『検索が汚されている』
こんなセリフをよく聞きます。
近年はウェルク(DeNA)やヘルスケア大学などのキュレーションサイトで盗作コピペ、信憑性が無い記事などが問題となりました。
加えて、広告収入順に広告が並んだだけのアフィリエイトサイトや疑似科学のヘンテコサイトが検索上位に表示される状況…
少しWEBメディアに詳しい人ならすぐわかりますが、これらは一般の方には区別できません。
しかし、炎上が続いたことで、ネットリテラシーが低い層にも不信感が湧きはじめています。
そこで、今日は僕が普段の仕事やブログ記事作成で実践している『科学系コンテンツ、資料の検索方法』をまとめていきたいと思います。
”信用できる情報”をどうやって検索すれば良いのか?
コンテンツや情報を検索する側だけでなく、作る側の人たちも是非参考にしてください。
はじめに:参考文献って必要?
本や論文や特許、企業の商品紹介などの『資料』にはデータやグラフが使われます。
そして、その情報には必ず『データ元』が載っていますよね?
これがまず1つの指標。”誰がどう調べたことか”が明らかではないコンテンツは信用できません。
さて、僕がブログを書くときは【参考文献】をつける時があります。
”つけない時もある”のですが、参考文献を入れる基準は、
- 医療や食事など”ヒトの健康”に直接関わる
- エンタメ性が少なく、科学情報に特化している記事
- 自分の専門分野ではない
場合などです。
健康や医療のコンテンツは、間違ったことを書けないのが前提。
加えて、いち個人が断定的にコンテンツを作るには荷が重すぎます。
【参考文献】が役立つのはココ。
読者としては情報の信頼性が増し、ブロガーとしても炎上を防ぐクッションになります。
僕の場合、専門である食品工学のジャンルなら、指摘されてもディフェンスできます。
ただ、健康や医療…例えばアレルギーや病気などにアプローチするときは、知識があっても必ず”自分のため”に参考文献を明記します。
専門家を名乗るには知識が薄すぎますからね。
ただし、【参考文献】が嘘ばかりの可能性も!?
こうなると何を信じれば良いかわからなくなります…
次章からが本編。
医療情報やサイエンス、健康など、信頼できる情報を探す方法を紹介していきます。
入門編:信用できる情報はどこにある?
ネットの基本は『公的機関≧大学>企業>>>>個人サイト』
”信頼できる情報が欲しいなら省庁の統計データを使え”
サイエンスに関してはこれが結論です。
『●●の危険性』など、アレルギーやヘルスケア、栄養に関して、一般人が知っておくべき情報は厚生労働省などのHPにリンクがあります。
省庁は大学や企業の研究実績を体系化した統計データを保管しています。
断片的なデータを1つのストーリーに直してくれるのが省庁!
信頼性だけで見れば大学の研究論文も同等ですが、まれに捏造なども起こりますね…
とくに新領域の研究(それこそSTAP細胞など)で起こりがち。
データが積み重なったジャンルでは、どこかで再現性試験が行われるので、間違ったデータは常に修正されます。
次は企業のデータ。
間違った情報は詐欺につながり、企業にとってもリスクです。
ただ、企業は都合の良いポイントだけをアピールしがち。
冒頭のWELQなど法人で運営するWEBサイトにも悪質な情報があります。
作り手のモラル、そして受け手のリテラシーが問われますね。
こう見ると、個人や団体の利益が絡むほど、情報の信頼性は低くなりやすいと言えます。
(国や大学の利権などは置いといて…)
見出しで個人サイトを >越えられない壁> で区切ったのもこのためです。
ただ、商品レビューや食レポなどは、しがらみのない個人の方が良いコンテンツを作れるジャンルです。
これらは情報よりも感情で人を引く要素が強いジャンルですね。
どんなジャンルでも、情報提供者が『中立』かどうかが、信頼できる情報のカギになります。
省庁のサイトでわかる医療、健康のデータまとめ
例えば【(病気、食品、臓器などの名前) 統計】などで検索すると、厚労省などのまとめが上位に表示されます。
例えば【ノロウイルス 統計】で検索すると、
このように、統計データに加えて、Q&Aや感染防止法などが表示されます。
2番目の”感染性胃腸炎(特にノロウイルス)について”というリンクは注目ページ。
食中毒防止について、わかりやすい1枚絵のリーフレットで解説されています。
【●● 統計】や【●● 省庁の名前】というキーワード検索はおすすめ。
ただ、これには『検索順位』という不確定要素があります。
以下に、省庁のサイト(厚労省、文科省、総務省、農水省、消費者庁など…)でわかる主な情報についてまとめました。
健康や医療のごく一部だけですが、ご参考までに。
他にもいろいろな食材、病気の情報がありますよ。
食品とヘルスケアに関する情報
項目 | コンテンツ例 |
アレルギー | アレルギー疾患対策、アレルギー疾患の現状等、ラテックスアレルギー注意喚起など |
食品添加物 | 食品添加物の表示について、食品添加物のはなし(一般向け)、食品添加物ってどれくらい食べてるの?など |
トランス脂肪酸 | 遺伝子組み換え食品の安全性について、Q&A(遺伝子組み換え食品に関する表示について)など |
遺伝子組み換え | トランス脂肪酸に関する情報、食品に含まれる総脂肪酸とトランス脂肪酸の含有量、トランス脂肪酸の表示に向けた取組など |
健康食品 | 健康食品の安全性に関する情報、健康食品による被害事例など |
他にも、放射線物質、BSE、輸入食品、残留農薬などのトピックがあります。
はちみつによる乳児の被害例など、ニュースになった事例がピックアップされることも。
アレルギーや添加物などは、個々の素材、食材についても様々な研究データがまとまっています。
個々の素材については、国ではなく都道府県などの自治体が被害例などをまとめていることが多いですね。
医療や疾病に関する情報
項目 | コンテンツ例 |
熱中症 | 熱中症予防サイト(暑さ指数実況と予測)、運動と熱中症、熱中症を防ごう!など |
インフルエンザ | 高齢者のインフルエンザについて、新型インフルエンザのガイドラインなど |
食中毒 | 家庭でできる食中毒予防の6つのポイント、冬は特に注意!ノロウイルスによる食中毒など |
育児 | 1歳未満の乳児には、蜂蜜を与えないでください!、育児・介護休業法について、離乳食のすすめ方など |
認知症 | 認知症のきほん、 家族や自分が認知症になったら?など |
他にも、各抗がん剤の安全性評価に関するデータや、先進医療、ジェネリック医薬品や治験など…
統計データから、病気になった時に必要なサービス、制度までまとめられています。
しかし、省庁サイトはサイトの階層が多く、情報へアクセスするのも大変です。
自分の欲しい情報までいくつもリンクを辿らなければいけません。
となると、お手軽なGoogle検索に逃げ、変なキュレーションサイト、アフィリエイトサイトを鵜呑みにして…というサイクルに陥りがち。
次章では『Googleで正しい情報源をダイレクトに探せる方法』についてまとめます。
応用編:Googleを用いた検索方法
ここでは、Googleの条件付き検索について簡単にまとめます。
方法だけなら知っている人も多いかもしれません。
ただし、エクセルと同じく、Googleもツールはあるのに活用できていない人ばかり。
『自分の欲しい情報がどんな媒体で、どういう形式で提供されているか?』
これを意識しながら、欲しい情報だけを検索していきましょう。
【pdf限定の検索(filetype:PDF)】企業、国の研究報告、商品データなど
"filetype"タグによって、ファイル形式を限定して検索できます。
例えば、ダイエットで検索するとこの通り。
通常のGoogle検索だと案の定、胡散臭いアフィサイトばかり上位表示されます。
これをPDFに限定して検索すると、ダイエットに関するマーケティング、研究、誇大広告に関するデータが表示されています。
国や企業、研究機関のデータはPDFで公開されていることが多いです。
文献の表示にはPDFが最適ですし、彼らは広告を貼る必要が無いですからね。
【filetype:ファイル形式】で検索します。
PDF以外にもdocやxls、ppt、zipなどで検索できます。
(あまり科学的なキーワードから離れると、通常のhtmlページが引っかかることもあります…)
アミノ酸 Filetype:doc
アミノ酸 Filetype:xls
アミノ酸 Filetype:ppt
で試しに検索してみるとわかりやすいですよ。
【政府機関限定の検索(site:go.jp)】医療や食品表示に関する資料など
"site"タグにより、特定のドメイン、URLに限定して検索できます。
大学および国が認めた研究、統計データを調べたいときは、前章で解説した省庁ページのドメインであるgo.jpを指定しましょう。
具体的には『日本国の政府機関、各省庁所轄研究所、特殊法人(特殊会社を除く)』のドメインになります。
医療情報に関しては、病院やガン研究センターなどのページに限定できます。
(コピペで検索→ site:go.jp ガン )
食品表示やアレルギー、離乳食など、生活や育児のために大切な情報も得られます。
【site:URLまたはドメイン 検索語句】という検索です。
siteタグ内にハイフンは不要です(site: URLだとダメ!)
URLの階層まで指定すれば細かいサイト内検索もできます。
【教育機関限定の検索(site:ac.jp)】大学の研究結果や学会資料など
調べたいキーワード、情報が絞れており、大学や学会資料などを参照したいときは、大学などの教育機関のドメインであるac.jpを指定しましょう。
具体的には、
「学校教育法および他の法律の規定による学校、大学共同利用機関、大学校、職業訓練校」および「学校法人、職業訓練法人」のうち、ED.JPドメインが対象としている「保育所、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、盲学校、聾学校、養護学校、専修学校および各種学校のうち主に18歳未満を対象とするもの」を除いた組織
に割り当てられるドメインとなります(長い!)。
おまけ:使えそうな『Google条件付き検索』まとめ
この章の最後に、情報収集に使えそうな条件付き検索の方法についてカンタンにまとめておきます。
条件 | 内容 | 検索方法 |
AND検索 | どちらの語句も含む | A B |
NOT検索 | Bの語句を除く | A -B |
OR検索 | どちらかの語句を含む | A OR B ORは大文字! |
Filetype検索 | 特定のファイル形式 | Filetype:拡張子 |
site検索 | 特定のドメイン | site:URL |
キャッシュ検索 | キャッシュを検索する | cache:URL |
フレーズ検索 | その語句を必ず含む | "語句" |
これらは検索バーの中で組み合わせてもOK!
知っていても活用していない人が多いのではないでしょうか?
コツがつかめると、情報収集の精度がどんどん上がりますよ!
応用編2:日本語OKな論文検索サイト
日常生活ではあまり必要でないかもしれませんが、論文検索サイトもいくつか紹介しておきます。
ここでは日本語の論文が閲覧できるサイトをまとめました。
Google Scholar
Google Scholarは世界で最もポピュラーな論文検索サイトです。
使う機会が多いのはメディア作成者かもしれません。
『◯◯という情報が書いてある論文を引用したい』という解答ありきな情報検索には使いやすいです。
本格的に論文を探したい場合は、Pubmed(生命科学や医学の場合)など、分野に適したサイトを使いましょう。英語ですが。
論文は有料が多いですが、たいてい要旨(Abstract)までは無料で読めます。
そして一般の方であれば、要旨だけで欲しい情報が得られることがほとんどです。
(細かい背景や実験条件などいりませんよね?)
CiNiiなどの文献データベース
CiNii(サイニィ)は国立情報学研究所が運営する文献のデータベースです。
日本語の文献データベースには、他にもJ-STAGEやJAIROなどが有名ですね。
ただ、いずれもキーワード検索の精度がイマイチ…
これらのデータベースで文献を探すよりも
『Googleで文献を検索してCiNii等が出てきた場合、ある程度の信頼性は担保されている文献である』
という位置付けで覚えておけばOKです。
おわりに
実は最近、ヘンテコなキュレーションサイトの記事を読んだ人から質問されることがめちゃくちゃ多いんですよね。
『このサイトに書いてること合ってるの!?』という質問も。苦笑
それだけ、正しい情報と間違った情報が氾濫している証拠でもあります。
受け身で降ってくる情報だけで生きていると、知らない間にイタい人になっているかも…
自分から『正しい情報』を手にいれるスキルを身につけないといけませんね。
Googleで適当に調べるだけ…
それでも良いですが、ちょっと工夫するだけで情報の精度はガンガン上がっていきますよ。
感度高く、情報収集していきましょう!