イエレン議長は続投アピールというより、思いの丈を表明-規制巡り

  • ジャクソンホールの年次シンポでの講演で金融規制の意義強調
  • 来年2月が任期満了のイエレン議長、規制では大統領とは異なる世界

イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長が25日、ワイオミング州ジャクソンホールで行った注目の講演は、来年2月の任期満了後の続投をにらんでアピールするというよりも、思いの丈の最後の表明とも受け止められる内容だった。

イエレン連邦準備制度理事会(FRB)議長
イエレン連邦準備制度理事会(FRB)議長
Photographer: David Paul Morris/Bloomberg via Getty Images

  イエレン議長はカンザスシティー連銀主催の年次シンポジウムで、金融危機を受けて過去10年間に導入された広範な金融規則をおおむね擁護し、自身を交代させるかどうか決定権を握るトランプ大統領の反規制の立場とは距離を置いた。

  一連の規制は経済を過度に損なうことなく金融の安全性を高め、こうした規制を緩和させるなら「控えめ」なものにとどめるべきだとイエレン議長は語った。

  キャピタル・アルファ・パートナーズのアナリスト、イアン・カッツ氏はこの発言の趣旨について、「自分を再指名するつもりなら、金融規制を巡るトランプ氏の世界観を受け入れない人物を続投させることになるという点を大統領は知っておく必要があるとのメッセージを発しているように見受けられる」と解説した。

  トランプ大統領は7月、米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューで、イエレン議長(71)続投の可能性も検討しており、国家経済会議(NEC)のコーン委員長や他に2、3人の候補者がいると発言。ただ、ブルームバーグのエコノミスト調査では、コーン氏起用に比べてイエレン議長続投の可能性は低いとの見方が示された。

  エバコアISIのクリシュナ・グハ副会長は、「規制の中核部分を擁護するというイエレン議長の判断によって、政権内で同議長続投を快く思わない勢力が発言力を増すだろう」と指摘。「少なくとも今のところ、トランプ氏は金融政策についてイエレン議長に文句がないが、規制を巡る両者の優先事項は極めて異なっている」と話した。

原題:Yellen Gives More Swan Song Than Job Audition in Jackson Speech(抜粋)

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東芝メモリー事業売却でWDと詰めの交渉、課題は山積-関係者

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Kiyoshi Ota/Bloomberg

東芝が早期契約を目指すメモリー事業の売却交渉は、最終局面まで予断を許さない状況が続いている。関係者によると、東芝の株主や投資家保護の観点からも上場廃止を避けたい主要取引銀行が月内の契約締結を求めているが、合弁相手の米ウェスタンデジタル(WD)陣営との間には契約をめぐる両社の主張の相違点解消という課題を残している。

  交渉が非公開であることから匿名を条件に語った複数の関係者によると、東芝は現在、WDや米ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)などと交渉を進めており、主要取引各行は31日までに契約を締結するよう東芝への圧力を強めている。

  東芝は6月、産業革新機構を中心とした「日米韓連合」を優先交渉先に決め交渉を進めていたが、WDとの係争解決を絶対条件としていた同連合に対し解決策を示せず、交渉は暗礁に乗り上げていた。同関係者によると、東芝はこれまで、上場廃止の可能性があっても、銀行側は日米韓連合との交渉で一定の時間的な猶予を与えてくれると受け止めていたという。

  両社の間にはあと4日では解消できない課題が山積。東芝は国際仲裁裁判所に求めていたメモリー事業売却差し止めの申し立てを完全に取り下げてほしいと主張するが、WDはいったんは取り下げても再度問題が発生すれば再度申し立てを行うとの含みを残している。東芝は3月までにメモリー事業の売却が完了しなければWDへ違約金を請求したいとしているが、WDはこれに合意していないという。さらに、合弁事業への影響力を強化するため、WDは東芝に契約条件の変更も求めている。

過半数以下に

  東芝は、WDが売却先に決まった場合の同社の関与にも神経をとがらせている。WDは各国の独占禁止法の審査を通りやすくするため、出資ではなく転換社債という形を取りWDには過半数の議決権を持たせない方向。WD陣営による買収額は約2兆円になる見通し。
  東芝の綱川智社長は10日の会見でWDや鴻海精密工業とも並行して交渉を進めていることを明かし、特にWDについては良好な関係への回復に期待感をにじませていた。現在来日中のWDのスティーブ・ミリガン最高経営責任者(CEO)は対立を解消するためにこれまでに何度か綱川氏と会談。関係者によると、綱川氏は株主や銀行の意向に配慮してWDとの契約締結に前向きなものの、子会社東芝メモリの幹部らは難色を示しているという。

  東芝広報担当の石橋斉史氏は綱川氏とミリガンCEOによる協議について「個別の面会にはお答えしていない」とし、売却契約の詳細についてもコメントを控えた。

  東芝は今年4月にメモリー事業を分社化し、東芝メモリを設立。2018年3月末までに同社を売却することで得られる売却益で2期連続の債務超過を避け、上場廃止を阻止したい考えだ。

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