アジアが抱える雇用不安は欧米の比ではない

保護主義で雇用は守れるのか

中国では、いまだに毎年1000万人が都市へと流入を続けている (写真: rabbit75_pix/PIXTA)

雇用の劣化を心配する米欧の政治家は、アジアの途上国が直面する、より大きな問題に目を向けたほうがいい。世界の賃金を押し下げる巨大な圧力となりかねないからである。インドの1人当たり賃金は米国の約10分の1だが、そこでは年間1000万人以上が農村から都市へと押し寄せ、路肩でチャイを売る仕事を見つけることすらおぼつかない。コンピュータプログラマーとなれば、なおさらだ。アジアの雇用不安は、米欧の比ではない。

インドは、日本が先鞭をつけた輸出主導型の経済を目指すべきなのか。自動化で製造業の職が減っていくとしたら、その結末はどうなるのだろう。

保護主義の高まりが問題を複雑に

もちろん、先進国では人口の8割がサービス業で働いているし、サービス部門の業務受託でインドは世界トップだ。だが、国際的なコールセンター業務の相当部分はすでに自動応答システムに置き換わっており、単純なプログラミング業務でのインドの競争力は失われつつある。

中国はインドに比べれば、はるかに都市化が進んでいるとはいえ、いまだに毎年1000万人が都市へと流入を続けている。自動化で雇用が失われ、低賃金の仕事がベトナムやスリランカといった競合国に流出する中、雇用問題への対処は一段と難しくなっている。

問題をいっそう複雑にしたのが、最近の保護主義の高まりだ。これを象徴するのが、米アップル製品の製造を請け負う台湾フォックスコンが行った、総投資額100億ドル(約1兆円)の米ウィスコンシン州での新工場建設という決断だ。これによって米国にもたらされる雇用は1.3万人。インドや中国が毎年創出せねばならない2000万人超の雇用、あるいは米国が必要とする200万人の雇用に比べたら、焼け石に水である。

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  • NO NAMEaa5e3cf475d7
    なんか日本人って「グローバリズム」と「パクス・アメリカーナ」を混同してる人が多いよね。

    トランプ政権の誕生は、パクス・アメリカーナ時代の終わりを象徴しているし、イギリスのEU離脱は、EUというリージョナリズムの弱体化によるグローバリズムの加速を意味するんですけど・・・

    反グローバリズムなんて潮流はなくて(一部の過激派にはあるかもしれないが)、むしろ本格的なグローバリズムの幕開けだし、それ自体には良いも悪いもない。
    up6
    down5
    2017/8/27 17:07
  • NO NAME9d338f1a067b
    外国で同じような傾向があったからと言って、実際各国で国民が政治とか社会に求めてることは違う訳で
    グローバリズムに対する反動とか反グローバルとかで、一括りにするのはやめてもらえませんかね・・・
    理屈がどうであれ日本には日本の問題があって、それに1つ1つ向かって解決して、社会を前進させていく以上のことは無いし
    恐らく数世紀前からグローバリズムらしきものはあって、それは別に冷戦が終わったから共産圏の分パイが増えたことに起因してる、とも思えないですし
    様々な問題の全てが、本当に今のグローバルに起因しててグローバリズムでしか起きない問題かどうかと言われると、疑問に感じる点が多々あります
    例えば日本の場合、質の高い雇用が地方から失われるみたいな話になると、アジアとの競争だけでなく東京一極集中と切り離せない気がしますし・・・
    右派左派関係なくグローバリズムに化物の幻を見ている部分がある気がします
    up0
    down0
    2017/8/27 19:21
  • NO NAMEabd635b631fc
    経済学者は能書き垂れているだけで、解決の具体策を示せないと言ってるだけ。ラッダイト運動が起きています。なぜ理解できない。

    貿易は必要だが、比較優位を前提とする自由貿易は天動説並みの嘘
    up0
    down1
    2017/8/28 06:56
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