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 自閉スペクトラム症(かつてアスペルガー症候群と呼ばれていたもの)は社会性の欠如や他者とのコミュニケーション能力に困難が生じる発達障害であるが、これは人間界だけに限ったことではない。社会生活を営む動物にもその傾向がみられるという。

 こういった自閉症的行動はネズミ、ネコ、イヌといった動物でも進化した可能性が示唆されてきた。そして最新の研究によれば、社会性に乏しいミツバチは人間の自閉スペクトラム症に似た遺伝症状を有しているのかもしれないそうだ。
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社会的合図に反応しない一部のミツバチ


 米イリノイ大学のジーン・ロビンソン(Gene Robinson)教授らは、無関係な246グループのミツバチを観察し、2種類の社会的合図に対する反応を研究した。

 合図の1つは、”よそ者”の出現だ。これは通常、巣の仲間からの攻撃的な反応を引き起こす。もう1つの合図は、女王バチの子供の存在である。こちらは働きバチによる給餌行動を促す。

 しかし観察から、こうした合図に対して反応しないグループがあることが判明した。社会的行動に関連する遺伝子の活動を調査するために、この”無反応”ミツバチの脳を解析したところ、1,000個以上の遺伝子の働きが通常とは異なっていることが判明した。

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人間の自閉症に似た遺伝的な特徴


 またこうした遺伝子の多くは、人間の自閉症の前兆である遺伝的な特徴と密接な関連があることも分かった。

データからは、遠く離れた種の社会的な無反応には共通する分子の特徴があることが分かりました。重要なのはその原因を特定することです。

人間は大きなミツバチではありませんし、ミツバチも小さな人間ではありません。社会的反応は文脈に応じるもので、この2つの事例は同じものではありません(ロビンソン教授)


動物の社会的行動の進化を解くカギに


 この研究は動物界において共通して受け継がれてきた分子の遺産を垣間見た初めてのもので、社会的行動の進化に関連する驚くべき手がかりをもたらしてくれるという。

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 人間とミツバチが共通の祖先から別れたのは5億年以上前のことで、両種が複雑な社会システムを進化させた方法はまだはっきりしていない。

 ロビンソン教授によれば、おそらくミツバチと人間はそれぞれ別個に社会行動を進化させたが、”共通のツール”を使ったと考えられるのだそうだ。

 今回の発見は『Proceedings of the National Academy of Sciences』で発表された。

via:news / alnmagなど/ translated by hiroching / edited by parumo
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コメント

1

1.

  • 2017年08月27日 09:58
  • ID:kN7wVqx10 #
このコメントへの意見(1件): ※3
2

2.

  • 2017年08月27日 10:28
  • ID:1JH5Vvtn0 #
3

3. 匿名処理班

  • 2017年08月27日 10:53
  • ID:PIohZvVE0 #
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goodbad+1
▼このコメントに返信する

少し前に「ミツバチやアリの社会では、数割は働かずブラブラしている怠け者集団が存在する。しかし働き者集団を排除すると、その怠け者集団が代わって働き出す」という観察報告があったよね。それも踏まえて考えると、

>この”無反応”ミツバチの脳を解析したところ、
※1,000個以上の遺伝子の働きが通常とは異なっていることが判明した。

これ、状況や環境が変われば、遺伝子の働きが通常になるんじゃないの?

4

4. 匿名処理班

  • 2017年08月27日 11:14
  • ID:YknfbSPN0 #
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goodbad-16
▼このコメントに返信する

環境じゃなく遺伝子レベルなら、ナチュラルボーン役立たずやん
人間のアスペも永遠に役立たずなんだろうなぁ…

このコメントへの意見(2件): ※11 ※12
5

5.

  • 2017年08月27日 11:21
  • ID:98cgd6Mg0 #
6

6. 匿名処理班

  • 2017年08月27日 11:40
  • ID:Y4iHmeEc0 #
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goodbad+14
▼このコメントに返信する

「ハチにも自閉症スペクトラムがある」、それだけでも単純におもしろい
けど、この研究の肝はこうだと思う
ヒトとハチは何億年も前に分岐していて、社会行動に関わる形質は独立に進化させたはず
にも関わらず、自閉症スペクトラム様社会形質に関する遺伝子群には、共通性がある
おそらくこの形質は、異なる種が同じような器官を獲得するのと同じ、収斂によるものだろう
ということは、自閉症スペクトラムは適応的に意義がある形質と仮説を立てることができるかも知れない
ってことなんじゃないかな
ヒトの社会ではデメリットのイメージが強いものだけど、それを再考する価値があるとこの論文から言えるのではないでしょうか

7

7. 匿名処理班

  • 2017年08月27日 12:06
  • ID:s7MCmooP0 #
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goodbad+4
▼このコメントに返信する

全ての個体が同じ合図で同じに機能すれば効率的ではあるが、行動が画一化する事で集団としての状況判断が硬直化してしまい、一歩間違えれば仲良く全滅するリスクもある
「ノイズ」があるからこそ柔軟で強い群れになるんだと思うよ

8

8. 匿名処理班

  • 2017年08月27日 12:21
  • ID:YvteAt7A0 #
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goodbad0
▼このコメントに返信する

一種の収斂進化ということなんだろうか

9

9.

  • 2017年08月27日 13:30
  • ID:A8gps9e80 #
10

10. 匿名処理班

  • 2017年08月27日 13:48
  • ID:FhhvbhDw0 #
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goodbad+2
▼このコメントに返信する

必要ではあっても多いと困る
そう言う存在なんだろうね

11

11. 匿名処理班

  • 2017年08月27日 14:29
  • ID:0x0yGKHP0 #
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goodbad+3
▼このコメントに返信する

※4
過集中が劇的に有利に働くクリエイティブ業の絶対的勝者なんだよなぁ

12

12. 匿名処理班

  • 2017年08月27日 14:54
  • ID:POYj.nsz0 #
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goodbad+3
▼このコメントに返信する

※4 うまく言えないけど、必要な存在だからあるんと思う。
それは、ほかの障碍でもそうだと思う。
(当事者で、今苦しんでいる人には申し訳ありません。
でも「障碍は不便だけど不幸でも可哀想でもない」と言う人に希望を感じる。)
だからみんなで、少しでもみんなが住みやすい世界にすることが、いい方向なんだと思う。

13

13. 匿名処理班

  • 2017年08月27日 15:19
  • ID:gD7RPr.d0 #
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goodbad0
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人間社会で考えたとき、共感性が高すぎると困る職業(共感性がないほうが向いている職業)もあるから蜂にも何か理由があってそういう個体が存在しているのかもしれない。

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