仙人の祈り

勝てる投資家になるために - 行動ファイナンスのきほん

無数にあるファイナンス系の学問のなかでも「行動ファイナンス」は、パフォーマンスに直接的な影響を与える実践的な研究分野である。

日々、ネットやメディアで繰り広げられる記事や発言も、行動ファイナンスを知ると知らないとでは、楽しみ方に違いがでてくる。

よって、今回は読者の皆様に行動ファイナンスのきほんを完結に説明したい(興味があったら専門書などを読んでみて下さい)


行動ファイナンスとは、投資家のための心理学のことである。「なぜ人は合理的な判断ができないのか?」その心理的な要因を体系化したものである。

まず、それらはCognitive errors(認知エラー)とEmotional biases(感情バイアス)の2つに大別される。

ポイントはCognitive errorsは教育によって軽減することが可能であるが、Emotional biasesは修正が難しく、ある程度は受け入れる必要があるということである。

以下に、それぞれに属するバイアスを列挙し、その緩和策を記載する。

Cognitive errors(認知エラー)

  1. Conservatism bias(保守性バイアス)・・・無意識のうちに最初に予想を立てたときに使用した情報に重点を置いてしまう。
  2. 【緩和策】新しい情報を注意深く見る

  3. Confirmation bias(確証バイアス)・・・自らの見方に一致する情報のみに注目し、相反する情報は無視する。
  4. 【緩和策】自分の意見と相反する情報を注意深く分析する

  5. Representativeness bias(代表性バイアス)・・・代表性のある考え方(ステレオタイプ)によって、情報を主観的なカテゴリーに分類する。
  6. 【緩和策】情報のサンプルサイズを念頭に本当の確率を考慮する

  7. Control bias(コントロールバイアス)・・・実際以上に結果をコントロールできると感じ、主観的な成功確率を高く考える。
  8. 【緩和策】投資の複雑さを理解する。記録を取り結果をコントロールできているか判断する

  9. Hindsight bias(後知恵バイアス)・・・後講釈で結果を予想どおりであると解釈する。または、予想を結果に合わせる。
  10. 【緩和策】すべての予測と行動の詳細な記録をつける

  11. Anchoring(アンカリング)・・・A社株は来月までに1,000円に達するというように、数字を基にターゲットを決め、それを過度に意識してしまう。
  12. 【緩和策】新しい情報が、元々の予測や意見に与える影響を考慮する

  13. Mental accounting bias(心の会計バイアス)・・・同じお金でありながら、資金の出所や用途によって扱いを変えてしまう。例えば、ギャンブルで稼いだお金と、勤労による所得とでは、使い道を異にする。
  14. 【緩和策】すべての投資を同一ポートフォリオの一部と考え、相関関係を分析する

  15. Framing bias(フレーミングバイアス)・・・質問の仕方によって答えが変わるように、情報の加工の仕方によって、受け取り方が変わる。
  16. 【緩和策】情報の本質を見極め、リスクとリターンにフォーカスする(利益と損失ではなく)

  17. Availability bias(利用可能バイアス)・・・簡単に思い出せる情報やイベントが、優先して意思決定に利用される。
  18. 【緩和策】長期的な戦略に基づいて意思決定をしているかチェックする


Emotional Biases(感情バイアス)

  1. Loss aversion bias(損失回避バイアス)・・・リスク回避的でなく損失回避的になる。損失による効用の減少が、利益による効用の増加よりも大きくなる。
  2. 【緩和策】損切りする精神的苦痛を克服し、予測に基づいて意思決定をする

  3. Overconfidence bias(自信過剰バイアス)・・・illusion of knowledge(知識の幻想)であり、リスクを過小評価し、成功確率を過大評価する。
  4. 【緩和策】記録を残し、成功と失敗の両方を分析する

  5. Self-attribution bias(自己責任バイアス)・・・成功はすべて自分の功績だと考え、失敗は他の人のせいにする。
  6. 【緩和策】投資の意思決定を必ず自己完結させる

  7. Self-control bias(自己コントロールバイアス)・・・Lack of discipline(規律正しくない)。短期的な満足と、長期的な目標がバランスしていない。
  8. 【緩和策】資金管理を注意深く行い、過大なリスクを取っていないかチェックする

  9. Status quo bias(現状維持バイアス)・・・価値を高めるための変更をせず、現在のアロケーションのままにする傾向がある。
  10. 【緩和策】リスクとリターン、適切なアセットアロケーションを強く意識する

  11. Endowment bias・・・(相続資産など)自分が保有する資産の価値を高く評価する(自分が保有していない場合に比べて)。
  12. 【緩和策】リスクとリターンにおいて不利なポートフォリオでないかを分析する

  13. Regret-aversion bias(後悔回避バイアス)・・・後悔したくないという思いから、大衆迎合するための行動を取る。
  14. 【緩和策】大衆迎合した投資のリターンは低いことを理解する

以上である。
私自身も、新しい情報を処理したり、意思決定を行う際にいつもこれらのバイアスがないかを注意している。

投資家として安定したパフォーマンスを得るためには、必携のマインドセットと言えるだろう。

[ 2017/08/26 18:00 ] 投資全般
筆者紹介

check 小松原 周

こまつばら・あまね/ファンドマネジャー・アナリスト
徹底した企業リサーチと業績予想をもとに投資を行う。現役のファンドマネジャーであるため、外部への情報発信において、個別銘柄の投資推奨などは行っておらず、報酬も得ていない。

(会社四季報より引用)

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