厚生年金基金とは、年金の階段の3階部分にあたる「企業年金」の一種です。そのため厚生年金とは似て非なる制度です。近年、厚生年金基金は相次ぎ「解散」をしており、厚生年金のみに加入している方も不安に感じることも多いでしょう。そこで今回は、厚生年金基金と厚生年金の違いや「解散」が続く原因について解説を行いたいと思います。
厚生年金基金は3階部分属している
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厚生年金基金とは?3つの構成で成り立っている
厚生年金基金とは、企業から預かった掛け金と従業員の厚生年金の一部を預かり国に変わって運用を代行する組織です。この「厚生年金基金」は、おおきく3つの構造から成り立っておりますので順に説明したいと思います。
まず、掛け金の本体部分となる①:「代行部分」、基金独自で上乗せした部分である②:「プラスアルファ部分」、厚生年金基金の独自給付部分である③:「加算部分」と3つ構造から成り立っています。そして、①の代行部分と②のプラスアルファ部分を合わせて「基礎年金」と呼び、③の加算部分を「加算年金」と呼ぶケースもあります。
厚生年金基金と厚生年金の違い
厚生年金基金は、厚生年金と何が違うのか?という点ですが、まず、厚生年金は会社員や公務員の誰もが加入する年金制度です。そのため加入先は1つしかありません。(年金の2階部分)
一方で、厚生年金基金は「企業年金」の一種で加入は企業の任意となります。また、加入先も基金が複数ありますので企業によって加入している基金が異なります。(年金の3階部分)
そのため、厚生年金基金と厚生年金は似て非なる制度ですので、厚生年金のみに加入している方は、厚生年金基金が解散しても直接的な影響はありませんのでご安心ください。
厚生年金基金はなぜ解散しているのか?
さて、厚生年金基金はなぜ相次ぎ解散しているのでしょうか?
厚生年金基金の多くは、バブル期までは予定を上回る運用益を確保できていたことから多くの企業が厚生年金基金に加入していました。しかしながら、バブルが崩壊し運用益を出すことが出来ない基金が増加すると共に、高齢化社会によって年金受給者が増加したことで支出が増える状態になりました。更に、少子化の影響もあり新規の掛け金も減ってしまったことで基金の運営が苦しくなっていきます。
そして、極め付けは2012年に起きたAIJ投資顧問株式会社の事件で240%の運用利回りを確保できていると報告をしていましたが、その実態は資産の多くが消失していることが明らかになった事件です。
厚生年金基金は実質廃止の方向
この一件以来、厚生年金基金の新規立ち上げは厚生労働省より禁止となる旨が発表されると共に、平成26年施行された「改正厚生年金保険法」によって財政悪化の基金は解散の指示がなされている状況です。これは、緩やかに厚生年金基金の数が減っていき、新規の基金が立ち上がらないため「実質廃止」と呼べる状態でしょう。
厚生年金基金の解散推移
改正厚生年金保険法が施行された平成26年から大幅に厚生年金基金の数が減っていることが分かります。平成18年には658の基金がありましたが平成29年にはわずか68基金と9割近くその数を減らしています。現在の加入員数は全国に80万人、1.3万事業所が厚生年金基金に加入しています。
上記のような問題から最近では、「確定拠出年金」401kに移行する企業が増えています。企業型確定拠出年金は、企業が全額掛け金を負担しますが、運用は従業員が行いますので、年金が増えるも減るも従業員次第という制度です。これの個人版である「個人型確定拠出年金」をiDeCoと呼びます。
厚生年金基金が解散すると年金はどうなるのか?
解散の続く厚生年金基金ですが、実際に解散した場合は加入者の年金はどのなるのか?解説を行いたいと思います。まず、解散と言っても2つの種類に分けれます。1つ目が「代行返上」、2つ目は「解散」です。総じて「たたむ」という表現を使いますが、それぞれ説明を行います。
「代行返上」時の影響
「代行返上」とは、本来、国に代わって厚生年金の代行運用を行なっていた厚生年金基金がその代行部分をやめて、国に年金原資を返上することを指します。そのため、返上された原資は厚生年金となり国から支給がされます。また、返上するのは「原資」部分になりますので、「プラスアルファ部分と加算部分」はそのまま基金が運用する場合や確定拠出年金として別形態で運用を行う場合があります。
「解散」時の影響
解散とは、厚生年金基金が全ての給付をやめて代行部分を国に返上します。返上されたお金は厚生年金として国から支給がなされますが、「プラスアルファ部分と加算部分」は消滅します。その際に、基金に財産が残る場合は「一時金や分配金」という形で給付され、それで終了となります。
厚生年金基金が代行返上または解散した時の受給額は減るのか?
基本的に厚生年金の原資は「代行返上」でも「解散」でも国に返上しますので、受け取れる年金額への影響はないと言えるでしょう。
ただ、上記の図でもあるように、厚生年金基金は「代行部分」の「再評価」を行わないためデフレ化では受け取れる年金額が減ってしまう可能性があります。「再評価」とは、昔の給与額を現在の物価水準に直す作業のことを指しており、現在の方が物価が高ければ何も問題はないのですが、過去よりも物価が下がっている場合は受け取れる年金額が減ってしまう可能性が出てきます。
厚生年金基金が解散した場合一時金はいつ受け取れるのか?
厚生年金基金が解散すると「一時金」または「分配金」を受け取ることができますが、いつ頃に支給がされるのか?多くの疑問を感じることでしょう。これは各基金によって支給される期間が異なりますので、加入している基金に問い合わせを行うことが望ましいでしょう。
では、解散時の「一時金」と「分配金」はどちらを選択した方が良いのか説明をしたいと思います。
支給方法 | 支給額 | 支給期間 |
一時金 | 分配金よりも少ない金額が提示されることが多い | 解散時すぐに(数ヶ月の時間はかかる) |
分配金 | あくまで概算の金額だが一時金よりも多い | 解散後、基金が定める期間後(解散後1年半後など) |
上記のように、基金に残る資金を「一時金」もしくは「分配金」という形で支給を行うのですが、「一時金」の方が分配金よりも受け取れる金額少ないケースがあります。その分早く受け取りができます。一方、「分配金」は支給までの期間が長いのですが一時金よりも支給される金額が大きい点が特徴です。
さて、どちらを選択した方が良いのか?という点ですが、「分配金」はあくまで概算の金額が提示されているだけで数年待った結果、概算金額よりも支給される金額減る。というリスクも想定できると思います。そのため、「一時金」で受け取ってしまったほうが良いと考えられます。
早めに一時金を受け取り、その他の資産運用でお金を増やす方がメリットがあると考えられます。退職金や年金をうまく活用するためのおすすめの資産運用プランは「退職金の運用で失敗しないおすすめプラン5種を徹底比較」をご確認ください。
まとめ
厚生年金と厚生年金基金の違い、厚生年金基金が解散した場合の年金への影響について解説を行いました。非常に複雑な制度ではありますが、受給できる年金自体は、原則的に国の支給に変わりますので受給額も維持されるでしょう。
そして、解散時の「一時金」または「分配金」については、「一時金」を選択頂きなるべく早く年金を手元に残すようにしましょう。