暮らしを変える「ブロックチェーン」
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» 2017年08月28日 16時30分 公開

今更聞けない「ブロックチェーン」あれこれ 基本を5分で解説

最近、ニュースで良く耳にする「ビットコイン」や「ブロックチェーン」という言葉。聞いたことはあっても意味までしっかり理解している、という人は少なくないと思います。そこで、日本ブロックチェーン協会の「中の人」に解説してもらいました。

[井上翔ITmedia]

 「ビットコイン(Bitcoin)」に「ブロックチェーン」――ニュースなどで耳にする機会が増えた言葉です。技術自体の利便性が高いことから、IT・金融関連を中心にさまざまな業種の企業が利活用を模索しています。しかし、これらの言葉について理解が進んでいない、あるいは曖昧になってしまっているという人も少なくないと思います。

 そこで、日本ブロックチェーン協会(JBA)の樋田桂一事務局長と、電縁の石原玲一取締役(JBA事務局員兼務)の2人からブロックチェーンについて改めてお話を伺うことにしました。この記事では、ブロックチェーンの“基礎中の基礎”について伺った話をまとめました(後日、ブロックチェーンの利活用についてもまとめる予定です)。

 読者の皆さんにとって、参考になれば幸いです。

電縁の石原玲一取締役とJBAの樋田桂一事務局長 電縁の石原玲一取締役(左)とJBAの樋田桂一事務局長(右)

ブロックチェーンは「ビットコイン」の要素技術

―― まず、そもそも論ですが「ブロックチェーン」とは何ですか。

樋田氏 そもそも論といえば、「ブロックチェーン」から「ビットコイン」が生まれたと勘違いしている人が少なくありません。本当はビットコインからブロックチェーンが生まれたのです。ブロックチェーンはビットコインを構成する要素技術の1つです。

石原氏 ビットコインは2008年11月にサトシ・ナカモト(Satoshi Nakamoto)氏が執筆した、いわゆる「ナカモト論文」をきっかけに生まれた考え方で、その論文の内容、つまりビットコインを実現するための技術として登場したのがブロックチェーンです。

※筆者注:論文の執筆者であるサトシ・ナカモト氏の正体は現時点でも分かっていない

 論文の中には「トランザクション(取り引き)」「ネットワーク」など大きく7つのキーワードが出てきますが、それらを実現する技術がブロックチェーン、そしてブロックチェーンを使って構築されたサービスの1つがビットコインなのです。

ナカモト論文 「ビットコイン」構想のきっかけとなった「ナカモト論文」。この論文に書かれた要素を満たす技術が「ブロックチェーン」(画像提供:電縁)

ブロックチェーンのキモは「ハッシュ」と「マイニング」

―― なるほど。では、ブロックチェーンはどのようにして稼働しているのでしょうか。

石原氏 まず、仕組みを語る上で、「ハッシュ(hash:寄せ集め)」という言葉が何度も出てきます。まずはその意味を理解しなくてはいけません。

 ハッシュ関数はルーレットのようなものです。ボール(データ)を打ち出すタイミングや強さによって大きく違った答え(数値)がはじきだされます。

 その答えの行き先ですが、カジノのルーレットなら38個のスロット(出力先)がありますが、ビットコインのルーレットなら2の256乗個のスロットがあります。宇宙空間の全ての素粒子に番号が割り当てられるだけの数ですから、偶然、同じスロットに違う答えが入り込むことはまずあり得ません。一定のインプットに対する一定のアウトプットを識別することができるのです。

 ビットコインでの送金を例に取ると、「AさんからBさんに5BTC(ビットコイン)を送金」「CさんからDさんに4BTCを送金」といったトランザクションの情報を「ブロック(固まり)」にして、それを「チェーン(鎖)」でつないで集めたものが「ブロックチェーン」になります。このブロックチェーンを(参加者)全員で共有し、それぞれがコピーを保有します。

 全員で共有するということは、トランザクションの更新情報も全員にブロードキャスト(公開)しなくてはなりません。ここでチェックなく各自が自由に情報を書き換えられるようにしてしまうと、悪意のある人や不正をたくらむ人の情報まで取り込んでしまうことになり危険です。ですから「トランザクションを取りまとめて、チェックをして、新しい台帳に書き込む」といった一定の確認プロセス機能が必要となります。

 この取りまとめプロセスのことを「マイニング(mining:採掘)」と呼びます。1つ1つのブロックの中には、データとしてトランザクションに加えて、トランザクションデータから生成されたハッシュ値が含まれています。新しいブロックは、前のブロックのハッシュ値を反映しています。前のブロックのハッシュ値は、さらに前のブロックのハッシュ値を反映して生成され……というふうに前後のブロックがつながることでデータの改ざんを困難にしているのです。

 ビットコインの場合、マイニングは「Proof of Work(仕事の証明)」という方式で行います。「マイナー(Miner:採掘者)」と呼ばれる人たちは、ある条件を満たすまでハッシュ値を生成していきます。条件を満たす「nonce(ノンス)」というハッシュ値を引き当てた人が台帳の取りまとめを行うことになり、その報酬としてビットコインをもらえるという仕組みとなっています。ですから、全く何もない所から価値が生成される、という訳ではありません。

ビットコインで説明 ビットコインを使ったブロックチェーンの仕組みの説明(画像提供:電縁)

―― マイニングをすることで、ビットコインという「価値」が生まれるという点がちょっと分かりづらいのですが……。

石原氏 先ほども少し触れましたが「価値が生まれる」というよりは「報酬として付与している」という感覚です。

 マイニングをするには(ハッシュ値を)計算をするためにコンピューターのリソース(処理能力)が必要です。それを差し出してもらうためにコインを報酬として付与しているのです。

 その際に多くのマイナーを募っているのは、チェックをする人(≒マイナー)が多いほど不正が働きにくくなるからです。特定の人が毎回チェックすると、その人が「でたらめ」だった時に困ったことになります。「誰がチェック者(nonce獲得者)になるか分からない」「チェック者の候補は多数います」という状態の方が、ネットワーク全体の信頼性を増すことになるのです。

―― なるほど、良く分かりました。


 ブロックチェーンはビットコインを実現するために生まれたものです。では、ビットコイン以外にはどのような用途での利用できるのでしょうか。

 この点についても、樋田氏と石原氏から話を伺っています。別の記事でご紹介する予定ですので、お楽しみに!

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