「どうして時間は巻き戻せないのだろう?」
唐突ですが、こんなことを思ったことはありませんか?
人間、誰しも完璧ではありません。
「あの時こうしておけば……」「今ならもっとうまくやれるのに……」などなど、長く生きていれば必ず身に覚えがあるはずです。
こんなことを思うのは、私たちは皆、一度起こってしまったことが二度と元に戻らないことを経験的に知っているからです。時間が巻き戻せたらどんなに素晴らしいか、わざわざ強調するまでもないでしょう。
ところがどっこい、そんな常識に反して、「物体の運動法則は時間の逆回しを原理的に禁止していない」と聞いたら、皆さん驚くでしょうか?
恐ろしいことにこれは事実です。
例えば、ボールが上から落ちてくる様子をビデオに撮ったとしましょう。
撮影された動画では、画面の上からボールが現れ、速度を上げながら画面の下に消える。この動画を逆回しにして誰かに見せたとして、その人は、その動画が実は逆回しであることに気付けるでしょうか?
これは大変難しいでしょう。逆回しの動画を観た人は、誰かが下からボールを投げ上げたのだろう、と想像するはずです。
この「減速しながら上昇する」というボールの動きは、物理法則にも矛盾しませんし、そこら中で見かける当たり前の運動で、おまけに、「加速しながら落下するボール」の時間反転です。
こんなことが起こるのは、ひとえに、物理法則が時間の反転を禁止していないからです。
これはたくさんの物体が絡んでも同じです。極端な話、全ての物体は原子や分子で出来ているので、どんな運動でも、元を正せば構成要素の原子や分子の運動です。原子や分子を支配する運動法則が時間反転させても変わらない以上、この世界では、どんな運動の逆回しも物理学的にあり得るのです。
ここで、「なら、ワイはどうして過去に戻れへんのや!?」と思ったのはあなただけではないはずです。
実際、世の中には逆回しをすると不自然になる現象で溢れています。
この話にはどうも詭弁の匂いがします。