8月25日のお昼ごろ、いつも仕事で使っているチャットツール「Slack」がデスクトップのWebブラウザからアクセスできなくなりました。在宅で仕事をしている私にとって、Slackで編集部の状況をチェックできないのは結構心細いものです(メールや他のメッセージングサービスは使えましたが、編集部の情報共有はまずSlackで行われます)。
Slackのステータスを見ても「順調です!」とあります。そのとき、問題は米国にあるSlackのシステムではなく、日本側にあるのかな? と思いました。
そのうち、Twitterでさまざまな日本のサービスで障害が発生しているという報告があり、OCNやKDDIも障害について発表しました。
でも、具体的な原因はなかなか発表されません。KDDIの発表は「インターネットをご利用のお客様にて大量の経路変動があり、通信不安定な状況が発生しております」で、少なくとも物理的な故障やサイバー攻撃でないことは分かりましたが、なぜ経路変動があるのかは説明がなかったのでした。
ダウンディテクターという、世界のネットワークの状況を表示する企業のサイトを見ると、8月25日だけで40以上のサービスで障害が報告されていました。ここのレポートは、Twitterやその他の複数の情報源のデータをまとめたものです。
チャットツールが使えないくらいなら何とかなりますが、こうした大規模なネット障害によって、モバイル決済サービスが使えなかったり、証券会社のオンライントレードサービスが使えなかったりだと、お金が絡むだけに怖い話です。
25日の段階で、原因はとある事業者がBGP(Border Gateway Protocol)という経路制御のための情報として、誤ったデータを大量に流してしまったためではないかとの推測が出ていました。
翌26日には朝日新聞の取材を皮切りに、Googleが「ネットワークの誤設定により障害が発生し、8分以内に正しい情報に修正した。ご不便、ご心配をおかけしたことをおわびする」と謝罪したとの声明が報じられました。なんと、Googleさんが犯人だったとは。
誰が犯人かはともかく、人間によるミスでインターネットにこれだけの影響が出るわけです。
Googleの誤設定は8分以内に修正され、OCNの障害は発生から約20分で復旧したとありますが、個人的にSlackをPCのWebブラウザで使えるようになったのは午後4時過ぎで、4時間近く使えなかったことになります。
JPNIC(日本で唯一グローバルIPアドレスを割り当てる業務を担当する、国内インターネットの運営支援を行う社団法人)のBGPについての解説を読むと、オペレーターが設定を間違えるとこうした事故が発生する危険性はもちろん認識されていて、それを回避するための複数の仕組みが用意されていることが分かります。
それでもミスは起きます。人間だもの。
普段はもう、水道の水と同じようにいつでも使えるのが当たり前になっているインターネットですが、水道のような公共インフラとの違いをこういうときに思い知らされます。水道局の1人の人がどこかの水栓を間違って閉じちゃっただけで10万人以上の人が水を使えなくなる、ということはないでしょう。
インターネットで見つけたインターネット関連の話をインターネット経由で掲載することで生計を立てている私は、ずいぶんと心細い立場なのだなぁとあらためて思いました。
Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.