日経サイエンス  2017年10月号

特集:若冲の科学

若冲が描いた虫たちを語る

倉谷 滋(理化学研究所) 橋本麻里(美術ライター)

「このチョウは,翅の模様はアオスジアゲハで,あとの部分はカラスアゲハという,実際にはあり得ないチョウなんです」(倉谷滋)

 

ゾウやクジラからアリンコまで,膨大な種類の動植物を描き続けた江戸時代の絵師,伊藤若冲。独特な色使いで緻密に描かれた虫たちを,進化形退学者・倉谷滋と,美術ライター・橋本麻里が語り尽くす。夏の朝を切り取ったようなスナップショット「糸瓜群虫図」から,色と姿を大胆に組み合わせ,本当はいない場所に配された『動植綵絵』まで,若冲は何を表現しようとしていたのか。その作品には,18世紀に興隆した,日本の最初の博物学の影響が見て取れる。美術とサイエンスと歴史がクロスオーバーする異色トーク。

著者

倉谷滋(くらたに・しげる) / 橋本麻里(はしもと・まり) 

進化形態学者。理化学研究所主任研究員。京都大学理学部卒業,熊本大学助教授,岡山大学教授などをへて現職。2011年文部科学大臣表彰(科学技術賞)受賞。著書に『新版 動物進化形態学』(東京大学出版会),『ゴジラ幻論 ――日本産怪獣類の一般と個別の博物誌』(工作舎)など多数。

本美術を主な領域とするライター,エディター。公益財団法人永青文庫副館長。新聞,雑誌等への寄稿のほか,NHKの美術番組を中心に,日本美術の楽しく,わかりやすい解説に定評がある。著書に『美術でたどる日本の歴史』全3巻(汐文社),『京都で日本美術をみる【京都国立博物館】』(集英社クリエイティブ)ほか多数。

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