGは手元のスマートフォンのアプリから10分単位で予約ができます。簡単にいま使える、というのがポイントです。
コワーキングビジネスの勝者の条件
佐々木:
コワーキングビジネスを展開する会社は増えてきていますが、今後その中で勝者となるために必要なことはなんですか?
川路:
2つポイントがあります。1つ目は、「コミュニティをうまく作る」こと。コミュニティの盛り上がりは数値化しづらく、盛り上がっていると言っても、それが何の盛り上がりなのかを示せる人はそんなにいません。入場者数は他と同じで、同じ祭りでも濃いコミュニティは、帰属意識が生まれます。「ここに行くと誰かに出会える」「毎日来たい」と思われることが、コミュニティの強さです。
これからは、そこがどんどん可視化されると思います。2つ目は「生産性の向上を示せる」こと。実は、こちらの方が大事なんです。お金を払ってもらえるかどうかは、それだけの価値を示せるかどうか。働き方そのものを変えていくということは、アウトプットに重きを置くということ。「この場所に行くと、きちんとしたアウトプット(成果)が出せる」「短い時間でよい提案書が書けた」ということを示すことができれば、おのずと価値条件となる。文筆家に執筆場所にこだわる人がいるように、「あそこの部屋作りはいい」という価値を出すことができればいいですよね。
佐々木:
コワーキングスペースを利用してから、その部署の成績が上がったというような例が出てくれば、どんどん投資してもらえるということですね。
川路:
そうですね。それがないのに、コワーキングの費用だけ払うというのは成り立ちませんからね。
激化するコワーキングビジネスの現状と将来をもっと知りたい方はこちらから。
https://www.houdoukyoku.jp/archives/0029/chapters/29109
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