先に公開した4つの記事(下記)で、”愛犬の闘病に関する別の視点”について触れました。皆さんはどう感じられたでしょうか?
この記事で語ろうとしたことは、2つあります。1つ目は愛犬の闘病に際して、飼い主の心に芽生える悩みを、どう捉えたらいいのかという考察です。そして2つ目は、視点と考え方を変えれば、その悩みは消えないまでも、軽減出来るものなのではないかという提案です。
【該当の連載記事】
■ それは限られた時間を刻む事 ~愛犬の闘病、もう一つの側面(1/4)~
■ 頑張らないと言う選択 ~愛犬の闘病、もう一つの側面(2/4)~
■ 悩みの値段って考えたことありますか? ~愛犬の闘病、もう一つの側面(3/4)~
■ 悩みの消費期限って? ~愛犬の闘病、もう一つの側面(4/4)~
これら4記事では、お読みになった読者の方から、とても貴重なコメントをいただきました。どれもが考えを深める切っ掛けになる、得難いコメントです。
とても大切なことなので、本記事を含めた3回で、それらのコメントを、掘り下げてみようと思います。
私は「頑張れ!」という言葉は励みになった
まず考察するのは下記の記事です。
記事の内容:
愛犬の闘病の際に、多くの仲間から「頑張れ!」という励ましの言葉をもらう。しかしその「頑張れ!」と言う言葉は、時に当事者にとって負担になっているのではないか? ――という問題提起。
読者:moーちゃんままさんからのご意見:
頑張っている人を応援する時に、(他に言葉が無くて)「頑張って」としか言えない事がある。自分では「頑張って」の言葉が励みになった。
※ご意見の全文は、原典である下記記事下部のコメント欄でご覧いただけます。
「頑張れ!」という言葉
「頑張れ!」という言葉は、それを受け取る側が置かれている心理状態で、随分と印象が違ってくるもののように思います。「頑張れ!」と言って下さる方は、例外なくあなたの味方で、あなたを励ますために言って下さっているのは明らかです。
しかし、だからこそ――、時にその言葉で、複雑な気持ちになることがあります。
筆者の愛犬ピーチーの闘病中には、「頑張れ!」と沢山の方から励まされました、筆者はそれを、素直にありがたいと思いました。ですがそれは、今だからこそ言えることです。ずっと以前、筆者がまだ若かった頃は、その言葉の捉え方が随分違っていたように思います。
本論から逸れるので詳細には触れませんが、それは連日の看病の末、父親を看取った時のことです。
その当時、「頑張れ!」言われて思ったことは、
「言われなくても、頑張ってるよ!」とか、
「これ以上、どう頑張ればいいの?!」という事でした。
当時は誰かから「頑張れ!」と言われる度に、「ありがとう」と愛想笑いをし、その数と同じ分だけ、心にひっかき傷を作っていたように思います。
素直に受け止められるのは
歳をとるに従って、「頑張れ!」は、素直に受け止められるようになりました。
しかし改めて思うと、それは次第に心が鍛えられて、「頑張って」という言葉に耐性がついたからだと思います。ようやくその言葉の裏にある、励ましの気持ちだけを、素直に受け入れるようになったわけです。
しかしこれから先自分の身に、過去に経験しなかったほどの深刻な出来事があり、「頑張れ!」と誰かに言われた時には、それを素直に聞けるのでしょうか。年齢を重ねた今でも、自信がありません。
励ましの言葉をどう受け取るのかというのは、やはり受け取る側の、気持ちの余裕次第なのではないかと思います。
前の記事で筆者が書いた事は、 「頑張れ!」と言われても、本当に頑張る必要なんてないんだという事です。何故ならば、ギリギリの状態で更に頑張ってしまうと、心の負担が限界を越えてしまうかもしれないからです。
「頑張れ!」の言葉に対し、本当に頑張るのかどうかは、本人に任されている。
そのように心得ておけば、どんな「頑張れ!」もきっと、素直な励ましの言葉になるように思います。
頑張れに代わる言葉
応援をしたい気持ちを言葉にするのは難しいものです。
予めそれを考えておくのでない限り、とっさに口を突いて出るてくるのは、「頑張って」という月並みな言葉になってしまうことでしょう。
それでは、「頑張れ!」に代わる言葉とは何でしょう?
筆者の経験の中で、素直に受け入れられたのは「頑張っていますね」と、「頑張りすぎないで下さい」という言葉だったように思います。
なぜそうだったのかなと、突き詰めて考えると、「頑張れ!」という応援は、強い言葉のくせに、相手の気持ちがその場限りで、時間と共に消えていくように感じるからです。きっと相手の本心は、そうではないんのでしょうが。
それに対して、「頑張っていますね」と「頑張りすぎないで下さい」という言葉は、応援ではなく”承認”です。「頑張れ!」ほど力強くは無いけれど、ずっと続いていくイメージがあります。
この2つの言葉を、やや説明調に言い換えると、「ずっと見ていたけれど、頑張ってますね」と、 「どうか頑張りすぎないで下さい。困ったらいつでも声を掛けてね」 という意味になるでしょう。
「頑張れ!」に代わる言葉について、最後にもう一つだけ。
愛犬ピーチーの闘病中に、獣医さんの言葉で感心したのが、 「いっしょに頑張りましょう」という一言でした。
この「いっしょに頑張りましょう」もやはり応援ではありません。分類するならば”同意”ですね。だから素直に聞けるのかもしれません。
そう言えば、良い医師は患者に対して、「頑張ってください」とは言わないのだそうです。最近では医学部の授業の中で、そんなレクチャーもあるのだとか。
もしかしたら、根本は同じ理由なのかもしれませんね。
―― 愛犬の闘病、更なる視点・つづく(1/3) ――
(ライター)高栖匡躬
――本記事は、下記の連載で構成されたものです――
第2話 近日公開いたします
第3話 近日公開いたします