人類の「高さ」への欲望はとどまるところを知らない。世界で一番高い建物は、アラブ首長国連邦・ドバイにあるブルジュ・ハリファである。その高さは、828メートル。ちなみに、日本で一番高い東京スカイツリーは634メートルである。
しかし、いくら建築技術が発達したとしても、物理的に高さを伸ばしていくのは限界がある…。そこで考えられたのが、「宇宙から高層ビルを吊るす」という突拍子もないアイデア、「Analemma Tower」である。
凡人には到底思いつかない壮大な「Analemma Tower」計画は、全長32,000メートルの超高層ビルを、なんと宇宙から吊り下げようというものである。この高さは、現在世界一のブルジュ・ハリファの約38倍以上もの高さに相当する。
この高さの建造物を、従来の通り地上から建てるのは不可能だとしても、「無限」ともいえる宇宙から吊り下げれば、その制限はなくなるという理屈である。
「Analemma Tower」は、the Universal Orbital Support System(UOSS)と呼ばれるシステムにより実現するという。このシステムにより、地球の軌道上にある小惑星から高強度のケーブルを使い、超高層ビルを吊り下げ建設することができるとのこと。
大気中に吊り下げられていることで、世界中のどこでも建設が可能。今回は高層ビルを建設するにあたり、高層ビル建設のリーダー的存在であるドバイでの建設が想定されているとのことだ。
「Analemma Tower」は、惑星の軌道に乗って8の字を書くように北半球と南半球の間を毎日移動できるという。ニューヨーク上空で速度を遅くするなど、軌道のコントロールも構想されているのだ。
遥か上空50,000キロにある小惑星から地球まで超高層ビルを吊り下げるのだから、コストも桁違いと思いきや、コストはアメリカ・ニューヨークでの建設費に比べ、なんと5分の1だという。
「Analemma Tower」の内部はどのような部屋になっているかというと、上層部に3種類の礼拝堂、オフィスは下層部となっている。他にも寝室が用意されているという。部屋には空気圧や気温に合わせて自由に形を変える窓が採用されている。
エネルギーは最上部のソーラーパネルから確保される仕組みだ。ソーラーパネルは太陽光に常にさらされるため、効率よくエネルギーが生成されることが期待される。また水は雲や雨水から集められ、ろ過され、リサイクルされるとのことだ。
単なる絵空事かと思いきや、かなり綿密に練られた「Analemma Tower」計画。多くの人の興味は、どこの誰が考案したかということだろう。「Analemma Tower」の計画を練っているのは、火星の住居計画なども手掛けている「CLOUDS ARCHITECTURE OFFICE」社である。同社は建築家である曽野正之氏とオスタップ・ルダケヴィッチ氏によりデザイン・リサーチ分野の知見を統合する創造性にフォーカスした活動を目的とし、ニューヨークで設立されている。
また同社は、これまでに住宅・公共施設から宇宙建築まで様々な設計を手掛けてきた実績がある。他にもイッセイミヤケのショールームも手掛けるなど、活動範囲は多岐に渡る。そして現在彼らが目指しているのは、今までにない高さを誇る「Analemma Tower」なのだ。
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この「Analemma Tower」のプロジェクトは、もしかしたら突拍子もない絵空事に聞こえるかもしれない。しかし、「人類が月に降り立つ」ことや、「ロボットが接客する」ことが絵空事だった時代もまた、確かにあったはずだ。
人類のアイデアや情熱、そしてそこから生み出されるテクノロジーは、そんな絵空事を現実のものにするパワーを秘めている。「Analemma Tower」から見下ろす未来の都市は、どんな姿をしているだろうか?
Analemma Tower
Courtesy of CLOUDS ARCHITECTURE OFFICE