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「日陰者」のイベントだった総火演

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記事タイトル、内容を含めて扇情的な書き方ですが、記事では一般公開はされているものの、特に宣伝を行っていないという書き方をしています。また、観覧者は「シンパ」であり、「身内」と表現されており、とても好意的な記事ではありません。さすがにこういう書き方をされるような状況なら、表立った公開を避けるのも致し方無いのかもしれません。

現代の感覚からすれば、批判対象がなんであれ、新聞がこんな調子で記事を書いたら炎上しかねないし、ましてや国民である観覧者を「シンパ」と書くのはどう考えても問題ですが、当時の感覚ではOKだったようで、わりとぞっとする話です。

しかし、この頃は一般にも演習が開放されるようになったとはいえ、まだ一般公募による募集ではなく、総火演を見るには自衛隊になんらかのツテが無いと難しかったのが実情のようです。一般公募による公開が始まるのは1987年のことで、1966年に一般に開かれてから実に20年以上が経過しています。つまり、国民に広く開かれる総火演になったのは、この30年の話のようです。

加熱するチケット争奪戦

今年の総火演一般公募は、応募総数150,361通、当選倍率は約29倍と公表されています。2016年の約28倍より若干上がっており、プラチナチケット化は以前続いているようです。1987年の最初の公募については、当時の朝日新聞の記事によれば、公募3200人に対して約23000人が応募したようで、当選倍率は約7倍となります。今とは公募数が違うので、倍率だけの比較は難しいのですが、純粋に応募総数を見ると現在と6倍以上の開きがあります。それだけ、認知度が高いイベントになったとも言えるでしょう。

また、一般公募が行われる前より、日本駐在の各国武官に対しても演習は公開されていました。2016年の総火演でも、各国武官用のスペースが設けられていましたが、ロシアの座席が群を抜いて多く、何故かと訝しんでいたら、ロシアの武官が家族と思われる女性と子供達を連れて観覧していました。総火演では最新装備が公開される事もあるため、各国武官への情報開示の場にもなっていますが、そんな場に家族連れで武官が現れるのは、なごやかな光景でした。

各国武官用席にそれぞれの国旗マークを置く自衛官(写真は2016年)
各国武官用席にそれぞれの国旗マークを置く自衛官(写真は2016年)

このように、総火演は自衛隊部内の教育目的として始まったものですが、国内外に向けた自衛隊の情報発信の場にもなるなど変化を遂げています。かつては防衛庁長官が列席するイベントではありませんでしたが、近年は最終日に防衛大臣も列席するようになっている。

総火演は「日陰者」のイベントから脱し、いまや自衛隊でも人気のあるものになりましたが、常態化した高倍率などの問題も抱えるようになっています。また、会場はインフラ貧弱な演習場内にあるため、渋滞や帰路の混雑といった交通の不便さのような、改善の難しい様々な問題を抱えつつの開催が行われるでしょう。日陰者には日陰者の、人気者には人気者の悩みがあると言うことかもしれません。

※Yahoo!ニュースからの転載

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