今年も本格的なサンマ漁のシーズンに入りました。日本の秋に欠かせない風物詩ですが、水産庁によると、今年の漁獲量は過去最低だった前年を下回る見通しです。不漁となるのは3年連続で、資源量の減少などが理由に挙げられています。
寿司ネタの代表であるマグロ。資源の減少が懸念される太平洋クロマグロは、北海道や宮城県など25道府県で幼魚(30キログラム未満)の漁獲枠が約15%削減になりました。前漁期(昨年7月~6月)の沿岸での漁獲枠を超過したためです。
なじみの魚に関してこんなニュースが続いています。どんどん魚が減って漁業が縮小しているような印象も受けますが、実は世界的に見ると漁業は成長産業なのです。なぜ日本では暗い話題が多いのでしょうか。日経ビジネスは8月28日号で「独り負けニッポン漁業」と題した特集を掲載し、その真相を探りました。日経ビジネスオンラインでは連動企画として、様々な角度から日本の漁業を取り上げます。
居酒屋でひっそりと姿を消す魚メニュー
「居酒屋のほっけが小さくなったなあ」
「スーパーのサンマが高いのよ」
こんな会話をしたことはありませんか。今後、別の魚でも似たようなことが増えるかもしれません。すでに魚介類を看板メニューにする外食産業の関係者は日々頭を悩ませています。
海鮮居酒屋チェーン「さくら水産」のランチタイムの一番人気、日替わり定食。税込み500円のワンコインランチからひっそりと消えたメニューがあります。「鮭の塩こうじ焼き」「しまほっけの塩焼き」……。漁獲量の減少や輸入価格の上昇でワンコインでは採算が合わなくなってきたからです。
スーパーでも事情は同じ。仕入れ価格が上がり、売り場に並べにくい魚が増えているという証言もあります。お店としては当然、いろんな商品を提供できる方がいいのですが、姿を消す魚が出てきています。
1人当たりの肉の消費が増える一方、魚介類は摂取量の減少が続いています。農林水産省の統計によると、漁業・養殖業の国内生産量はピーク時の4割以下に落ち込んでいます。指摘されてきた魚離れには歯止めがかかっていません。
グラフからは日本の漁業・養殖業の国内生産がピーク時の4割以下にまで落ち込んだことが分かります。日本の漁業が衰退した理由の一つとしてあげられるのが、いわゆる200カイリ問題です。1977年頃、それぞれの国の海岸から200カイリ(約370㎞)は、外国船が自由に漁ができなくなるというルールができました。これにより世界の好漁場を失い、大きな打撃を受けたわけです。