高速に文字を生み出すMarkdownエディタか、それとも汎用的な原稿執筆ツールか。またひとつ分かれ道が生まれた形になりました。
今回の「最後のライフハック本」の原稿を書いていたさなかに、ちょうどすべての原稿を執筆していた Ulysses がサブスクリプションモデルに移行するというニュースが入ってきました。発表の骨子は以下の通りです:
- Ulyssesの新しいバージョンから、月額550円、年額4400円の購読制に移行します。
- すでにUlyssesを購入している人は、そのバージョンをそのまま使用できるので、アプリが利用不能になることはありません
- 既存ユーザーはいまサブスクリプションに移行するならば、永久に年間購読の費用が割引になります。割り引いた金額は(おそらく説明によれば)月額の場合の金額を半額にしたものを12でかけた数字で年3300円。
- 最近Ulyssesを買った人には18ヶ月間の無料利用期間を設定
Ulyssesをほぼすべての執筆、あるいはWordpress記事投稿機能を経由してブログのために利用している私のようなユーザーには、これは安いくらいです。
こうしてサブスクリプションモデルに移行することで今後も安定して新機能がでるならば喜んで払いますし、積極的に機能改善の提案もしていこうという気になります。
ここで、ちょっとしかテキストを打たないカジュアルなユーザーにとっては判断が迫られます。メモを取る程度だったらなにもUlyssesでなくてもよいのですから、SimplenoteやEvernoteですましてしまうのでもよいでしょう。
しかしそもそもUlyssesを選んだのは、WordやHTMLやPDFといったエクスポートをする仕事があるためで、そういう人にとってはなかなか、ここまで高機能な代替のアプリはmacOSではないかもしれません。さあどうしよう、というわけです。
Scrivener 3の足音
そんななか、文章書きの楽園ツール、Scrivener の新バージョンも告知されており、すでにmacOS版は仕上げに進んでいるらしく、週に一度ほどの情報のアップデートが始まっています。
リリース日はまだ決まっていませんが、今年の11月のNaNoWriMo(小説を書く月間)には間に合うようにすると開発者が発言していますので、もう9月中、遅くても10月中とみてもよさそうです。
Scrivener 3は、さまざまな意味で文章書きには注目です。というのも、Scrivener 2と引き続く iOS版は、互いに別々のプロジェクトとして作られていて、大きな点では変わらないものの、親和性や連携はもう少し洗練されていてもよい部分がありました。
今回は、最初から二つの土台があって、それを最適化するところから作業が勧められています。重複した機能や、分かりにくい部分をシンプルにした形で Scrivener 3がまとめられていて、それと連携するように iOS 版が作られているのですからかなり安心です。そして今回はWindows版もあとからリリースされるといえ、macOS版に機能や見た目で追いつくこともわかっています。
すでに発表されているいくつかの機能、たとえばラベルの時系列表示などは、小説の流れを追いたい人、大きな文章のプロジェクトの構造を追いたい人には即戦力になるはずです。
そしてScrivener 3は、サブスクリプションではなく、買い切りのアプリになることがすでにわかっています。
Scrivenerの開発ブログのコメント欄も読んでいるのですが、いまのところユーザーからはUlyssesを意識して「同期をしっかりしてほしい」という要望と、「Markdown対応はネイティブに組み込まれるのか」という質問があったものの、それに対する返事はありません。
UlyssesかScrivener 3か
というわけで、Mac上で日常的に文章を書き、それをすばやくWord形式、テキスト形式、PDFといったように変換して送信することがワークフローの一部になっているというひとにとっては、Ulysses か Scrivenerかという贅沢な選択があります。
Markdownでとにかくガンガン書き、iCloudでスマートフォンとも意識せずに同期し、かつフォーマットなどはあとで調整するというタイプのライティングをするひとにとってはUlyssesは文句なく年間購読料をはらう価値があります
執筆だけでなく、ある程度の編集作業もおこなって最終原稿をコンパイルしてエクスポートするというところまでをツール上で行うというタイプのライティングや、書籍執筆の作業、あるいは考える作業そのものがツールの中に組み込まれていることを期待している人にとっては、Scrivener の新バージョンがとても魅力的でしょう。
ここ最近のUlyssesの躍進をみていると、まったく異なるツールとはいえ、Scrivenerの開発者が意識していないというのも考えにくいので、おそらくそのもっとも便利な部分はしっかりとフォローしてくるのではないかと期待しています。
とりあえず私はこういう仕事をしているので、もちろん両方を使うことになるのですが、ブログの執筆に関してはもうUlyssesで下書きをするということから離れられそうにありません。
きたるScrivenerがどのような魔法をみせてくれるのか、期待しながら待ちたいと思います。