「鳥貴族」28年ぶり値上げへ

すべてのメニューを一律280円という低価格で販売してきた居酒屋チェーンの「鳥貴族」は、人手不足による人件費の上昇などでコストが膨らんでいるとして、およそ28年ぶりに価格を見直し、ことし10月に一律18円値上げすることを発表しました。

値上げを発表したのは、大阪市に本社を置き、首都圏や関西を中心に560余りの店舗を展開する居酒屋チェーンの「鳥貴族」です。
この会社は、平成元年以降、酒や焼き鳥をはじめ、すべてのメニューを一律、税抜き280円の低価格で販売し、店舗網を拡大してきました。
しかし、人手不足の影響で、アルバイトの賃金などの人件費が上昇していることに加え、天候不順で野菜の仕入れ価格も上昇しているとして、ことし10月1日に、およそ28年ぶりとなる値上げに踏み切ることを決めました。
値上げの幅は18円、率にして6%余りで、一律、税抜きで298円となります。
外食業界では、「すかいらーく」がことし秋に、ファミリーレストランの一部のメニューを値上げするほか、カレーチェーン最大手の「CoCo壱番屋」も、一部のメニューの値上げを進めるなど、人件費の増加を理由とする値上げの動きが広がっています。

大阪に本社を置く「鳥貴族」は、昭和60年、大阪・東大阪市に1号店をオープンしました。
飛躍のきっかけとなった平成元年に始めたビールや焼酎といった酒や、看板メニューの焼き鳥などすべてのメニューを税抜き280円で統一するという独自の価格戦略です。
価格の安さとわかりやすさが消費者の支持を得て、現在、首都圏と関西を中心に560余りの店舗を展開しています。
この「低価格・均一価格」の戦略を後追いする居酒屋が相次ぎ、なかには、看板のデザインなどが酷似しているとして、訴訟に発展するケースもありました。
「鳥貴族」のもう1つの特徴は、居酒屋1本に絞った拡大戦略です。
外食業界では、例えば最大手の「ゼンショーホールディングス」が、牛丼チェーンの「すき家」を中心に、ファミリーレストランや回転寿司も運営するなど、消費者の多様な好みや景気動向の変化などに対応できるように、複数の業態の店舗を展開するのが一般的です。
これに対し、「鳥貴族」は、低価格・均一価格を前面に打ち出した居酒屋に絞ることで成長を続けてきました。
しかし、深刻な人手不足でアルバイトの人件費が上昇しているうえ、今後も最低賃金の上昇が見込まれることや、このところの天候不順で、野菜の仕入れ価格が上昇していることから、およそ28年ぶりに価格を見直し、値上げを決断せざるを得なくなったということです。

一律280円の価格戦略で成長を続けてきた居酒屋チェーンの「鳥貴族」が、およそ28年ぶりの値上げを決めたことについて、東京・渋谷で値上げは厳しいという意見がある一方、やむを得ないという声も多く聞かれました。
このうち、20代の会社員の男性は「鳥貴族は安くて大好きできょうも飲み会で使います。値上げされると、1人1人はともかく、全体の額はけっこう上がるので少し使いづらくなります」と話していました。
60代の女性は「できれば値上げは避けてほしいですが、最近は給料が上がっていますし、しかたがないですね」と話しています。
40代の会社員の男性は「値上げで鳥貴族の従業員の人たちの給与が上がるなら仕方ないと思いますし、経済がうまく循環してくれればいいと思います」と話していました。

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