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2017年7月31日(月)
“仮想通貨バブル” 未来のお金の行方は?

“仮想通貨バブル” 未来のお金の行方は?

仮想通貨が高騰している。代表格・ビットコインの価格は年初の約3倍に。仮想通貨全体の時価総額も6倍以上にふくれあがり、10兆円を越えた。主婦なども投機目的で購入。億単位の利益を得る人が次々と現れる一方で、悪質な業者に購入を勧められるなど、トラブルも増えている。そして今、ビットコインは大きな転機を迎えている。8月1日に、分裂する可能性があるというのだ。果たして仮想通貨は“次世代のお金“になれるのか?

出演者

  • 本間善實さん (日本デジタルマネー協会代表理事)
  • 岩下直行さん (京都大学大学院教授)
  • 武田真一・鎌倉千秋 (キャスター)

“仮想通貨バブル” 未来のお金に何が?

インターネット上でやり取りされる新たなお金、仮想通貨。それを使って、巨額の利益を手にする人が続出。さらに、あす大きな動きがありそうです。

休日にバーベキューを楽しむ若者たち。焼いているのは100グラム3,000円の高級和牛です。
彼らは仮想通貨によって、ばく大な利益を得たといいます。

20代男性
「(残高は)3,400万円ですね。びっくり、自分でもびっくり。」

30代男性
「最初買ったときよりも、20倍程度に資産は膨らんでいます。」

実は今、ビットコインをはじめとする仮想通貨の価格が高騰し続けています。
一方、急激に値下がりすることも。

仮想通貨を持つ女性
「(朝)起きたらすごく下がっていたり、一喜一憂していると身が持たない。」

バブルという声さえ上がる仮想通貨。未来のお金はどうなるのか?その行方を探ります。

鎌倉:ネット上の新たなお金、「仮想通貨」とは何なのか。円やドルなどと違って、パソコンやスマホにデータとしてのみ存在します。紙幣や硬貨と違い、形のないお金なんです。
最大のメリットは、銀行などを介さずにインターネットを使って世界中に手軽に送金が出来ること。飲食店などでの支払いにも使えて、国内だけで数千店舗にまで広がっています。代表格のビットコインが有名ですが、今では1,000種類以上あると言われています。

こうした仮想通貨の価格が軒並み急上昇しています。いったい何が起きているのでしょうか。

“仮想通貨バブル” 大きな利益を得る人々

大手家電量販店です。先週からすべての店舗で、仮想通貨の1つ、ビットコインでの支払いができるようになりました。店側の端末に客のスマートフォンからビットコインを送り支払いを済ませます。

実は今、この仮想通貨を投資目的で購入し、利益を得る人たちが増えています。
その1人、資金を40倍に膨らませることに成功したという主婦です。これまで株などの取り引きの経験がない、投資の素人でした。将来のための貯蓄を考えていましたが、金融機関はどこも低金利。目を引いたのが、仮想通貨でした。早速、仮想通貨を扱う取引所を通じて、4万円分のビットコインを購入しました。

40代女性
「あれよあれよと(値上がり益が)どんどん増えていって、全然信じられなくて。」

さらにビットコインの利益でほかの仮想通貨も次々購入。それらも値上がりしました。こうして、4万円の元手が5か月で150万円に増えたのです。

40代女性
「こんな世界があるんだって思って。1年後がすごく楽しみなんです。」


「本当に、いつもだったら入れないようなレストランとかはおごってもらったりとかしてますので。この子のために何か蓄えとかもあってもらえれば。」

仮想通貨への投資は今、急激に広がっています。都内にある仮想通貨を扱う取引所。月ごとのビットコインの取引額は去年(2016年)の実に28倍に増えています。
年明け、11万円だった1ビットコイン当たりの価格は、4月以降に急上昇。5月には34万円を超えました。ほかの仮想通貨も含めると、いまや国内で100万人以上が取り引きしているとされています。

コインチェック 取締役 大塚雄介さん
「仮想通貨は昔、東京の20~30代のITに強い方が買うようなイメージだった。(今は)本当に地方の60代の方から老若男女、多くの方が使っているような市場に入ってきた。」

“仮想通貨バブル” 荒稼ぎする“億り人(おくりびと)”

こうした中、仮想通貨で億単位の利益を上げる億り人(おくりびと)と呼ばれる人たちまで現れています。
3人の億り人が取材に応じました。

「相当、利益出てますか?」

「僕は最近計算したら、ギリ1億円ぐらいでした。」

「評価額としては3億円弱ぐらい。」

「2億9,310万円。」

IT企業でシステムエンジニアとして働いていたという若者たち。一体、どのようにして億り人となったのか。彼らが着目するのは、生まれたばかりでまだ値が低い仮想通貨。それぞれの技術的な情報を読み解き、値上がりが見込めるものを購入していくといいます。
20代男性
「株で言うところの上場したときに成長戦略みたいな、ああいう感じのやつが、そのコインが上場するときに出るわけです。技術的な内容なんで非常に難しいんですよね。僕らは職業が技術者なんで、(内容が分かる)ということです。」

彼らは月に一度、仮想通貨の投資情報をネット上に配信。

「このコインが上がるって言い続けていて、ちょっとおもしろいかなって思って6BTC(ビットコイン)くらい買ったんですよね。」

「これは来るぞと。」

ネット上の反響は予想以上だといいます。

30代男性
「ゲームとしてすごい戦略の幅が出てきておもしろいっていうのが仮想通貨の魅力ですね。(利益は)ゲームのスコアぐらいにしか考えてないですね、わりと。」

“仮想通貨バブル” 過熱のウラで何が?

ゲスト岩下直行さん(京都大学大学院 教授)
ゲスト本間善實さん(日本デジタルマネー教会 代表理事)

 

鎌倉:仮想通貨はなぜここまで高騰しているんでしょうか。理由の1つは、取り引きを支えるシステムにあります。
円やドルなどは中央銀行が通貨の発行量をコントロールしています。しかし、主な仮想通貨には特定の管理者が存在せず、利用者どうしで運営するシステムです。中央銀行を介さず、国境を越えて自由にお金をやり取りしようというのが、そもそもの開発の目的だとされています。管理者がいない代わりに、発行量がプログラムで定められているため、価格が需要に左右されやすく、急激な高騰も起きやすいというわけなんです。

なぜここまで盛り上がっている?

岩下さん:まず1つ挙げられるのが、今年(2017年)の4月に仮想通貨法という法律が施行されたということ。これが、なんとなく仮想通貨に法的な根拠がついたように思われてしまったんですね。先ほどのVTRにもありましたけれども、彼らが取り引きしているものの多くは、実はビットコインではなくて、ビットコイン以外の仮想通貨なんですね。ビットコイン以外の仮想通貨と言うのは、従来あまり価値がないと思われていたんですけれども、そのビットコイン以外の仮想通貨で、また仮想通貨を買って、その仮想通貨でまた次の仮想通貨を買うというように、ぐるぐる回って。
(仮想通貨で仮想通貨を買うと?)
それによってその価値が非常に上がってきている。ビットコイン以外の仮想通貨は、半年ほど前までは1,000億ちょっとしかなかったのが、今は5兆円ぐらい、50倍に膨らんでいるというので、もう事実上、バブル状態といえるんじゃないでしょうか。
(バーチャルな数字として、億単位の数字が出てきている?)
おっしゃるとおりです。現実にキャッシュにしようと思ったら、そのとたんに暴落してしまうので。

このバブルともいえる状況、まだ続く?

本間さん:まさに値上がりが値上がりを生んでいる状況で、いつまでもとても続くようなものではなくて、根拠なき熱狂で、裏付けがない、技術的な裏付けのないものが上がっていますので、いつ、明日でも1か月後でも年末でも、バブルの崩壊リスクは高いです。

まだ、仮想通貨自体の裏付け、価値の裏付けがないものもあるということなんですね。仮想通貨への投資がこうして過熱する陰で、思わぬトラブルに巻き込まれる人も現れています。

“仮想通貨バブル” その陰でトラブル急増

2年前、仮想通貨の投資に関するセミナーに参加した男性です。その場で、ある仮想通貨の購入を勧められたといいます。

20代男性
「『放っておくだけで2倍3倍4倍になるよ』っていう話がウソにも聞こえなかった。『ビットコインがこうやって盛り上がってきたのか』みたいなのも、どんどん(心に)響いてきてしまって。」

男性が勧められたのは、まだ市場に出回る前の仮想通貨。値上がりを期待して120万円を振り込みました。しかし1年後、いよいよ市場に出回るとされた日に、発行元の会社から突然メールが届きました。

20代男性
「『オープンできない』というメールが当日になって来まして。ちょっとこれってどういうことなんだろう。」

取材班が発行元の会社の住所をたどったところ、オフィスはイギリスのロンドンにありました。実際に訪ねてみると、そこはさまざまな企業が利用できるレンタルオフィス。しかし…。

「ここの住所を使ってはいるが、実際このビルで業務していない。」

会社の登記情報を調べると、仮想通貨を市場に出す前に休眠状態になっていたことが分かりました。
男性が120万円支払った仮想通貨。2年たった今でも、買い物も換金もできません。

20代男性
「今はもう見てるだけでしかない状態で、日本円で返金してもらうこともできないです。仮想通貨が持っている負の面の性質についての説明はほとんどなかった。」

“仮想通貨バブル” その陰でトラブル急増

仮想通貨を巡るトラブル、国民生活センターへの相談が急増しているんです。昨年度は840件余りだったのが、今年度はすでに500件を超えています。なぜこれほど今、増えているのでしょうか?

本間さん:低金利で、世相もわりと暗くて夢がないような昨今に、この業界だけはこの1年で100倍とか、3年で1,000倍みたいな、夢がある話なので、飛びつきやすい状況になっているとは思います。
(リスクはきちんと理解されていると思う?)
それは全く理解されてなくて、本当に技術の裏付けのないものが、信用のない人たちによって売られているケースもあります。

鎌倉:仮想通貨の問題というのは、ほかにもあります。代表格のビットコインを巡って、明日(1日)にも新たな動きが起きそうなんです。
何が起きているのか。去年から今年にかけて取引量が一気に増えた結果、情報処理が追いつかず、支払いや送金に時間がかかるようになりました。これをどのように解決するのか。管理者がいない中、システムの改良を探る2つのグループから、それぞれ独自の改善策が提示され、意見の対立が起きています。その結果、何が起きてしまうのかというと…ビットコインが分裂する可能性が高くなっているんです。

人気のビットコインが分裂!? 広がる混乱

ビットコインの分裂が現実味を帯び始めた今月(7月)14日。ビットコインを扱う国内の取引所では、送金などに混乱が生じることを危惧していました。

「(利用者から)『資産を入金したのに無いじゃないか』と言われるのが一番困る。」
この取引所では混乱を避けるために、客からのビットコインの受け入れや引き出しを一時停止することを決めました。

ビットバンク 廣末紀之社長
「どちらか白黒つくまではビットコインをいじらないというのが基本的には安全策。取引所としては一番やらなくてはいけないのは、お客様の資産保護と取引所の安全性。」

影響は、ビットコインが使える店舗にも広がりました。こちらのすし店では、今月23日ビットコインでの支払いが一時的にできなくなったのです。

銀座沼津港 長浜賢店長
「ビットコインを使ってくださるお客様が減るのは残念。通常どおり安定してビットコインが使える状態が続いてほしい。」

これまで高値で推移していた価格も乱高下。

こちらの女性は、持っていた200万円分のビットコインが一時60万円も値下がりしたといいます。

ビットコインに投資している女性
「1時間の中で何万円も動いていたり、(朝)起きたらすごく下がっていたり。できるだけ考えない感じですかね。」

人気のビットコインが分裂!? 激しい主導権争い

リポート:山田裕規(経済部)

ビットコインの分裂騒動。背景にあるのは、取り引きを支えるシステムを巡る意見の対立です。
ビットコインのシステム開発に携わるカナダの会社の幹部です。この日、日本の取引所を訪れ、自分たちが考えるシステムの改善策をアピールしました。

システム開発会社 最高戦略責任者 サムソン・モウさん
「誰もがビットコインの分裂を心配しています。われわれの改善策を採用してほしいと思っています。」

取り引きの増加で処理が追いつかなくなったビットコイン。解決のために提案しているのが、一つ一つの取り引きデータを軽くし、小さくする案です。これによって、多くの取り引きを素早く処理できるようになり安全性も高まるといいます。

自分たちが考えるシステムへの支持を集め、ビットコイン市場で主導権を握りたいと考えています。

システム開発会社 最高戦略責任者 サムソン・モウさん
「利用者はわれわれの改善策を望んでいる。一時的に分裂するかもしれませんが、支持が集まればわれわれの案が残っていくでしょう。」

一方、全く異なる改善案を提案しているのが、中国の事業者です。内モンゴル自治区の広大な土地に立ち並ぶ巨大な施設。大量のコンピューターを使って世界中のビットコインの取り引きをチェックし、記録。取り引きの根幹を支えています。

この事業者の提案は、取り引きデータを小さくすることなく記録容量を拡大、一度に処理できる取り引きを増やそうというものです。今月、この事業者は日本の投資家らと面会。みずからの主張の優位性を訴えました。

中国の事業者 ジハン・ウーさん
「ビットコインはわれわれの主張どおり、なるべく早く記録容量を大きくするべきです。そうすれば価格はさらに上がり、ビットコインの未来は明るくなります。」

ビットコインを巡る主導権争い。管理者がいない中、明日、分裂しようとしています。

人気のビットコインが分裂!? これからどうなる

このビットコイン、明日8月1日の夜9時20分ごろに分裂する可能性が高いといわれています。混乱を懸念する声もありましたが、実際はどうなるのでしょうか?

本間さん:実際、容量拡大派による分岐はあるんですけれども、その影響というのは、当初思われていたよりもはるかに軽微で、あまりパニックになるような必要はないと思ってます。
(ビットコインを今持っている人は、2つのコインを得るということになる?)
「ビットコイン」と「ビットコインキャッシュ」を1つずつ持つっていうことになります。
(それは今後、どうなっていく?)
技術開発者たちがそれぞれ技術開発をしながら、市場で判断されていくと思います、競争して。
(利用者もそれにどう参加していくかということ?)
利便性とセキュリティーを求めて、その市場の人たちが、ユーザーがどういう反応をするかによって競争していくと思います。

鎌倉:明日起きるとされる分裂ですが、一方で、仮想通貨が広がっていくうえで、実は必要な過程だと考える専門家もいます。

早稲田大学大学院 岩村充教授
「(ビットコインは)自分で自分の動き方を決めて、しかも特定の管理者がいない、そういう構造の中で動いているわけです。でも時代が変わり、要請が変われば、スペック・特徴・設計は変わった方がいい。どうやって変わるのかというと、率直にいうとやっぱり普通、分裂して変わる。」

人気のビットコインが分裂!? 未来のお金の行方は

分裂もやむをえないと認めるような発言に意外な印象を受けるが、本当に大丈夫なのか?

岩下さん:たぶん今、われわれは未来のお金を造る実験段階にあるんだと思うんですね。今、最も成功しているビットコインですら、全然完璧なものじゃないわけですよ。そう考えると、これからもっともっと仮想通貨の技術を改良していって、より使いやすいものにしていかなくちゃいけない。そのときに、例えば、生物が子孫を残しながら進化していくように、分裂によって進化していくことが期待できるんじゃないかというふうに、岩村先生はおっしゃりたかったと思うんですね。

仮想通貨のもたらす未来、どうなっていく?

岩下さん:仮想通貨によって大きく変わったのは、世界がインターネットでつながっていて、それで一体になっていると。それの中で、お金を使うことができると。そうすると、従来、国境によって制限されていた競争が取り払われてしまうので、そうなると例えば中央銀行であるとか、大手の銀行であるとか、そういうところも一生懸命、研究をしながら競争に打ち勝たなければいけないという、そういう局面になってきてるんだと思いますね。
(身近な暮らしも変わってくる?)
例えば、世界中でさまざまな取り引きが行われるときに、これまではあまり取り引きの間での安定化みたいなものが図られなかったのが、ものの値段の差ができないようになるとか、そういうことの効果が非常にスムーズになって、市場の機能がより働きやすくなるということが期待できるのではないでしょうか。

仮想通貨とは当面、どうつきあっていけばよい?

本間さん:非常に難しい商品で、ハイリスク・ハイリターンなものなんですけれども、よく分かったうえでつきあってほしいですね。投資するんであれば、よく分かった、調べて投資するべきですし、ただ一方で、ビットコインやブロックチェーンは、各国の中央銀行とメガバンクとベンチャービジネスがそれぞれ技術開発にしのぎを削っている成長分野でもありますので、成長分野として積極的に開発にコミットするというのもありだと思います。

仮想通貨によって、お金の未来、未来の社会は変わると思う?

本間さん:間違いなくこれは重要な発明でして、非常にわれわれの未来にとっては重要なものであるというのは確信してます。

仮想通貨、未来のお金の在り方を根本から変える可能性を秘めてはいるんですが、価格の急変動や分裂といった、今起きている現象は、まだ試行錯誤の段階にあるといえそうです。この先、私たちの暮らしや社会、どう変えていくのか、注目して見ていきたいと思います。