2007年11月03日

オマエラはもっと嫌いです。

前回からのつづき。



あの時、あの瞬間には、僕が真剣に悩んで、真剣に恋をして、真剣に考えた色んなことがあって、忘れられないこととか、忘れちゃいけないこととか沢山あって、だからそれをあんな根も葉もない形にされたら、僕はやっぱり納得がいかないし、みんなと一緒に素直には笑えない。
だからといって、松江さんにしても作品に労力を割いてきたワケだし、一方的に「納得いきません」ではあんまりだと思ったから、第一回ガンダーラ映画祭出品上映に限って僕は譲歩したのだ。というか、そもそもガンダーラ映画祭用に作ったものだったんだし、松江さんにしてもそこで納得するべきだった筈だ。
作品が完成した時だって「もし他で上映するようなことになるなら、その時には必ずまた相談するから」と約束したワケだし、僕としてはそこで改めてNGを出すつもりでいた(今思えばこれが甘かった)。
それなのに、「この前〇〇で上映したから」とか「劇場公開が決まったから」(「劇場公開はしないでください」と言ったのにも関わらず)とか事後報告で済ませてきて、それでも松江さんの顔をたてるつもりで僕は苦虫を噛み潰す思いをしながら我慢してきたというのに(無用なトラブルを避けたかったというのもあるし、何も知らずに尽力している関係者の方々への配慮という意味もあった)、テレビで勝手に映像を使ったり、それは悪質極まりないものへとエスカレートしていった。
細かい話をすれば、作品の著作権に関してだって100%監督一人の物なのかどうかだって疑わしいのに(ちゃんと権利考証すればわかることだけど)。
ましてやDVDなんて……。
結局、弱者は泣き寝入るしかないのか。
「口約束も契約のうち」という民法原則を持ち出すまでもなく、そもそも後から出てきた話に欲を出して「男と男の約束」にケチをつけるとはいかがなものか。
僕が勇気を出してどれだけ真剣に話をしても、ことあるごとに舌打ちをしたり、携帯をいじったり、少しでも気に障る話題になると隣の直井さんに「こいつ殴ってもいいですか?」とか聞いたり。
そんなこといちいち人に聞くなよ。殴るなら殴ってこいよ。人に聞かなきゃ喧嘩も出来ねぇのか?
本当に男らしくない。

あー、何だかただの愚痴になってしまった。否失敬。

ただ、なにも人権に対して鈍感なのは松江さんに限った話ではないのかもしれない。
世の中の風潮なんだろうか、テレビを見ているとよくそんなことを思う。
人の生き死にをエンターテインメント化する報道のあり方とか、無関心が人を殺す世の中で笑えれば何でもいいのか?
昔から身内ノリで人を貶める類いのお笑いが生理的・倫理的に大嫌いだったし、寧ろ世間ズレしているのは僕の方かもしれない。
でも、物事を深く考えず偉そうにキレイゴトだけを平気で並べたてる、その厚顔無恥な態度が僕は許せんのだ。
ましてや、性的な乱暴を笑いで肯定してはならないし、それを「口では嫌がっていても体は正直」なんていう前近代的且つアホ丸出しな理由で正当化してはならない筈だ。
あれがもし僕ではなくて、女性や僕よりずっと若い人であったならばどうなっていたというのだろう。
同じく、程度の差こそあれ(逆にいえば「程度の差でしかない」ということに留意すべきだ)、人を傷つける行為であるということに変わりはない。
僕一人が我慢して済む問題なら別に大したことではないのかもしれないが、あれを見て不愉快に感じる人は大勢いると思うし、実際に僕はそういう声を耳にしている。良識を持った人間なら当然の反応だ。
それなのに、あたかもそう感じること自体が、まるで恥ずかしいことかのように言うその感覚が僕は気持ち悪い。
ふざけた価値観がまかり通る世の中で、人として当然の感覚が失われていっているのかもしれない。
そもそも罪の意識が欠如しているワケだ。
僕は「毎日、同級生たちから挨拶代わりに尻を蹴られる」という学生生活を送ってきたけれど、もしかしたらその同級生たちからすれば、それは本当に「挨拶代わり」のつもりだったのかもしれない。
しかし、蹴られている方からしたら、とてもそんな風に思えるものではない。
相手に罪の意識がない以上、怒ろうにも怒れないし(「怒るのは恥ずかしい」みたいな空気を作っているから悪質だ)、逆に怒ったら怒ったで逆ギレされるのは目に見えているし。
その時に僕が出来た精一杯の反抗は、脳内でその同級生たちを僕の幽波紋(妄念)でボコボコにしてやるくらいが関の山だった。

僕は人にバカにされたりするのは馴れっこだから、別に僕の見た目とか気持ち悪さを笑ってもらう分には全然構わないし、寧ろそれで誰かがハッピーな気持ちになれるのなら僕は嬉しい。
でも、何も知らないクセに僕の周りの人を悪く言うのだけは許せないし、松江さんが自らの上位承認欲求を満たす為だけに、人前で何の根拠もなく平気で人を貶めるような言動をしたことも僕は我慢ならない。
今思えば、その時何も言えなかった自分が本当に悔しい。
もうキレイゴトはうんざりだ。
要は作品がどうのこうのという以前に、僕はあの強烈な自己愛からくる他人への侮蔑と歪んだ選民意識が反吐が出る程気に入らない、ってだけだ。



ところで今日、下北沢で自転車を撤去されてしまった(もしくはパクられたか)。
撤去費用三千円は高い。
一カ月を数千円で過ごさねばならぬ身としては非常に辛い。
かといって、取りに行かないワケにもいかないし……。
せめてコンポーネントだけでも返してはいただけないだろうか。
あの自転車、家賃の約半年分に相当するし。
今までニコニコ現金払いで生きてきたけれど、ついに初めての消費者金融……か?

それにしても、いつまでたっても一向に咳が止まらない。
もしかしてこれカゼはカゼでも「返りの風」か!?
死ぬの?



皆様からコメントやメッセージでご意見をいただきました。誠にありがとうございます。
これを真摯に受け止め、僭越ながらお答えさせていただきます。

タイミングに関してですが、単純に今まで言う機会がなかったからというのが一つです。
今回の内容は事実上「告発」という感じになってしまってはいるものの、松江さん含め関係者には幾度となく話してきた内容ではあります(聞く耳をもっていただけなかったのが実情ですが)。
このブログは日記の形式をとっており、その時思っていること、感じたことなどを正直に書いていこうという趣旨のもと行っており、若干躊躇する内容ではあったものの、事実は事実として隠す必要もないだろうと判断し、掲載した次第です。事が事だけに感情的になってしまった部分はあるにせよ、個人を誹謗中傷する目的で掲載したわけではありません。
出演に際して、僕に落ち度がなかったのかといえば決してそうは思いません。
舞台上でのパフォーマンスや告知に関しましても、どこか色気というか欲を出した部分があるのではないか、と思われても仕方はないのかもしれません。
しかし、劇場公開を止められなかった(劇場公開を強行された)僕としては表に出て誤解を少しでも解いていきたい、という意味でも、あの作品を観た人たちを少しでも繋ぎとめておきたかった、というのが僕の正直な気持ちです(誤解を恐れずにいうと、僕はいわゆる「出たがり」とかでは決してありません。サービス精神が過剰なのは認めますが)。
それでも、あの場での宣伝活動が単純に集客に繋がったのなら、それで一応の納得をするべきなのかもしれませんが、どうしても割り切れないのが今の僕の心情です。
キレイゴトに聞こえるかもしれませんが、それを不愉快に思われる方がいるのは当然として、それでも多少のご理解はいただけるものと信じたいし、こうして少なからず反応をいただけたことは、今までずっと一人で悩んできた身といたしましてはまったくもって嬉しい限りです。
本当にありがとうございます。
今回の文章に関しましても、『ドキュメンタリー』というエンターテインメントの延長線上にあるものとしてご理解いただければ幸いです。
これからもどうぞよろしくお願い申し上げます。

onosendai at 06:01│Comments(4)clip!

この記事へのコメント

1. Posted by 宮川   2007年11月04日 21:38
なんとも上手に言えませんが、
面白ければなんでもいいとか、
自分の利益の為に利用したり、強く物を言って黙らせたりだとかは、
私は嫌いです。
私がそんなこと言ったからって、だから何?といった感じかも知れませんが、
私は加賀さんを応援しています。
これから色々と大変だと思いますが、負けないでください。
映画を作る以前に、人間として本当に大切なものは何なのか、みなさんわかっているはずです、照れくさくて言えないだけです。
だから自信を持ってがんばって下さい。
加賀さんの味方はきっとたくさんいらっしゃいますよ!
(偉そうにすいません)





2. Posted by TKO   2007年11月04日 23:58
うん。
3. Posted by 原(さかな)   2007年11月06日 10:40
言片が乏しいので上手く発言する事ができませんが、加賀監督をずっと心から応援しておりますし、ファンでおります。監督の心情・信念が報われる事を信じていますので頑張って下さい。
4. Posted by 加賀   2007年11月07日 22:21
ううぅ……(泣)。
みなさんありがとうございます。
でも、おかげさまで元気が出てきました。
ちゃんと生きていきます。
本当にありがとうございます。

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