知らないと怖いお金の基礎知識⑤ タイプ別おすすめの投資信託の選び方
2017/08/28
※連載記事の第5回目です
①貯金・保険・投資の得意分野を理解する
②貯金・保険・投資の長所と短所を知る
③利益より重要な手数料の話
④投資信託は初心者に優しいの?
お試しで投資信託を始めてみる
過去の投資信託の記事で書いたように、投資をする際にはゴールと目的を最初に決めることが大切であるが、そういう小難しいことを考える前に、とりあえず投資信託がどんなものか試してみたいという人もいるだろう。
お試しといえども、投資信託のメリットの「少額でも分散投資ができる」と「運用をお任せできて手間が掛からない」の二点を享受しないと投資信託を選ぶ意味がないので、そこを外さない選び方を見ていく。
分散投資について
ところで、分散投資ができることがなぜメリットになるのだろうか。
前回の繰り返しになるが、投資信託は投資家から集めた資金で投資をするので、自分一人では買えない多くの種類の株等に間接的に投資ができる。
多くの種類に投資ができるということが、すなわち分散投資である。
分散投資のメリット
分散投資のメリットは一言でいうと「大負けしない」ことである。
投資の対象を1つではなく、様々な性質のものに分散して投資をすることで、どれかがコケてもどれかが上手くいっている、という状況を作ることができる。
株式と債券
例えば、世の中の景気が良くなって株の値上がりが見込まれる場合、多くの人が債券を売り払って株を買う。
債券は安定しているけど大きなリターンがないため、値上がりが見込まれる株のほうが魅力的になるのだ。
こうなると株式市場は好調だが、債券市場は低調になる。
逆に景気が冷え込むと、乱高下する株を売り払って、安定している債券を買う。
つまり株式市場が低迷すると、債券市場が好調になる。
このように、値段の動きが相反する株式市場と債券市場の両方に投資をすると、どちらかが下落しても片方の上昇によって、トータルしてもプラスか、マイナスになっても最小限に抑えられる。
日本と海外
また、例えば日本に危機があると、日本の株や債券に投資していた人は、それを売って違う国の株や債券を買う。
日本の株式市場や債券市場が下落した時、海外の株式市場や債券市場は好調になるのだ。(どの国が好調になるのかは、そのときの情勢次第であるが、現在は米国と相反関係が起こりやすい)
なので、日本と海外の両方に投資することも、リスクヘッジとなる。
時間
そして時間も分散ができる。
一気に有り金を注ぎ込むのではなく、月に1回など決めたタイミングで少しずつ買い増していくことで時間の分散になり、ある時は高値で買ってしまっても違う時に安値で買うことができる。
一点張りの集中投資をしている人は、それがコケると全てを失ってしまうのに対し、分散投資をしていると、どれかがダメでも他のものでカバーができるのだ。
分散投資のデメリット
分散投資のメリットは逆にデメリットにもなる。
それは、「大儲けしない」ということだ。
分散投資していると一つの分野への投資額は分散されて小さくなる。
そうすると、とある分野が大当たりしても、一点張りで集中投資している人よりも儲けの額が小さくなる。
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タイプ別おすすめの投資信託の選び方
分散投資のメリットを最大限に活かすために、最低でも日本株式・日本債券・海外株式・海外債券の4分野に投資をすることを勧める。
できるだけ何もしたくない場合
投資信託に興味はあるけれど、商品を探すのも面倒くさいし、メンテナンスもしたくない場合にオススメなのは「バランス型ファンド」である。
バランスファンドは各分野ごとの投資バランスをファンドマネージャーに調整してもらうものなので、人手がかかる分、手数料が掛かる。
その分利益が少なくなるが、それでも自分でするのは面倒な人にオススメだ。
バランス型ファンドは日本株式・日本債券・海外株式・海外債券のそれぞれにどれだけの比率で配分するかが商品ごとに決まっている。
株式の配分が高いほどハイリスク・ハイリターンになるが、債券の比率が高いと昨今の低金利ではほとんど増えないだろう。
とりあえずのお試しであれば、基本の4分野に25%ずつ投資する商品を試してみて、様子を見てみるのもいいかもしれない。
基本的に手数料が高くなりがちな商品なので、吟味して手数料が低いものを選ぶこと。
また、REITやコモディティが入ると、更に手数料が高くなる割にリスクも高くなるので、日本株式・日本債券・海外株式・海外債券の基本の4分野にのみ投資する商品がオススメだ。
自分で選ぶのは怖いけど、少しは何かしてみたい場合
投資信託を自分で選ぶ自信はないけれど、今後のために全部任せっきりではなく、少しは自分でも手を動かしてみたい場合は、各分野ごとのインデックスファンドに挑戦してみよう。
日本株式・日本債券・海外株式・海外債券の4分野の中から1つずつ選んで、4つの投資信託を購入し、運用するのだ。
選ぶ時は、インデックスファンドを選ぶこと。
インデックスファンドであれば、どれを選んでも大差がない。
自分が口座を持っている証券会社が扱う商品の中で、手数料が安いのを買えばいい。
なお、リスクを抑えるために、海外株式・海外債券は、日本の株式や債券と相反した動きをする可能性が高い先進国の株式・債券をオススメする。
あまりリスクを取りたくないが、自分で商品を選んでみたい場合
リスクを取りたくないが、せっかくだから自分で商品を選んでみたい場合も、インデックスファンドをベースにすること。
その中で、こういう選択肢が取れる。
日本株式を選びたい
日本株式の代表的なインデックスファンドは、TOPIXと日経225のどちらかに連動する。
・TOPIX連動ファンド:東証一部上場1933銘柄全てに投資
・日経225:日本経済新聞社が「取引が活発で流動性の高い」とみなした225銘柄に投資
TOPIXは日本の上場株全てをカバーするので、より日本の経済状況に近いと言える。
また日経225はしばしば入れ替えが起きるので、その度に銘柄入れ替えの売買をするため、見えない手数料が掛かり運用益が減る。
なので、初心者にはTOPIX連動型をオススメする。
しかし、日経225の方が組み入れ銘柄が少ない分、値動きが激しくなるため、TOPIXで物足りない場合は日経225を視野に入れてもいい。
日本債券を選びたい
日本の債券は利周りが低いため、インデックスファンドではどれも差が出ない。
日本債券は深く考えず、インデックスファンドのうちどれかでいい。
海外株式・海外債券を選びたい
上で、リスクを抑えるために、海外株式・海外債券は、日本の株式や債券と相反した動きをする可能性が高い先進国の株式・債券をオススメすると書いたが、先進国も「米国」と「欧州」に分かれる。
先進国株式・債券というと、米国と欧州の両方が組み入れられていることが多いが、米国のみ、欧州のみというインデックスファンドも存在する。
米国が、この先も世界の金融市場の中心であると思えば、米国にのみ投資しているものを選ぶ。
今は低迷している欧州だが、この先復活すると思えば、欧州にも投資する。
もし欧州の中に、これは伸びるぞと思う国があるなら、その国単体に投資するといい。
5年後、もしくは10年後、どこの国が強くなるかを予想して、そこの国の株式や債券のインデックスファンドを買うのだ。
多少のリスクがあっても自分で選びたい場合
多少のリスクがあってもいい場合、選択肢が広がる。
新興国を視野に入れる
リスクを取ってもいい場合は「海外」の選択肢に「新興国」が含まれる。
新興国の繁栄にかけてみるのだ。
なお、新興国はインデックスファンドといえども大きく値崩れするリスクが高い。
先進国に投資した上で、失っても惜しくない金額を新興国に投資するようにしよう。
アクティブファンドを視野に入れる
手数料が高い割に当たり外れが大きいアクティブファンドよりも、手数料が安いインデックスファンドがオススメだが、それでも、指標よりも高い利益を狙ってみたい場合があるだろう。
その場合、アクティブファンドも選択肢に入ってくる。
例えば、日本の株式市場はこの先、大きく伸びないから、他の三分野はインデックスファンドで、日本株式だけアクティブファンドで行こう、といった使い方ができる。
アクティブファンドとは、運用するファンドマネージャーの実力に投資する商品なので、ファンドマネージャーの運用の理念に共感できない商品は買ってはいけない。
ファンドマネージャーの顔を明かすのが当たり前の海外と違い、日本はファンドマネージャーが表に出ることが少ないのだが、理念がわかる商品の代表的なものに、ひふみ投信やさわかみ投信が挙げられる。
ひふみ投信のレオス・キャピタルワークス社長の藤野英人さんや、さわかみ投信の創業者の澤上篤人さんは著書も出しているし、セミナーも行われているので、これらに触れて、理念に共感し、この人たちに資産を預けたいと思ったなら買いだろう。
※ひふみ投信の藤野さんの投資についての考えがわかる本
※さわかみ投信の澤上さんの最新刊。(出版したばかりのため未読ですが、目次を見ると澤上さんの理念のようです)
買った後
投資信託は、最初に商品を決め、毎月自動積み立てをする手続きをすれば、基本ほったらかしでいいが、年に1〜2回は見直したほうがいい。
具体的には、4分野の投資信託をそれぞれ購入した場合は、「リバランス」を行う。
「リバランス」とは分野ごとの比率を調整することだ。
例えば、買う時に4つの分野とも同じ比率で運用すると決めたなら、半年や1年など決めた期間の後に、同じ比率になっているかを見る。
たぶんバラツキが出ているだろう。
そのタイミングで値上がっているもの(比率が高いもの)を売り、値下がっているもの(比率が低いもの)を買い、4つの分野の金額が概ね揃うようにする(10%くらいの誤差はOK)。
売買するのにもしくは、値上がっているものは買い増す金額を減らし、値下がっているものは金額を増やし、4つの分野の金額が概ね揃うようにする。
これが投資信託を使った投資の一連の流れである。
以前の記事はこちら
①貯金・保険・投資の得意分野を理解する
②貯金・保険・投資の長所と短所を知る
③利益より重要な手数料の話
④投資信託は初心者に優しいの?
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