ヒアリ 緩効剤が有効 8週かけじわじわ 巣ごと“一網打尽” 新剤登録 速やかに
2017年08月25日
アルゼンチンアリについての対策に続き、ヒアリ対策で陣頭指揮を執る五箇室長(茨城県つくば市で)
6月9日に兵庫県で最初に発見されて以来、ヒアリが港湾地区を中心に国内13カ所で確認されている。凶暴で強毒を持つヒアリが侵入を繰り返す可能性は高い。定着を防ぐには「敵」の弱みを突いて一網打尽にすることが大切、と専門家は指摘する。ヒアリ侵入を防いだニュージーランド(NZ)の対策も参考に、定着阻止に向け日本独自の戦略を検討している。
環境省の現時点のヒアリ対策は“初期消火”が基本だ。「物流拠点を中心に調査し、発見したら速効性の殺虫剤で駆除して拡大を防ぐ」(同省外来生物対策室)。しかし、今年は貿易相手国の中国などでヒアリが猛威を振るっており、侵入が繰り返される可能性が高い。初期消火の網をくぐり抜け周辺に定着してしまった場合に備え、日本では独自の戦略を練っている。
ヒアリ対策の指揮を執る、国立環境研究所生物・生態系環境研究センターの五箇公一室長は、定着した場合「速効性の殺虫剤だけでは限界がある」と指摘する。移動や世代交代など生態に合わせた「駆除の戦略づくりが大切だ」と指摘する。
ヒアリの防除マニュアルを作成中の五箇室長が検討しているのが、緩効性成分を使った戦略だ。
速効性の殺虫剤は成虫への効き目は鋭いが、ヒアリが異常を察知して女王アリごと逃げ出すことがある。防除によって定着地域を拡大させてしまう危険性がある。
農薬メーカーの住友化学は7月下旬、「海外で成果を持つヒアリ対策剤の日本導入」を発表した。同社グループが米国やオーストラリア、NZなどで販売するピリプロキシフェンを有効成分とする「エスティーム」だ。
ピリプロキシフェンは幼虫の代謝活動を邪魔し、衰弱死させる効果がある。同社によると、海外ではヒアリ駆除に8週間かかる。じわじわとした効果にヒアリが異常を感じず、巣ごと一網打尽にできるというわけだ。
ただし、課題はある。同社は今の時点で「エスティーム」の国内販売に向けた作業はしていない。ヒアリ研究者らに試験用のサンプルを提供しただけ。本格的に利用するには農薬取締法の登録が必要だ。国内のヒアリ定着が確認されなければ需要がなく、登録作業にかかる時間や費用が無駄になる可能性がある。
「引き合いがあれば販売に向けたステップに進みたい」と同社は説明する。ヒアリ対策の遅れにつながらないような配慮が必要だ。
――ヒアリの現状をどう見ますか。
侵入外来生物として、一生懸命日本で増えようとしている段階だ。現時点で定着しているかどうかは断言できないが、これまでの調査ではまだ、定着していないと思う。仮に一部が定着していたとしても初期の段階。外来種が侵入に成功して定着し、それが人間の目に触れるまでには10年かかる。今発見できないからといって安心はできない。
――今年、侵入が相次いだのはなぜですか。
ヒアリの発生は年によって波がある。今年が中国南部などで当たり年だった可能性があり、「前から大量に侵入していた」という見方は違うと思う。長い目で見れば、グローバル化が侵入外来生物を増やしている。物や人がものすごい勢いで移動する。最大の貿易相手国である中国でヒアリが定着した以上、物流に乗って日本上陸を警戒していた。
――日本で定着する可能性はありますか。
いったん定着する可能性はあるが、徹底的に駆除をして撲滅する。日本でヒアリとの共存はあり得ない。モグラたたきを何回してでも駆除する。温暖化で日本がヒートアイランドになり、ヒアリがすみやすくなったのは事実。だが、中国南部や台湾などに比べれば冬の寒さがあり、彼らには厳しい。ヒアリを迎え撃つ日本在来アリは寒さに強いので頑張ってもらう。
とにかく早期発見が重要で、侵入外来生物に対する国民全体の関心や警戒心を引き上げていくことも必要だろう。(山田優・特別編集委員)
環境省の現時点のヒアリ対策は“初期消火”が基本だ。「物流拠点を中心に調査し、発見したら速効性の殺虫剤で駆除して拡大を防ぐ」(同省外来生物対策室)。しかし、今年は貿易相手国の中国などでヒアリが猛威を振るっており、侵入が繰り返される可能性が高い。初期消火の網をくぐり抜け周辺に定着してしまった場合に備え、日本では独自の戦略を練っている。
ヒアリ対策の指揮を執る、国立環境研究所生物・生態系環境研究センターの五箇公一室長は、定着した場合「速効性の殺虫剤だけでは限界がある」と指摘する。移動や世代交代など生態に合わせた「駆除の戦略づくりが大切だ」と指摘する。
ヒアリの防除マニュアルを作成中の五箇室長が検討しているのが、緩効性成分を使った戦略だ。
速効性の殺虫剤は成虫への効き目は鋭いが、ヒアリが異常を察知して女王アリごと逃げ出すことがある。防除によって定着地域を拡大させてしまう危険性がある。
農薬メーカーの住友化学は7月下旬、「海外で成果を持つヒアリ対策剤の日本導入」を発表した。同社グループが米国やオーストラリア、NZなどで販売するピリプロキシフェンを有効成分とする「エスティーム」だ。
ピリプロキシフェンは幼虫の代謝活動を邪魔し、衰弱死させる効果がある。同社によると、海外ではヒアリ駆除に8週間かかる。じわじわとした効果にヒアリが異常を感じず、巣ごと一網打尽にできるというわけだ。
ただし、課題はある。同社は今の時点で「エスティーム」の国内販売に向けた作業はしていない。ヒアリ研究者らに試験用のサンプルを提供しただけ。本格的に利用するには農薬取締法の登録が必要だ。国内のヒアリ定着が確認されなければ需要がなく、登録作業にかかる時間や費用が無駄になる可能性がある。
「引き合いがあれば販売に向けたステップに進みたい」と同社は説明する。ヒアリ対策の遅れにつながらないような配慮が必要だ。
定着阻止 国民が関心を 国環研 五箇 公一氏
――ヒアリの現状をどう見ますか。
侵入外来生物として、一生懸命日本で増えようとしている段階だ。現時点で定着しているかどうかは断言できないが、これまでの調査ではまだ、定着していないと思う。仮に一部が定着していたとしても初期の段階。外来種が侵入に成功して定着し、それが人間の目に触れるまでには10年かかる。今発見できないからといって安心はできない。
――今年、侵入が相次いだのはなぜですか。
ヒアリの発生は年によって波がある。今年が中国南部などで当たり年だった可能性があり、「前から大量に侵入していた」という見方は違うと思う。長い目で見れば、グローバル化が侵入外来生物を増やしている。物や人がものすごい勢いで移動する。最大の貿易相手国である中国でヒアリが定着した以上、物流に乗って日本上陸を警戒していた。
――日本で定着する可能性はありますか。
いったん定着する可能性はあるが、徹底的に駆除をして撲滅する。日本でヒアリとの共存はあり得ない。モグラたたきを何回してでも駆除する。温暖化で日本がヒートアイランドになり、ヒアリがすみやすくなったのは事実。だが、中国南部や台湾などに比べれば冬の寒さがあり、彼らには厳しい。ヒアリを迎え撃つ日本在来アリは寒さに強いので頑張ってもらう。
とにかく早期発見が重要で、侵入外来生物に対する国民全体の関心や警戒心を引き上げていくことも必要だろう。(山田優・特別編集委員)
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城みちるさん (歌手・タレント) 箸持つだけの父との約束 応援心に今後も続ける
実は今年2月に顔面まひになりました。少し疲れがたまっていたのでしょうね。そのせいで、食べ物の味が甘味以外、一切しなくなってしまいました。仕事は休んでいたので、家では食べることしか楽しみがありません。おなかはすきますが、味がしない。まひの回復は案外早く、2カ月ぐらいで仕事には復帰しましたが、味覚だけは回復が少し遅れました。テレビのレギュラー番組の料理のコーナーは大変でしたね。今ではすっかり良くなりましたが、改めて食事のありがたさを感じました。
僕の故郷は、広島県呉市の倉橋島で、今は音戸大橋という橋で本土とつながっています。イワシがたくさんとれるところで、母が小イワシをよく料理してくれました。親父は頑固者で、「わしゃ、魚は嫌いじゃ。肉出せ」と言いましたが、私たち子どもには母はバランスを考えて、魚料理を作ってくれました。
バランスのいい食事は大事ですね。年をとってきたら、お肉を食べるのが大事だと言われることが多いです。必ず野菜も一緒にとりながら、日々健康に気をつけています。特別なことはほとんどしませんが、人に見られている仕事をしていると、自然と注意をする習慣ができているように思います。
今は広島を拠点に仕事をしています。テレビやイベントの仕事の他に、老人ホームなどの施設への慰問を続けています。ボランティアで、もう11年になります。当初の目標は500カ所でしたが、今ではもう全国1100カ所を訪問しました。
この活動を始めたのは、父の病がきっかけです。父は僕が歌手になるのに反対していて、芸能界を3年で引退したのも、父親との約束でした。父は僕が歌を歌うことも好きではありませんでした。父が余命半年というがん宣告を受けた時に、僕でも人を喜ばせることができるんだよと、いいところを見せたい気持ちがあって、「老人ホームを500カ所回るから、親父、それを最後まで見届けろよ」と、活動をスタートしました。父にも頑張ってほしかったのです。
僕が老人ホームを回るようになったら、父はすごく喜んでくれて、応援してくれるようになりました。施設から頂いた手紙や写真を見せると、「お前、ええことやっとるのお」「お前の歌でこんなにみんな喜んでくれるんか」と、言ってくれるようになりました。父が存命の間に訪問できたのは、300カ所の少し手前。その後500カ所を達成しました。この活動は僕にとってもライフワークになっていたので、体力が続く限り、地道に続けていこうと思いました。それで気がつけば、1100カ所です。
父のことはすごく尊敬していました。頑固なだけでなく、周囲には人がいっぱいいて、家にはいつも誰かが相談事に来たりしていました。ユーモアがあって、楽しい人。そして「男の子はお前だけじゃけん、頼むから家を守ってくれ」というのが口癖でした。そんな父は、魚は母が身をほぐしてやらないと食べないのです。おしょうゆをかけたりするのも母です。父は箸を持って食べるだけ。まるでお殿様です。母がいない時はどうやってご飯を食べていたのだろうと思います。日々の食事の時には、決まった時間に席に座って待っていて、「わしより先に箸をつけるな」と。今では考えられないでしょうけれど、僕たち家族にとっては、ごく普通の家族の風景でした。(聞き手・写真 ジャーナリスト 古谷千絵)
<プロフィル> じょう・みちる
1973年に「スター誕生!」第7回チャンピオンとなり、「イルカにのった少年」で歌手デビュー。安定した歌唱力と童顔・細身の外見で人気を博すが、父との約束を守り、3年で芸能界を引退。現在は「テレビ派」(広島テレビ)のレギュラーコメンテーターなどで活躍中。11月18日に還暦を迎える。
2017年08月20日
[にぎわいの地] 世代交代 岡山県総社市(上) 日本一の桃 販路開拓 20代が役員 県外へ挑戦
精鋭8戸11ヘクタール高単価を維持
平均年齢39歳の少数精鋭プロ集団が、桃産業で異彩を放つ。
岡山県JA岡山西の「総社もも生産組合」。大阪、東京、海外へと販路を切り開き、全国トップレベルの高単価を毎年維持。農家自らバイヤーの声を毎日直接聞いて、出荷に反映させる。雑木林に覆われていた耕作放棄地を開墾し、園地へとよみがえらせた。農業のイメージを変えた組合には、県内外から次の若い就農希望者が相次ぐ。
若い農家と従業員が目を光らせる選果場。傷みはないか。硬度、熟度は問題ないか――。従業員に指示をする秋山陽太郎さん(37)が胸を張った。「日本一の品質と言い切れる。選果の基準は緩めない。ぶれないから、評価がついてくる」
中山間地域と市街地が混在し、まとまった平場の園地の確保が難しい、総社市。組合員8戸、11ヘクタール。産地規模は小さくても、存在感は圧倒的だ。平均単価は5年連続で1キロ1000円を超す。東京の高級果実店では1玉6000円を超す価格で売られることもある。市場関係者から「引く手あまた」と、その実力に一目置かれる。
26歳で副組合長、31歳で組合長に就任した秋山さん。まだ20代だった副組合長の吉富達也さん(34)らと一緒に大阪、東京への販路開拓に乗り出す。父親たちの世代までは県内だけに出荷していた。
毎日必ずバイヤーに電話し、直接評価を聞く。「言い訳も妥協も一切してこなかった。常に消費者がどう思うか、販売までを考えて作っている」と秋山さん。時間があれば市場に出向き、仲卸業者ら全員に声を掛け、反応を確かめる。譲れない点は納得するまで説明し、箱詰めから量、糖度まで改善できる点は全て聞く。これを出荷シーズン、繰り返す。
新しい発想生かす親たち
1973年に誕生した組合。剪定(せんてい)をできるだけしない「岡山自然流」と呼ばれる独特の栽培技術が特徴だ。県内を重視した販売に限界を感じていた10年前、新たな販路開拓の必要性を提起する20、30代に役員をバトンタッチした。
「自分たちにない感覚でどんどん挑戦していく若手農家に、任せた方がいいと思った」。もう一人の副組合長の村木一裕さん(59)があっさりと言う。
新しい発想を排除せず、生かす姿勢を持っていた親たち。世代交代に異論はなかった。
定期的に開く栽培研究会も、組合の個性が光る。文字通りの「研究会」。組合に指導者はいない。吉富さんは「自分だったらこうすると全員が意見を言って、最終的に結果を出す。徹底してみんなで話し合い、技術を合わせる。だから講習会ではなく、研究会です」と明かす。
つながり強み地域を元気に
組合には年収1000万円を超す農家がごろごろいる。裏切らない品質に根強いファンが全国にいる。
手数料を省き、JAや市場を通さず直接販売する選択肢もある。だが、JA出荷を貫く。「つながりをたくさん持っていることは強み。JAや市場を通しているから、今がある。目先の利益にとらわれたくない」と吉富さん。これまでに1000人以上の販売関係者と会ってきた。応援団を増やすことで、広がっていく農業のやりがいや楽しみを実感する。
一人勝ちの所得向上ではない。「地域を桃で元気にすること」(秋山さん)。組合が目指す道は、はっきりしている。
キャンペーン「若者力」への感想、ご意見をお寄せ下さい。ファクス03(3257)7221。メールアドレスはwakamonoryoku@agrinews.co.jp。フェイスブック「日本農業新聞若者力」も開設中。
2017年08月25日
アグリフードEXPO開幕 JAなど700社超が出展 「輸出」「付加価値」アピール
農作物や国産加工品の展示商談会「アグリフードEXPO東京2017」が23日、東京都江東区の東京ビッグサイトで開幕した。出展したJAや企業は700を超える。輸出を視野に入れた売り込みや、付加価値を付けた地場商品などのPRが目立った。24日まで。
緑茶の生産から流通までを手掛ける、流通サービス(静岡県菊川市)は、富士山と芸者が描かれたパッケージの緑茶をPRした。「延べ20カ国から引き合いが来ている。海外へは商品よりもお茶を含めた文化を売り込む姿勢が重要」と強調。石臼での抹茶作りも実演した。
鹿児島県霧島市の西製茶工場は、抹茶の消費拡大に取り組む。抹茶を1袋2グラム入りの小分け袋にし、桜や波など和風のパッケージを施した。「抹茶は1筒30グラム入りが一般的だが、全て使い切ることは難しい。小分けにすれば菓子作りでも使いやすい」と同社。
宮城県のJAみやぎ登米も仙台牛を試食で振る舞った。「既に輸出の問い合わせが数件あった」とJA担当者は話す。
特産品に付加価値を付け、客層を広げる売り込みも目立った。
秋田県横手市のブースでは秋田名産の漬物いぶりがっこに手を加え、ピクルスにした商品を売り込んだ。スモークチーズを挟んだ新製品も登場。
製造する遠藤育子さん(59)は「いぶりがっこ独特の癖がなく、食べやすい」と客層の拡大に期待する。
広島県のJA三原は、化学農薬や化学肥料の使用を抑えて栽培した「エコレモン」の加工品を紹介。「安全に気を使う女性や、子どもを持つ親をターゲット」(JA)に、焼き肉やから揚げなどにかける調味料などをアピールした。
兵庫県豊岡市の豊岡わこう堂は、県内産の米粉を使った菓子を展示した。スペインの伝統菓子に似せた商品で、県産の小麦粉「北野坂」と合わせて製造。コウノトリが生息しやすいよう農薬の使用を控える「こうのとり育む農法」で栽培した米が原料の米粉を使い、環境にも配慮した。米はJAたじまなどから仕入れ、都内の百貨店などで売り出す。
2017年08月24日
過疎地 12%で転入増 離島、山間、30代女性 持続可能研が分析
農山村の地域動向を分析する「持続可能な地域社会総合研究所」は21日、過疎指定の797市町村の2010年と15年を比べた人口動態と人口予測を発表した。10年の0~64歳と15年の5~69歳の人口比較などで、転入者が転出者を上回る社会増を実現した市町村は11.7%に上った。離島や山間部でその傾向が強い。日本創成会議が14年に公表した「消滅可能性市町村リスト」で存続が危惧された小規模な市町村で、人口回復の動きがあることが浮き彫りになった。
同研究所は「30代の女性が都会から移住し、地域や自然に根差した暮らしを選択する傾向が見える」と指摘する。
人口の社会増を実現した過疎地の上位市町村の増加率を見ると、鹿児島県十島村が27.7%と最も高く、新潟県粟島浦村、沖縄県与那国町が続いた。①離島や山間部の小規模町村が健闘②西日本が高く東日本が厳しい③市町村合併していない自治体が上位を占める――といった特徴があった。
過疎指定の41%に当たる327市町村で10年に比べて15年は、30代の女性が増加した。特に、同会議が公表した「消滅可能性市町村リスト」で消滅する可能性が高いとされた小規模な自治体が、同研究所の調査では30代女性の増加率が高い傾向にあった。消滅可能性市町村リストは10年から30年間の20~39歳での女性人口の減少を予想していることから、同研究所の藤山浩所長は「消滅可能性市町村リストの発表時点に比べ、この5年間で大きく風が変わってきている。心豊かに自然を見詰めながらそこにしかない暮らしをしている農村に、若者が入っている」と分析する。
2017年08月22日
「ゴリパパ一家」連載1万回・アニメ制作記念特集
日本農業新聞で連載中の4こま漫画「ゴリパパ一家」が5月1日付で通算1万回に達し、本紙創刊90周年を記念して初のアニメーション作品を制作した。幅広い読者から支持を集めた証しで、新聞でこれだけ長期間の連載漫画は珍しい。作品名は『ゴリパパ一家の農業はオモシロイ』。原作は神保あつし氏、提供はJA全中、JA全農、JA共済連、農林中央金庫。
ゴリパパは、郊外で農業をするイネと耕作の両親に駆り出されて農作業を手伝っていたが、イネがある日、ぎっくり腰で寝込んでしまった。これをきっかけに、ゴリパパが地域の農家やJA関係者らに支えられながら本格的に農業を始める姿や農村の風景を描く。連載1万回やアニメ化を受けて、神保さんと農業ジャーナリストの小谷あゆみさんが対談し、「ゴリパパ一家」の魅力などについて語った。
農村の「あるある」ユーモアに共感 小谷 あゆみさん
――「ゴリパパ一家」は1987(昭和62)年10月1日付から連載が始まりました。1万回を超えたことへの感想を教えてください。
神保さん 1万回ですか。ありがたいと思っています。日本農業新聞で連載を始めた時の条件は「面白くなかったら1カ月で打ち切り」でした。今日まで続けられたのは応援してくださる読者のおかげで、本当に感謝しかありません。3人の子どもがいるのですが、今年30歳になる次男が生まれた年からです。
漫画のタイトルは、ゴリラみたいな親父が登場したら面白いだろうなと思って付けました。家族が多いと面白いだろうと、「ゴリパパ一家」になりました。登場人物は家族を含めて50人程度になります。これに加えて犬や猫が出てきます。
小谷さん 農村の家族の何気ない「あるある」がユーモアを交えて描かれ、共感しながら拝見しています。アニメでは、ゴリパパがおばあちゃんの畑を手伝って、初めて農業のやりがいや喜びを感じる場面がありました。わたしもベランダ菜園をしていまして、小さな農体験から農業や農村に親しみを持ち、都市と農村がつながる関係を目指しています。体験したことって忘れませんからね。神保さんは農業や家庭菜園の経験はおありですか。
神保さん 実は農業の経験はありません。農業のことが分からず、漫画では最初の頃、農業のことは描いてないと思います。今でも何を作っているのか分からないような設定になっていますね。米を作っているような場面がありましたが、ダイコンを干しているシーンも出てきます。埼玉県所沢市の郊外に住んでいるのですが、自宅の前が畑なんです。漫画を描く2階の書斎から眺める風景や、犬の散歩で見た茶畑などが参考になっています。少し歩くと、富士山や「トトロの森」で有名な丘陵地などが見えます。
小谷さん 漫画のストーリーはどう考えるのですか。
神保さん 一度に7日分の漫画のアイデアを考えて仕上げます。1日1本ずつより、その方がリズムがあって作りやすいのです。ネタは新聞やテレビで探します。話題になっている面白いフレーズなどがヒントになります。メモ帳を持ち歩いていて、思い浮かんだら書き留めます。
小谷さん すごいですね。休刊日があっても年間360本近い本数になります。
神保さん 好きだからやっています。どんな仕事も知らない人から見たら大変ではないでしょうか。本当に1万回も連載をさせてもらって幸せだと思います。
ゴリパパは分身 理想の家族像投影 神保 あつしさん
――「ゴリパパ一家」は農村版の家族ドラマと言えますが、何かコンセプトはあったのでしょうか。
神保さん 僕の生まれは新潟県燕市です。20歳の頃に実家で経営していた旅館が倒産し、家族がばらばらになりました。旅館で出すエダマメを手でもがされていたことを思い出します。父親は小さい頃に亡くりました。幸せだった時代と、その後の激変した人生がトラウマになっているのかもしれません。だから家族がたくさんいて、常に笑っていた方が幸せかなと思っています。
ゴリパパは自分の分身のようなところがあります。そういう意味では「ゴリパパ一家」は自分が描く理想の家族像なのかもしれません。
出来上がった漫画を一番最初に読むのは家内です。新聞用語は難しいし、方言が出たときがあります。家内に読んでもらうのは、文字の間違いがないか見てもらうためです。周囲には夫婦共働きだと言っています。家内がいなければ、家庭を維持できないし、漫画にも集中できない。趣味は旅行で、家内と2人でアラスカにオーロラを見に行ったりしました。
小谷さん 夫婦合作なのですね。神保さんの家族や夫婦に対する優しい眼差しがあるから、「ゴリパパ一家」もどこか微笑ましく、家族っていいなあと、ほっと安らげるんですね。
家族が仲良くいっていれば、子どもはいったん地元を離れても、また親や祖父母のいるふるさとへ帰ってきます。家族愛は、郷土愛や地域の誇りに通じると思うんです。アニメの「ゴリパパ一家」のように、サラリーマンをしていたゴリパパがおばあちゃんの後を継ぐかもしれません。家族が仲良くすることが実は農業、農村、そして地方の活性化につながると思います。
――今後の抱負や期待をお願いします。
神保さん 1万回も描かせてもらって、うれしい限りです。抱負というわけではありませんが、昨日よりも今日、今日より明日はさらにおもしろい漫画を描き続けたいと思います。登場人物はこれぐらいにして、アニメのように直売所を舞台にした漫画ももう少し描いていければなと思います。
「ゴリパパ一家」は日本農業新聞の寄席のような存在だと思います。読んだら笑わなきゃ損だという漫画にしたいです。昨日よりは今日、今日よりは明日、さらにおもしろい漫画を描いていくことをライフワークにしていきたいですね。
小谷さん 素敵ですね。食料自給率がまた1%下がり、農業については明るくない話も多い中、それでもやっぱり、農業、農村を身近なものとして発信し続けることが大切だと考えています。1万5000回、2万回とずっと続けて、これからも神保さんの目線で昔ながらの日本らしい家族や農業、農村を描き続けてほしいと思います。
動画が正しい表示でご覧になれない場合は下記をクリックしてください。
https://www.youtube.com/watch?v=w9J5qY0azo8
2017年08月25日
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ヒアリ 緩効剤が有効 8週かけじわじわ 巣ごと“一網打尽” 新剤登録 速やかに
6月9日に兵庫県で最初に発見されて以来、ヒアリが港湾地区を中心に国内13カ所で確認されている。凶暴で強毒を持つヒアリが侵入を繰り返す可能性は高い。定着を防ぐには「敵」の弱みを突いて一網打尽にすることが大切、と専門家は指摘する。ヒアリ侵入を防いだニュージーランド(NZ)の対策も参考に、定着阻止に向け日本独自の戦略を検討している。
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ただし、課題はある。同社は今の時点で「エスティーム」の国内販売に向けた作業はしていない。ヒアリ研究者らに試験用のサンプルを提供しただけ。本格的に利用するには農薬取締法の登録が必要だ。国内のヒアリ定着が確認されなければ需要がなく、登録作業にかかる時間や費用が無駄になる可能性がある。
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2017年08月25日
交通弱者守れ 住民自ら高齢者送迎 岩手県花巻市
過疎化が進む農村で、高齢者の交通手段の確保が課題になる中、“交通弱者”を守る取り組みが各地で広がっている。岩手県花巻市高松第三行政区では、地域で車を確保し、住民が運転手として高齢者の希望する場所に無料で送迎する、自主的な取り組みが注目を集めている。
交付金活用 車1台リース 運転手5人運用
同行政区は山に囲まれた農村地帯。2016年の高齢化率は43.5%と全国平均の27.3%を大きく上回る。15年ほど前に路線バスが廃止されてから、公共交通機関はない。タクシーを呼んでも時間がかかる。
川村せつさん(70)は、夫、幸雄さん(75)の付き添いで月2回利用している。10キロ離れた北上市の県立病院に通院するためだ。せつさんは「知り合いが運転してくれるので、安心して気軽に使える」と感謝する。
きっかけは一人の高齢者の声だった。「病院に行きたくても行けない。タクシーは高い」。地域の暮らしを守る目的で立ち上がっていた、ふるさとやさわ元気村協議会の議題に上がった。他の高齢者に聞いてみると、同様の悩みがあることが分かった。
そこで考え出したのが、住民による送迎サービスだった。制度は16年11月に開始。車1台をリースして、運転手として住民5人を確保した。利用者は、利用3日前までに連絡し、都合の付く人が運転する仕組み。
免許証を持たないせつさんはスタート時から利用する常連だ。「家族や親戚を頼っていたが、農繁期などで忙しい時期はお願いしづらかった。助かっている」と話す。
運転手の1人、藤本牧子さん(64)と川村さん夫妻は昔からの顔なじみ。病院に行くまでの世間話も楽しみの一つだ。
同協議会の神山儀悦会長は「高齢者が使いたい時間に応じており、公共交通機関以上の便利さを提供できている」と成果を話す。
送迎サービスの費用は農水省の農山漁村振興交付金を活用。1年間で300万円が支給され、車のリース代や燃料代、運転手の賃金などに充てる。運転手には1時間800円が支給される。利用者の負担はない。
一方で、農水省の交付金は18年春に期限を迎えることから、市の補助制度の活用や一部有償化なども視野に検討している。神山会長は「事業を維持できる仕組みづくりが課題。行政は支援制度を充実させてほしい」と訴える。
ますます必要 支援の手
地方の公共交通機関は縮小を続けている。国土交通省によると、3大都市圏以外の15年度の乗り合いバスの輸送人員は14億6800万人で10年前と比べて1億3600万人減少。それに伴い不採算路線からの撤退が各地で起こっている。
一方で、車を自分で運転できない高齢者は増え続けている。警察庁によると、認知症による免許取り消しは16年は1845件(前年比373件増)、自主返納は16年で34万5313件(前年比5万9799件増)だ。
国土交通省によると、行政や住民、NPO法人などが連携した高齢者移動の支援は全国的に広がっている。住民ボランティアの他、タクシー会社や福祉事業者による送迎などさまざまな取り組みが行われている。
国も高齢者の移動支援に力を入れる。国交省の有識者検討会は6月、高齢者が自家用車に依存せず移動手段を確保する方策について中間取りまとめを公表。過疎地域でのタクシー運行を維持するため、タクシーの貨物輸送を可能にすることや、自治体主体の自家用車を使った有料送迎制度の拡大など、規制緩和を検討すべきとしている。(久慈陽太郎)
地域に合う方策を
福祉サービスを研究する岩手県立大学の宮城好郎教授の話
交通が不便な地域でのデマンドタクシーの運行など、行政が高齢者の移動支援をする動きは広がっている。一方で、利用料の高さ、高齢者が使いづらい運行形態などで利用者が伸びず事業を継続できなかった例もある。高齢者の要望や支える側の意見も取り入れ、地域の特性に合わせた仕組みを構築する必要がある。
2017年08月24日
「アオベジ」本格流通 青森市産のイタリア野菜
青森市産のイタリア野菜が本格流通し始めた。市がてこ入れし、ブランド名を「アオベジ」と命名、生産から流通までの体制を整えた。今年は12品目を主に作付けて飲食店中心に提供する。北国の冷涼な気候を生かし、真夏も出荷できるのが強みだ。
市が音頭を取る「あおもり魅力野菜プロジェクト」の一環。イタリア料理やフランス料理のシェフのニーズに応え、輸入品から地場産に切り替えていく戦略だ。
種苗業者、生産者、流通業者、外食産業、行政が一体となって取り組む。これまで数十品目の野菜を試験栽培し、栽培方法や収穫の適期を探ってきた。市内の生産者11人が品目ごとにチームを構成、数人が同じ品目に挑戦し試験流通を経て昨年から販売が始まった。
今年はズッキーニ、カーボロネロ、カリフローレ、ロマネスコ、フェンネル、ビーツ、バジル、カラフルミニトマト、カラフルニンジン、コリンキーなどを出荷する。
流通・販売は内海青果(青森市)に一本化。生産者は規格に合わせて包装し、ロゴマーク「アオベジ」を付け同社に集荷。それを注文に応じて飲食店や東京、大阪の卸に発送する。常時注文がある飲食店は100軒を超す。
今年から東京へケールを週1回、750袋販売する。冷涼地を逆手に、関東の主産地が端境期となる夏から11月までリレー出荷する。一般向けも広がっている。県内生協の共同購入に「アオベジボックス」(6品入り980円)が加わり、レシピを付けて普及に力を入れる。
内海青果の内海久香専務は「輸入品も扱ってきたが、地場産は半値で、しかも新鮮。青森で栽培できることを知ってもらい、特産に育てたい」と話す。特にトレビスとビーツは国産が価格、品質で優位だという。
プロジェクト事務局は市農林水産部あおもり産品支援課が担う。首都圏への営業、商談会、セミナーには生産者や卸と同行、レストランシェフと交流することでニーズの把握にも努めている。
2017年08月24日
よぎる一昨年の悪夢 ミカンコミバエ侵入 怖い移動制限 マンゴー農家祈るしか・・・ 沖永良部島・徳之島・屋久島 不安広がる
31年前に根絶したはずの果実や果菜の重要害虫、ミカンコミバエが一昨年に続き、またも今年6月、鹿児島県の島しょ部に侵入した。国、県、関係町は連携して初動防除を実施した。調査を強化し警戒を強めているものの、移動制限措置が発動されることもある厄介者だけに、マンゴーなど寄主植物の生産農家は不安に駆られている。
7月5日にミカンコミバエの侵入が確認された徳之島・天城町。新田功吉さん(64)は、16アールのハウスでマンゴーを栽培する。役場からの一報に、「出荷ができなくなるのではないか」と不安に襲われ、「ものすごく心配した」と言う。
県が町内17カ所に設置し、月2回実施している侵入警戒調査のトラップから5日、役場担当者が疑わしい個体1匹を発見した。すぐ午前の航空便で県の出先機関に送付、ミカンコミバエと確認された。
捕獲したトラップがあるのは新田さんのハウスから、わずか1.5キロの距離だった。今年は昨年までの倍の手間をかけ、糖度基準が高く大玉で高単価で売れる奄美群島の特選ブランド「プレミアムマンゴー」の出荷比率を3分の1に高めた。こうした中での侵入とあって「出荷1週間前という最悪のタイミング。それだけにショックが大きかった」と新田さんは話す。
同町は、約60戸が6ヘクタールのハウスでマンゴーを栽培する産地。昨年は31.5トン出荷した。再侵入が確認されたのは1匹だったが、天城町熱帯果樹生産組合の役員も務める新田さんは、一昨年の移動制限騒ぎが頭をよぎった。その後の果実調査では定着の証拠となる幼虫は発見されておらず、とりあえず胸をなで下ろしたという。
新田さんは「農家にできることはない。行政に一生懸命にやってもらうしかない」と、国、県、町による防除に期待する。
トラップ増設、防除徹底
鹿児島県へのミカンコミバエ侵入は6月21日~8月1日に沖永良部島(知名町、和泊町)、徳之島(天城町)、屋久島(屋久島町)で確認された。国、県、町は初動防除として、農薬を染み込ませた誘殺板(テックス板)を、発見地点から半径1キロ以内に合計8088枚設置。通年で行う侵入警戒調査より強化し、半径5キロ以内のトラップを100基以上増設、調査間隔も短くしている。徳之島と沖永良部島は10月上旬まで、屋久島は来年4月10日まで調査する。
農水省植物防疫課の島田和彦課長は「台風や季節風の関係で、早くから飛来が多いとみて警戒していた」と言う。一昨年に奄美大島で果実を移動制限し廃棄処分したことを挙げ、「ミカンコミバエは地域にとって死活問題。一昨年を教訓に対応マニュアルを作り、初期防除を徹底した」と話す。(北條雅巳)
<ことば> ミカンコミバエ
中国南部や台湾から風に乗って飛来する。日本では西南諸島と小笠原諸島に発生し熱帯果樹など寄主植物は本土出荷が制限されたが、1968年から国が50億円かけ86年に根絶した。2015年、奄美大島に再侵入し、植物防疫法に基づく緊急防除を同年12月13日から実施、16年7月14日に解除。移動制限でタンカンなどを大量に廃棄する被害があった。
2017年08月23日
過疎地 12%で転入増 離島、山間、30代女性 持続可能研が分析
農山村の地域動向を分析する「持続可能な地域社会総合研究所」は21日、過疎指定の797市町村の2010年と15年を比べた人口動態と人口予測を発表した。10年の0~64歳と15年の5~69歳の人口比較などで、転入者が転出者を上回る社会増を実現した市町村は11.7%に上った。離島や山間部でその傾向が強い。日本創成会議が14年に公表した「消滅可能性市町村リスト」で存続が危惧された小規模な市町村で、人口回復の動きがあることが浮き彫りになった。
同研究所は「30代の女性が都会から移住し、地域や自然に根差した暮らしを選択する傾向が見える」と指摘する。
人口の社会増を実現した過疎地の上位市町村の増加率を見ると、鹿児島県十島村が27.7%と最も高く、新潟県粟島浦村、沖縄県与那国町が続いた。①離島や山間部の小規模町村が健闘②西日本が高く東日本が厳しい③市町村合併していない自治体が上位を占める――といった特徴があった。
過疎指定の41%に当たる327市町村で10年に比べて15年は、30代の女性が増加した。特に、同会議が公表した「消滅可能性市町村リスト」で消滅する可能性が高いとされた小規模な自治体が、同研究所の調査では30代女性の増加率が高い傾向にあった。消滅可能性市町村リストは10年から30年間の20~39歳での女性人口の減少を予想していることから、同研究所の藤山浩所長は「消滅可能性市町村リストの発表時点に比べ、この5年間で大きく風が変わってきている。心豊かに自然を見詰めながらそこにしかない暮らしをしている農村に、若者が入っている」と分析する。
2017年08月22日
ため池 整備が急務 “想定外”豪雨に耐えられず・・・ 管理できず老朽化も 決壊相次ぎ 大被害に 福岡県朝倉市
九州北部豪雨で、農業用ため池の決壊が相次いだ。福岡県朝倉市では、国の調査で老朽化などの問題点がないとされたため池でも、1日に1カ月分を超す想定外の局地的豪雨と土石流によって、11カ所が決壊する事態となった。近年、管理する農家の減少とため池の老朽化が進み続ける中、改修や運用方法の見直しなど再整備が急務となっている。
7月5日の豪雨で、甚大な被害が発生した朝倉市。同日の24時間雨量は、7月の1カ月平均の1.5倍に及ぶ観測史上最多の516ミリを記録した。山間部の各所で土砂崩れや土石流が発生し、市内のため池108カ所の1割に当たる11カ所が流失・決壊した。
市によると、台風や大雨が予測される場合、事前にため池から放流している。しかし今年は貯水量が少なかったため、放流するかどうか判断しかねていた地域が多かった。市農林課は「あまりに急激な豪雨で、対応できなかった」とみる。
同市山田地区では、上流域にあった貯水量7万立方メートルのため池が決壊。下流の集落や農地に大きな被害をもたらし、死者も発生した。
せき止め効果も
ただ現地調査した農研機構は、決壊したため池の下流の「鎌塚ため池」(同9万9000立方メートル)が土砂をせき止めたことを確認。「氾濫規模を軽減し時間を遅らせた」とし、ため池が貢献したことを報告した。
鎌塚ため池に隣接する園地で柿を栽培する農家(70)は住民と共に年2、3回、池の周辺を草刈りして管理してきた。「ため池があったから、これでも被害が少なくて済んだ」と話す。ただ上流のため池は決壊し、柿園に隣接するため池は埋もれたまま。「改修がどうなるのか見当がつかない」と不安を抱える。
同市の山間部は、ため池で農業用水を確保している地域が多い。中には老朽化した池も多く、市は県営事業などを活用して堤の漏水防止など改修を進めてきた。しかし、億単位でかかる工事費用は農家にとって負担が重く、工事の合意形成は容易でないのが実情だ。
3400カ所が「防災不安」 農水省
農水省によると、ため池は全国に約20万カ所あり、受益面積が2ヘクタール以上の規模は約6万カ所。うち7割が江戸時代以前の築造で、老朽化が進む。多くは地元の水利組合や農家が管理しており、農家の減少や高齢化で管理体制の弱体化が課題となっている。
同省が2013~15年度に受益面積50アール以上のため池9万6074カ所を点検した結果、下流に住宅などがあり決壊した場合に影響を及ぼす恐れがある「防災重点ため池」は1万1318カ所に上る。このうち十分な安全性が確認できなかった3391カ所を優先して、地方公共団体が詳細な調査に乗り出している。
調査により安全性が確保されていないことが分かれば改修工事を行う他、ハザードマップを整備して適正な水位管理などの減災対策を推進しているが、対策はごく一部にとどまる。朝倉市で決壊・流失した池のほとんどが「防災重点」でなかったことから、想定を超す豪雨への対応が不十分な点は否定できない。
同省は農家の減少や高齢化を背景に、堤の崩れや排水部の詰まりなど状態の把握と適切な管理が困難になっていると指摘する。「問題があっても現場から声が上がらないと分からない。改修と併せ、適切な管理体制づくりなど減災対策を強化していく」(防災課)としている。(福井達之)
2017年08月22日
農泊客 50カ国超 ネット発信 翻訳アプリ駆使 三重の農家
三重県紀宝町の農家民宿「はなあそび」には、開業から約3年で50カ国以上の観光客が宿泊し、リピーター(再来訪者)もいる人気ぶりだ。タブレット端末の翻訳アプリを利用し、外国語の問い合わせにも対応する丁寧さと家族的な温かい対応が人気の秘密だ。
2017年08月22日
若い感性 美を演出 高松市で花いけバトル 初代優勝は宮城・柴田農林高校
高校生が生け花の技術を競う初の全国大会「全国高校生花いけバトル栗林公園杯2017」の決勝大会が19、20の両日、高松市で開かれた。各ブロック大会などを勝ち抜いた9チームが参加。宮城県立柴田農林高校の「モルフォ」が優勝した。準優勝は香川県の高松第一高校の「縁」。
主催は同バトル実行委員会。全国から77校、123チームが出場した。1チーム2人が、観客の前で1人ずつ5分間、花を生け、作品の美しさの合計得点を競った。
同委員会会長の浜田恵造香川県知事は「若い世代の花と緑の普及につながってほしい」と期待。同県は今後、「花いけ甲子園」として毎年県内で開きたい考えだ。
優勝チームの山田愛里沙さん(17)は「生まれて一番うれしい」、大庭涼佳さん(17)は「花が好きで、決勝戦に出られてよかった」と喜んだ。
入賞チームは次の通り。
▽特別賞(団体)=福井県立奥越明成高校の「みー&いっしー」、同(個人)=高松第一高校の近藤宏美さん(18)▽花の国日本協議会賞=岐阜県立恵那農業高校の「くるみらい」
2017年08月21日
伐採果樹で食器作り 自分ブランド確立へ 材質、木目 生かし魅力発信 福島県伊達市 木内啓樹さん
福島県伊達市で漆器作りなどに携わる木内啓樹さん(43)は、地域の果樹農家が改植時などに伐採した木を使い、スプーンやフォークなどの食器作りを始めた。JAふくしま未来伊達地区の若手農家らで作るグループDATEC(ダテック)のメンバーでもあり、果樹を身近に感じてもらえるよう独特の材質や木目を生かした作品を生み出し、農業の魅力発信を目指す。
木内さんは中学校卒業後、漆器作りの修業を開始。15年前、伊達市梁川町で父親が運営する工房、一心堂で制作活動を始めた。
伊達市梁川町は果樹栽培が盛ん。地域の農家に、品種更新時に伐採した木をもらう機会があり、スプーンを試作。「リンゴは硬かったり、桃は木目がくっきりしていたりと、それぞれに魅力があることが分かった」と振り返る。
4月から果樹を使った食器作りを本格化。市内から調達したリンゴや桃、サクランボ、プラムの木材から、スプーンやフォーク、バターナイフなどを作る。木そのものの魅力が伝わるよう、色を付けずオイルで磨く。
知り合いの農家の呼び掛けでDATECに加入。作品は工房に加え、DATECが阿武隈急行の保原駅前で毎月第3木曜日の午後4時半から開く夕方市で販売する。
木内さんは「販路を増やして果樹木の食器の良さを広めながら、自分のブランドを確立したい」と意気込む。問い合わせは一心堂、(電)090(2984)3657。
2017年08月21日
農業女子 地域産業けん引 次は・・・就農増 メンバー600人超 農水省プロジェクト浸透
農水省が進める「農業女子プロジェクト」のメンバーが8月現在で600人を超え、活動連携する企業数は29社、教育機関は3校に増えた。“農業女子”の言葉は定着し、地域をけん引する存在になっている。愛媛県では漁業者や学生も加わった地域版の活動も広がり、今月からはメンバーが学生と交流して就農を呼び掛ける「チーム“はぐくみ”」の活動も本格化させる。
愛媛の「さくらひめ」漁業者も参加し活発
愛媛県内の女性農業者や漁業者らで作る「1次産業女子ネットワークさくらひめ」の活動が活発化している。会員数は69人。漁業者が加わることで商品開発の幅が広がり、今年の中元商戦では県特産のタイを使ったパイの開発につながった。企業との連携も広がり、サポーター企業は13社まで広がっている。
さくらひめは2016年6月に発足。認知度が高まる県が育成したデルフィニウムの品種名を採用した。さくらひめの特徴は、漁業者や養鶏農家など1次産業に関わる幅広い会員の他、大学生も1人加入している点だ。平均年齢は39.7歳。
今年の中元商戦で県内の百貨店・松山三越で販売した3品には、米を生産する有田亜佳さん(46)と鶏卵を生産する熊野智子さん(47)が協力した「卵かけご飯セット」の他、タイの養殖に携わる山内満子さん(50)がタイを使ったパイ、ブルーベリー生産者の森智子さん(53)がブルーベリーのアイスクリームを販売するなど、品目を越えた交流が広がる。
7月には松山市の交流会に「今治タオル」を作る田中産業や松山三越、マキタ四国支社などが参加。歳暮商戦でも商品開発を進める松山三越は「百貨店のお客は7割が女性。食や衣服などは女性の意見が不可欠で、さくらひめの存在は大きい」と強調する。
タオルの新商品開発を進める田中産業も、農業女子の着眼点の良さを実感する。
学生に呼び掛け
2013年、37人で発足したメンバーは昨年9月に500人を超え、現在612人。農水省の女性活躍推進室は「連携企業を増やすなどして、今後も農業女子の経営の発展を支援していきたい」と意気込む。
東京から始まった取り組みは全国に広がり、各地で地域版「農業女子プロジェクト」が拡大している。岡山県は46人が「明るく、楽しく、もうかる農業」をスローガンに活動している。佐賀県では昨年11月に「カチカチ農楽(のら)が~る」が発足、21人が活動する。
女性農業者を増やそうと、学生に新規就農を呼び掛ける取り組みも本格化させる。プロジェクトメンバーが学生と交流し、就農を促す「チーム“はぐくみ”」は22日から、東京農業大学の生徒と交流する。神奈川県三浦市と、山梨県甲州市の農業女子が、5人の学生を受け入れる。圃場を案内し、女性ならではの人生設計、農業技術を教える。9月には、北海道の農業女子と約10人の学生が交流。学生に農業の魅力を伝え、仲間を広げていく。(高内杏奈、丸草慶人)
2017年08月19日