加計の獣医学部の認可保留 10月に結論 文科省審議会

加計の獣医学部の認可保留 10月に結論 文科省審議会
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学校法人「加計学園」の獣医学部新設について文部科学省の審議会は実習計画などが不十分で課題があるとして認可の判断を保留し、10月末に改めて結論を出すことを明らかにしました。
加計学園が、来年4月、愛媛県今治市に新設を計画している獣医学部をめぐり、文部科学省の大学設置審議会は、学園が提出した教員の数や学生の定員、さらに教育内容などが適切か、審査を行ってきました。この学園の計画について審議会は認可の判断を保留し、今後も審査を継続するとしたことを明らかにしました。

保留とした理由については、実習の時間がおよそ1か月で既存の獣医学部がおよそ4か月間実施しているのと比べて短いため学園が目指している生命科学などの分野を専門とする獣医師を養成する教育環境が整っていないことなどが指摘されました。

文部科学省はこの結果を学園に伝えました。大学設置審議会は今後、学園に修正案の提出を求めて来月以降、改めて審査を行い、10月末に認可の判断について結論を出すことにしています。

加計学園「粛々と事に当たって参ります」

学校法人「加計学園」は「設置審議会の審議継続中ということもあり、保留についてのコメントは差し控えさせて頂きます。学園、大学としては認可に向けて粛々と事に当たって参ります」というコメントを出しました。

文科相「しっかりと審査してほしい」

林文部科学大臣は、京都市で記者団に対し、「審議会で、教育課程、教員組織、施設設備、財務状況などが法令に適合しているか、引き続き審査が行われ、10月下旬ごろをめどに審査結果が答申される予定になっている。専門的、学問的立場から審査していただいており、静かな環境で、しっかりと審査してほしい」と述べました。

自民 岸田氏「国民の声にこたえる努力が大事」

自民党の岸田政務調査会長は、秋田市で記者団に対し、「有識者の審議会が中立の立場で示した判断であり保留されたものがどうなるのか、今後に注目していかなければならない。引き続きしっかり議論が行われて、判断が下されることを待ちたい。一方で、国民の中に、まだ、『加計問題』に対し、さまざまな意見や疑問の声があるのも事実だと思うので、政府与党一体となって国民のさまざまな声にこたえていく努力が大事だ」と述べました。

民進 山井氏「国民に説明する責任がある」

民進党の山井国会対策委員長は国会内で記者団に対し、「安倍総理大臣の肝いりの『加計学園』の獣医学部新設が保留になったことで、ますます『問題が多いのではないか』という疑念が深まった。臨時国会の大きなテーマの1つになると同時に、10月の衆議院補欠選挙の争点になるかもしれない。早急に梶山地方創生担当大臣や林文部科学大臣に加えて、安倍総理大臣も、正々堂々と国会に来て、なぜ保留になったのか、国民に説明する責任がある」と述べました。

愛媛県知事「残念に思う」

愛媛県の中村知事は「長年に渡る今治市と愛媛県の思いがようやく扉をこじ開けたのに、結果として『保留』は、残念に思う。指摘や問題があるのであれば、事業者の加計学園が真摯(しんし)に対応することに尽きると思う」と述べました。

愛媛 今治市長「しっかりと精査したい」

愛媛県今治市の菅良二市長は記者会見し、「獣医学部が52年ぶりの新設ということで、審議会も慎重を期した判断だと思っている。もちろん無駄なことは絶対に許さないし、市として補助金を出すのはこれからなので、しっかりと精査したい。学生たちがここに来てよかったと思える大学を作り上げられるよう、最大限協力したい」と述べました。

生徒「保留となったのは残念」

獣医学部を目指す生徒からは定員が国内最大となる予定の獣医学部の認可が先送りされたことに戸惑いの声があがっています。

大阪・淀川区にある予備校、「大阪医歯学院」では、現在、47人の生徒が獣医学部への進学を目指しています。

予備校によりますと、先月開かれた入試説明会には、加計学園の担当者も参加し、推薦入試を11月、一般入試を2月にそれぞれ実施する予定だと説明したということです。

生徒の1人は「倍率が高い獣医学部の選択肢が広がると期待しているので保留となったのは残念です」と話していました。

また、別の生徒は、「不安な要素を残すよりはしっかりと検討したうえで開校するかどうか決めてほしいです」と話していました。

この予備校の北原裕司理事長は「新たな獣医学部ができるという期待とともに、教育内容の説明が少なくて不安だという声も聞く。判断が先送りされる分、しっかりとした教育内容を確保してほしい」と話しています。

獣医学部責任者「最大限努力していく」

加計学園が運営する千葉科学大学の副学長で、新たな獣医学部の学部長に就任予定の吉川泰弘氏は「計画の足りない部分について審議会から非常に細かく意見を出してもらったと思っている。認可が保留されたことで開学のスケジュールに全く影響が出ないわけではないが、できるだけ早く認可を受けたい。今後、最大限の努力をしていく」と話しています。

保留の理由「実習計画に課題」

加計学園の申請内容に対して、文部科学省の審議会が課題があると指摘したのは学生に対する実習の計画です。

実習の計画について、学園では、140人の学生を2つのグループに分けたうえで、1つの実習科目をおよそ1か月間で履修する時間割を組んでいました。

これについて審議会では既存の獣医学部の場合、実習はおよそ4か月間実施していると指摘され、「学園の計画は、短期集中型で、学生が予習や復習も含めて知識や技術が身につけられない」として計画を見直すよう求めました。

また、学外の実習施設の中には、大学から移動するのに車で3時間以上かかるものもあるとして、学生の負担にならないよう見直しを求めています。

このほか、全国で最も多い140人の学生に対し、教員の指導体制が不十分であることや、学生が研究を進めるうえで十分なスペースが確保されていないのではないかといった指摘がされています。

獣医学部における実習とは

獣医学部では講義形式でなく、実地や実物で知識や技術を身につける「実習」の時間は極めて重要とされています。

青森県にある北里大学獣医学部は、現在の獣医学部の中では最も多い、1学年およそ120人の学生が在籍しています。

大学は必修となっている実験動物学や解剖学など19の実習科目に加えて、独自に10の実習を行っています。

担当教員が指導にあたるだけでなく、研究生など10人ほどが支援しています。実習は1科目を履修するのにおよそ4か月かかるということで女子学生の1人は「実習はためになりますが、ついていくのは結構大変です」と話していました。

北里大学の高井伸二獣医学部長は「獣医師となるには基礎から臨床までさまざまな分野を学ぶ必要がある。多くのスキルを身につけた実践的な獣医師を養成するためこれだけの実習を組んでいる」と話しています

設置審の判断とスケジュール

文部科学省によりますと、今回と同じく、大学設置審議会が一時、認可の判断を「保留」したケースは、過去10年間で110件に上ります。

このうち、大学が計画を修正し最終的に認可されたケースが89件、大学が申請自体を取り下げたケースが19件、そして、不認可となったケースが2件となっています。

今後、審議会は加計学園が来月、提出する予定の修正案をもとに再び審理を行い、10月末に結論を出す方針です。

加計の獣医学部の認可保留 10月に結論 文科省審議会

学校法人「加計学園」の獣医学部新設について文部科学省の審議会は実習計画などが不十分で課題があるとして認可の判断を保留し、10月末に改めて結論を出すことを明らかにしました。

加計学園が、来年4月、愛媛県今治市に新設を計画している獣医学部をめぐり、文部科学省の大学設置審議会は、学園が提出した教員の数や学生の定員、さらに教育内容などが適切か、審査を行ってきました。この学園の計画について審議会は認可の判断を保留し、今後も審査を継続するとしたことを明らかにしました。

保留とした理由については、実習の時間がおよそ1か月で既存の獣医学部がおよそ4か月間実施しているのと比べて短いため学園が目指している生命科学などの分野を専門とする獣医師を養成する教育環境が整っていないことなどが指摘されました。

文部科学省はこの結果を学園に伝えました。大学設置審議会は今後、学園に修正案の提出を求めて来月以降、改めて審査を行い、10月末に認可の判断について結論を出すことにしています。

加計学園「粛々と事に当たって参ります」

学校法人「加計学園」は「設置審議会の審議継続中ということもあり、保留についてのコメントは差し控えさせて頂きます。学園、大学としては認可に向けて粛々と事に当たって参ります」というコメントを出しました。

文科相「しっかりと審査してほしい」

林文部科学大臣は、京都市で記者団に対し、「審議会で、教育課程、教員組織、施設設備、財務状況などが法令に適合しているか、引き続き審査が行われ、10月下旬ごろをめどに審査結果が答申される予定になっている。専門的、学問的立場から審査していただいており、静かな環境で、しっかりと審査してほしい」と述べました。

自民 岸田氏「国民の声にこたえる努力が大事」

自民党の岸田政務調査会長は、秋田市で記者団に対し、「有識者の審議会が中立の立場で示した判断であり保留されたものがどうなるのか、今後に注目していかなければならない。引き続きしっかり議論が行われて、判断が下されることを待ちたい。一方で、国民の中に、まだ、『加計問題』に対し、さまざまな意見や疑問の声があるのも事実だと思うので、政府与党一体となって国民のさまざまな声にこたえていく努力が大事だ」と述べました。

民進 山井氏「国民に説明する責任がある」

民進党の山井国会対策委員長は国会内で記者団に対し、「安倍総理大臣の肝いりの『加計学園』の獣医学部新設が保留になったことで、ますます『問題が多いのではないか』という疑念が深まった。臨時国会の大きなテーマの1つになると同時に、10月の衆議院補欠選挙の争点になるかもしれない。早急に梶山地方創生担当大臣や林文部科学大臣に加えて、安倍総理大臣も、正々堂々と国会に来て、なぜ保留になったのか、国民に説明する責任がある」と述べました。

愛媛県知事「残念に思う」

愛媛県の中村知事は「長年に渡る今治市と愛媛県の思いがようやく扉をこじ開けたのに、結果として『保留』は、残念に思う。指摘や問題があるのであれば、事業者の加計学園が真摯(しんし)に対応することに尽きると思う」と述べました。

愛媛 今治市長「しっかりと精査したい」

愛媛県今治市の菅良二市長は記者会見し、「獣医学部が52年ぶりの新設ということで、審議会も慎重を期した判断だと思っている。もちろん無駄なことは絶対に許さないし、市として補助金を出すのはこれからなので、しっかりと精査したい。学生たちがここに来てよかったと思える大学を作り上げられるよう、最大限協力したい」と述べました。

生徒「保留となったのは残念」

獣医学部を目指す生徒からは定員が国内最大となる予定の獣医学部の認可が先送りされたことに戸惑いの声があがっています。

大阪・淀川区にある予備校、「大阪医歯学院」では、現在、47人の生徒が獣医学部への進学を目指しています。

予備校によりますと、先月開かれた入試説明会には、加計学園の担当者も参加し、推薦入試を11月、一般入試を2月にそれぞれ実施する予定だと説明したということです。

生徒の1人は「倍率が高い獣医学部の選択肢が広がると期待しているので保留となったのは残念です」と話していました。

また、別の生徒は、「不安な要素を残すよりはしっかりと検討したうえで開校するかどうか決めてほしいです」と話していました。

この予備校の北原裕司理事長は「新たな獣医学部ができるという期待とともに、教育内容の説明が少なくて不安だという声も聞く。判断が先送りされる分、しっかりとした教育内容を確保してほしい」と話しています。

獣医学部責任者「最大限努力していく」

加計学園が運営する千葉科学大学の副学長で、新たな獣医学部の学部長に就任予定の吉川泰弘氏は「計画の足りない部分について審議会から非常に細かく意見を出してもらったと思っている。認可が保留されたことで開学のスケジュールに全く影響が出ないわけではないが、できるだけ早く認可を受けたい。今後、最大限の努力をしていく」と話しています。

保留の理由「実習計画に課題」

加計学園の申請内容に対して、文部科学省の審議会が課題があると指摘したのは学生に対する実習の計画です。

実習の計画について、学園では、140人の学生を2つのグループに分けたうえで、1つの実習科目をおよそ1か月間で履修する時間割を組んでいました。

これについて審議会では既存の獣医学部の場合、実習はおよそ4か月間実施していると指摘され、「学園の計画は、短期集中型で、学生が予習や復習も含めて知識や技術が身につけられない」として計画を見直すよう求めました。

また、学外の実習施設の中には、大学から移動するのに車で3時間以上かかるものもあるとして、学生の負担にならないよう見直しを求めています。

このほか、全国で最も多い140人の学生に対し、教員の指導体制が不十分であることや、学生が研究を進めるうえで十分なスペースが確保されていないのではないかといった指摘がされています。

獣医学部における実習とは

獣医学部では講義形式でなく、実地や実物で知識や技術を身につける「実習」の時間は極めて重要とされています。

青森県にある北里大学獣医学部は、現在の獣医学部の中では最も多い、1学年およそ120人の学生が在籍しています。

大学は必修となっている実験動物学や解剖学など19の実習科目に加えて、独自に10の実習を行っています。

担当教員が指導にあたるだけでなく、研究生など10人ほどが支援しています。実習は1科目を履修するのにおよそ4か月かかるということで女子学生の1人は「実習はためになりますが、ついていくのは結構大変です」と話していました。

北里大学の高井伸二獣医学部長は「獣医師となるには基礎から臨床までさまざまな分野を学ぶ必要がある。多くのスキルを身につけた実践的な獣医師を養成するためこれだけの実習を組んでいる」と話しています

設置審の判断とスケジュール

文部科学省によりますと、今回と同じく、大学設置審議会が一時、認可の判断を「保留」したケースは、過去10年間で110件に上ります。

このうち、大学が計画を修正し最終的に認可されたケースが89件、大学が申請自体を取り下げたケースが19件、そして、不認可となったケースが2件となっています。

今後、審議会は加計学園が来月、提出する予定の修正案をもとに再び審理を行い、10月末に結論を出す方針です。