あなたはどんな葬儀を選ぶ?

あなたはどんな葬儀を選ぶ?
あなたは、どんな葬儀を選びますか?東京ビッグサイトで23日から「エンディング産業展」が開催されています。“エンディング”つまり人生の終わりに必要とされる葬式や供養などに関連した商品やサービスを集めた見本市です。“自分らしい葬儀や供養を探そう”と多くの来場者でにぎわう見本市を取材しました。(ネットワーク報道部記者 飯田暁子)
会場には、出展する企業が設けたブースがずらりと並んでいました。今回で3回目となる「エンディング産業展」には320社もが出展。去年より40社以上も増えたそうです。
会場には、出展する企業が設けたブースがずらりと並んでいました。今回で3回目となる「エンディング産業展」には320社もが出展。去年より40社以上も増えたそうです。

最先端!これが新しいサービスだ

なかでも、注目を集めていたのが、IT技術を活用したものでした。実演をしていたブースで話を聞いてみると、QRコードを活用した新商品だといいます。
小さなプレートについたQRコードをスマートフォンで読み取ると、亡くなった人の思い出の写真や経歴などが表示される仕掛けです。プレートを墓石などに貼り付けておけば、墓参りした人が、亡くなった人との思い出をその場で共有できるというものです。
この商品を紹介していた企業の担当者は「例えばお墓参りの時に『おばあちゃんはこんな人だったんだよ』と写真を見ながらお孫さんに思い出を伝えることで、亡くなった人のことをより身近に感じながらしのぶことができます。1か月前に販売を始め、すでに200件以上の注文がありました」と話していました。

なぜ活況?エンディング産業

取材中に入口を通りかかると、そこには、入場待ちの列もできていました。
背景にあるのが終活への関心の高まりです。

自分らしいお葬式がしたい自分らしく生きた証しを残したいなどのニーズが多様化した結果、さまざまな商品やサービスが生み出されているのです。

さらに、この業界は“隠れた成長産業”とも言われています。
高齢化が進む日本では、去年の死亡数はおよそ130万人。10年前と比べておよそ2割増、20年前とではおよそ5割増です。
さらに、10年後の2027年には155万7000人、20年後の2037年には167万人以上と推計され、需要の拡大が見込まれているのです(国立社会保障・人口問題研究所の推計)。

異業種からも続々参入

“成長産業”の『終活業界』には、異業種からの参入も相次いでいます。
会場内で、とりわけ人だかりができていたブースがありました。
来場者の視線の先にあったのは、ちょっと風変わりなロボット!
お坊さんさながらに袈裟(けさ)を着て、木魚をたたきながらお経を唱えていたのです。「ロボット導師」と名付けられたこのロボットは、本業がプラスティック加工業の神奈川県のメーカーが出展したものでした。菩提(ぼだい)寺がないという人や、住職1人しかいないという寺の留守番役として提案していきたいと言います。
「製造業の限界を感じ、新しい分野に参入しようと思った」とこのメーカーの創業者の稲村道雄さんは語ります。
若手社員を中心に、稲村さんに次々とアイデアを提案してくるそうです。その一つが、葬儀をインターネットで生中継するサービスです。体が不自由だったり遠方にいたりして葬儀に参列できない人のニーズがあるのではと思いついたそうです。

稲村さんは「私は昔からの伝統やしきたりにこだわる部分もあり、若い社員には『もっとまじめに考えろ』と言うのだが、彼らは極めて真剣にロボット導師などのアイデアを提案してくる。社員の自由な発想を尊重し、異業種参入ならではの一般の人の目線に立った新しいサービスを展開していきたい」と意気込んでいました。

道路の舗装やビルの修繕を本業とする建設業者が売り込んでいた“墓のクリーニングや汚れにくくするコーティング”。

畳を縫う機械メーカーは、「死ぬときは畳の上でという声にこたえるとともに、畳の新たな販路を拡大したい」と“棺に敷く畳”を提案していました。

どう立ち向かう?老舗企業

供養や葬儀の新しいサービスで活気あふれる会場。遺灰を専用ロケットで宇宙に送るというアイデアや全身の骨を素材にダイヤモンドをつくるというものなど従来型の墓は不要であることを売りにした商品やサービスもありました。

こうした中、石材業界はどうしているのだろう…。

会場では興味深いセミナーが開かれていました。タイトルは「墓石の売れない時代にあなたは何を売りますか?」。このセミナーで講師を務めた日本石材産業協会の川上明広さんに話しを聞いてみると、墓が売れないと感じ始めたのは15年ほど前、2000年ごろからだそうです。川上さんは「亡くなった人をしのんだり死と向き合う場所だったお墓が、遺骨をしまう場所にすぎなくなってしまっている。遺骨を片づけるだけだったら散骨などで十分で、お墓を建てる必要はない。われわれは『墓』を売っているつもりだったが、お客さんにとってはただの『石』だった」と言います。

どうすれば、お墓が売れると考えているのでしょうか?
川上さんは「石を売るのではなく心の満足を提供しなければならない。墓の相談だけでなく葬儀全般に関して幅広く相談を受けたり、終活に関するアドバイスをしたりするなど地域に必要とされる存在になり、お墓が持つ意味を伝える努力をする必要がある」と話していました。

どうなる?これからのエンディング産業

年々、規模を拡大している「エンディング産業展」。実行委員会の佐々木剛事務局長は今後の見通しについて「葬儀や墓にかける金額は減ってきているが、こだわりたい部分にはお金をかけるという人も多い。葬儀や供養も個性を求める時代で自分らしい形を選ぶ時代になっている。やり方次第では、ビジネスチャンスはあり、これからも、成長する分野だと思う」と話していました。

また、葬祭ビジネスを研究している日本葬送文化学会の福田充副会長も、「葬儀や供養が地域や家のしきたりに縛られなくなくなってきている。内容や価格も業者任せだったが、インターネットを使えば簡単に比較することができ、むだなお金はかけたくないと考える人も増えてきている。エンディング産業に関わる事業者は、亡くなる人が増えるからこれからも成長するだろうと安易に考えずに、多様なニーズに向き合って応えていく努力をしなければならない」と話していました。
私も見本市の会場でひつぎの中に入らせてもらいながら考えをめぐらせてみました。
次々と新しい商品やサービスが生まれてきそうなエンディング産業。自分の死後はどうしたいのか、大切な人をどうしのぶのか、考えてみるのもいいかもしれません。

「エンディング産業展」は東京ビッグサイトで8月25日までの開催です。
あなたはどんな葬儀を選ぶ?

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あなたは、どんな葬儀を選びますか?東京ビッグサイトで23日から「エンディング産業展」が開催されています。“エンディング”つまり人生の終わりに必要とされる葬式や供養などに関連した商品やサービスを集めた見本市です。“自分らしい葬儀や供養を探そう”と多くの来場者でにぎわう見本市を取材しました。(ネットワーク報道部記者 飯田暁子)

会場には、出展する企業が設けたブースがずらりと並んでいました。今回で3回目となる「エンディング産業展」には320社もが出展。去年より40社以上も増えたそうです。

最先端!これが新しいサービスだ

なかでも、注目を集めていたのが、IT技術を活用したものでした。実演をしていたブースで話を聞いてみると、QRコードを活用した新商品だといいます。
小さなプレートについたQRコードをスマートフォンで読み取ると、亡くなった人の思い出の写真や経歴などが表示される仕掛けです。プレートを墓石などに貼り付けておけば、墓参りした人が、亡くなった人との思い出をその場で共有できるというものです。
この商品を紹介していた企業の担当者は「例えばお墓参りの時に『おばあちゃんはこんな人だったんだよ』と写真を見ながらお孫さんに思い出を伝えることで、亡くなった人のことをより身近に感じながらしのぶことができます。1か月前に販売を始め、すでに200件以上の注文がありました」と話していました。

なぜ活況?エンディング産業

取材中に入口を通りかかると、そこには、入場待ちの列もできていました。
背景にあるのが終活への関心の高まりです。

自分らしいお葬式がしたい自分らしく生きた証しを残したいなどのニーズが多様化した結果、さまざまな商品やサービスが生み出されているのです。

さらに、この業界は“隠れた成長産業”とも言われています。
高齢化が進む日本では、去年の死亡数はおよそ130万人。10年前と比べておよそ2割増、20年前とではおよそ5割増です。
さらに、10年後の2027年には155万7000人、20年後の2037年には167万人以上と推計され、需要の拡大が見込まれているのです(国立社会保障・人口問題研究所の推計)。

異業種からも続々参入

“成長産業”の『終活業界』には、異業種からの参入も相次いでいます。
会場内で、とりわけ人だかりができていたブースがありました。
来場者の視線の先にあったのは、ちょっと風変わりなロボット!
お坊さんさながらに袈裟(けさ)を着て、木魚をたたきながらお経を唱えていたのです。「ロボット導師」と名付けられたこのロボットは、本業がプラスティック加工業の神奈川県のメーカーが出展したものでした。菩提(ぼだい)寺がないという人や、住職1人しかいないという寺の留守番役として提案していきたいと言います。
「製造業の限界を感じ、新しい分野に参入しようと思った」とこのメーカーの創業者の稲村道雄さんは語ります。
若手社員を中心に、稲村さんに次々とアイデアを提案してくるそうです。その一つが、葬儀をインターネットで生中継するサービスです。体が不自由だったり遠方にいたりして葬儀に参列できない人のニーズがあるのではと思いついたそうです。

稲村さんは「私は昔からの伝統やしきたりにこだわる部分もあり、若い社員には『もっとまじめに考えろ』と言うのだが、彼らは極めて真剣にロボット導師などのアイデアを提案してくる。社員の自由な発想を尊重し、異業種参入ならではの一般の人の目線に立った新しいサービスを展開していきたい」と意気込んでいました。

道路の舗装やビルの修繕を本業とする建設業者が売り込んでいた“墓のクリーニングや汚れにくくするコーティング”。

畳を縫う機械メーカーは、「死ぬときは畳の上でという声にこたえるとともに、畳の新たな販路を拡大したい」と“棺に敷く畳”を提案していました。

どう立ち向かう?老舗企業

どう立ち向かう?老舗企業
供養や葬儀の新しいサービスで活気あふれる会場。遺灰を専用ロケットで宇宙に送るというアイデアや全身の骨を素材にダイヤモンドをつくるというものなど従来型の墓は不要であることを売りにした商品やサービスもありました。

こうした中、石材業界はどうしているのだろう…。

会場では興味深いセミナーが開かれていました。タイトルは「墓石の売れない時代にあなたは何を売りますか?」。このセミナーで講師を務めた日本石材産業協会の川上明広さんに話しを聞いてみると、墓が売れないと感じ始めたのは15年ほど前、2000年ごろからだそうです。川上さんは「亡くなった人をしのんだり死と向き合う場所だったお墓が、遺骨をしまう場所にすぎなくなってしまっている。遺骨を片づけるだけだったら散骨などで十分で、お墓を建てる必要はない。われわれは『墓』を売っているつもりだったが、お客さんにとってはただの『石』だった」と言います。

どうすれば、お墓が売れると考えているのでしょうか?
川上さんは「石を売るのではなく心の満足を提供しなければならない。墓の相談だけでなく葬儀全般に関して幅広く相談を受けたり、終活に関するアドバイスをしたりするなど地域に必要とされる存在になり、お墓が持つ意味を伝える努力をする必要がある」と話していました。

どうなる?これからのエンディング産業

年々、規模を拡大している「エンディング産業展」。実行委員会の佐々木剛事務局長は今後の見通しについて「葬儀や墓にかける金額は減ってきているが、こだわりたい部分にはお金をかけるという人も多い。葬儀や供養も個性を求める時代で自分らしい形を選ぶ時代になっている。やり方次第では、ビジネスチャンスはあり、これからも、成長する分野だと思う」と話していました。

また、葬祭ビジネスを研究している日本葬送文化学会の福田充副会長も、「葬儀や供養が地域や家のしきたりに縛られなくなくなってきている。内容や価格も業者任せだったが、インターネットを使えば簡単に比較することができ、むだなお金はかけたくないと考える人も増えてきている。エンディング産業に関わる事業者は、亡くなる人が増えるからこれからも成長するだろうと安易に考えずに、多様なニーズに向き合って応えていく努力をしなければならない」と話していました。
私も見本市の会場でひつぎの中に入らせてもらいながら考えをめぐらせてみました。
次々と新しい商品やサービスが生まれてきそうなエンディング産業。自分の死後はどうしたいのか、大切な人をどうしのぶのか、考えてみるのもいいかもしれません。

「エンディング産業展」は東京ビッグサイトで8月25日までの開催です。