理科と算数がダントツで苦手科目であった。
机に物を置いたら机の方からも押し返す力が働いてるとか、くじ引きは何番目にひいても確率は変わらないとか、「嘘だな」と思うことばかりだったからだ。
どう考えたって、最後にくじを引く人にはワクワク感が少ないじゃないかッ!(関係ない)
話は突然変わるようであるが、先日タイに行ったとき、エアアジアを利用した。
エアアジアというのはいわゆるLCC(ローコストキャリア)で、まあいろいろサービスを省略可したり機内が狭かったりするけど安い!という格安航空会社である。
LCCなら国内でもいろいろ使ってきたし、特に気にせず夫と当日空港に向かった。しかしスーツケースを転がしながらエアアジアのチェックインカウンターに行ったら、驚くべきことが判明したのである。
どうやら私たちの航空券はもっとも安価なタイプで、受託手荷物料金は含まれていないらしい。わかりやすく言おう。スーツケースを預けるのに追加料金がかかるらしい!
赤い制服をまとったエアアジアの美人スタッフさんは、早朝の成田空港で爽やかにこう言った。
「12kgと15kgなので二人合わせて30kg以下として、乗り継ぎもあるので料金は2倍になるんですね。ですから2万4千円をお支払いただく必要があります」
2万4千円…!
エクスペディアを見てあ〜でもないこ〜でもないとお得価格の航空券を探したあの時間はなんだったのか。二人とも泣きそうになったが、スーツケースを置いていくわけにもいかないので、払うしかない。間抜けな自分たちを呪った。
さらにである。事前に済ませておいたウェブチェックインが遅かったせいなのか、座席がバラバラになっているらしい。
「と、隣じゃない…」
夫は衝撃を受けていた。おそらく飛行機の中でも一緒にいたいとかではなく、機内食などをスムーズに注文するために私の拙い英語力(?)に期待してのことである。
エアアジアのスタッフは爽やかに言った。
「もしもお二人の座席を隣同士に変更する場合、ひとり3,000円、合計6,000円の追加料金がかかります」
6千円…!
スーツケースと合わせたら行きだけで3万円の追加料金である。私は震えた。
「せ、席は隣じゃなくても…」
「じゃあ隣に変更してください」
夫の声がかぶさった。機内食へのモチベーション、恐るべし。
結局、今回の旅のフライト追加料金は以下のとおりであった。
- 行きのスーツケース:2万4千円
- 行きの座席変更:6千円
- 帰りのスーツケース:1万2千円
合計の4万2千円。震える…
(なぜ帰りのスーツケース代が半額だったのかは謎)
なお、帰りも座席はバラバラであったが変更はしなかった。帰りは真夜中のフライトで、機内食の注文が必要なかったからである。
さて、こうして交通費に予想外のお金がかかった私は、帰国後、毎朝いそいそと麦茶を作り始めた。それを巨大な水筒に入れ、夫に持たせる。
節約である!
しかし4万2千円が一気に飛んで行ったというのに、こんな地道なお茶作りが何になるであろう…となんとなく弱気な私は、自分を奮い立たせるために計算を始めた。
伊藤園の水出し麦茶パックは54袋入りで188円であるから、
188÷54=3.48…(円)
1日約3.5円である。
一方、こうした麦茶水筒大作戦を実行しなかった場合、500mmのペットボトルを1日2本は飲むだろう。ということは
150×2=300(円)
1日約300円である。
ということは、この麦茶水筒大作戦を続けた場合、何ヶ月でエアアジアの4万2千円を取り戻せるかというと…?
42000÷(300-3.5)=155.84…
156日!一ヶ月に会社に行くのが平均22日として、約7ヶ月であるッ!今からコツコツやっておけば、来年の3月末にはチャラになるな…私はほくそ笑んでいた。
機嫌をよくした私は、念のため夫に質問してみた。
「ねえ、ちなみにもし水筒を持っていかないと、毎日どれくらいペットボトル飲むの?」
夫は事もなげに言った。
「う〜ん、毎日3〜4本は飲むかな」
3〜4本!
私が飛び上がって喜んだことは言うまでもない。訝しくこちらを見ている夫をよそに、急いで机に戻って計算のやり直しである。これから季節は秋冬に向かっていくので、間をとって1日3本の計算としよう
ペットボトル代は150×3=450(円)となる。したがって、
42000÷(450ー3.5)=94.06…
95日、一ヶ月に会社に行くのが平均22日として、約4ヶ月ちょっとであるッ!なんと年末にはチャラになるではないかッ!
麦茶パックとiPhoneの計算機を前に、ひたすらニヒルな笑みを浮かべる私であった。
計算ってすばらしい。算数ってすばらしい。自分が引けないくじ引きの確率や、存在しない多角形を切ったときの断面を測るためにあるのではなかったのだ…。失敗したエアアジアの追加料金を年内で取り戻せることがわかるなんて、大人の算数ってめちゃくちゃ楽しいよね。
数日後の夜の話である。
夫の持って帰ってきた水筒に、5分の1くらい麦茶が残っていた。いつも全部飲みきっているので珍しいなぁと思いつつ洗っていたら、夫が冷蔵庫に向かってやってきた。いろはすのペットボトルを持って。
「え!?水!?どうして水のペットボトルを買ったの!?」
夫はきょとんとした後、照れ笑いを浮かべた。
「いや〜ちょっと外に出たときに買っちゃったんだよ〜」
計 算 が 狂 っ た !
「うわあああああ」異常なショックを受けてキッチンの床に崩れ落ちた私を、夫は不思議そうに眺めていた。
大人の算数、それは楽しいけれど、辛口である。世の中は、計算通りにいかないことばかりなのだから。
麦茶にすべてを託しすぎだよね。
Sweet+++ tea time
ayako
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