スマートフォンの利用時間が増えていく中、縦長のスマホ画面に合わせた縦型動画の配信・再生に対応するサービスが増えてきた。ファッションやメイクのハウツー情報を配信する「C CHANNEL」などは若い世代を中心に支持を獲得。Facebookやインスタグラム、YouTubeなども縦型動画の再生に対応している。そんな中、1話数分の新作アニメを縦型動画で配信するサービスも登場している。


 「攻殻機動隊」シリーズなどの作品で世界的に有名なアニメーション制作会社プロダクション・アイジー。同社が、2017年6月に配信を開始したのが、縦型動画に特化したアニメ視聴アプリ「タテアニメ」だ。その名の通り、縦型に作られた新作アニメをほぼ毎日投稿している。

 作品の長さは、1話約3分、1シリーズ10話程度。それぞれ第1話と、公開から2週間以内の作品は無料で視聴できる。それ以降の作品は、ポイントを購入したりPR動画を視聴したりして得られるポイントで視聴可能だ。現在は、「秘密結社 鷹の爪」や、西原理代子の「できるかな」シリーズ(扶桑社)、マンガ誌アプリ「少年ジャンプ+」で人気の『カラダ探し』(集英社)などの縦型アニメを配信中。9月以降は、「週刊SPA!」(扶桑社)で連載中の『ゴハンスキー』、『稲川淳二のすご~く恐い話』などを配信。テレビドラマも好評だった『孤独のグルメ』(扶桑社)や、元々は著者がKindleで自主出版していた作品にもかかわらず、ネットの口コミで火が付いた『ひとり暮らしの小学生』(宝島社)などの作品の配信も予定している。

「タテアニメ」アプリの画面。現在は曜日ごとに作品を分けて、新作を公開している (C)タテアニメ
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アニメは縦型動画用に制作された新作ばかり (C)タテアニメ
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マンガ誌アプリ「少年ジャンプ+」で人気の学園サバイバルホラー『カラダ探し』はタテアニメでアニメ化された (C)ウェルザード・村瀬克俊/集英社/タテアニメ
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 動画配信サービス「C CHANNEL」やライブ配信アプリ「LINE LIVE」など、縦型動画にフォーカスしたサービスは若い世代を中心に、すでに定着しつつある。スマホ画面の大型化、スペックの向上、通信環境の進歩などによって、スマホで動画を見たり撮影したりする人は増えた。それに伴い、スマホを横向きに持ち替えなくても見られる縦型動画にシフトする企業が出てきている。

 ただ、C CHANNELやLINE LIVEなどのサービスは情報コンテンツやリアルタイム配信が中心。これまで横向きに構えていたカメラを縦向きにして被写体となる人物を撮影すれば、縦型動画が簡単に撮れる。

 一方、アニメは絵コンテやレイアウト、作画などの制作手法が全て変わってくる。また、アニメ作品は、テレビや映画、動画配信サービス向けの作品として公開したあと、DVDやBlu-rayなどのパッケージにして販売することも多い。縦型動画にすることで、それらの活用範囲も狭まってしまうだろう。それなのに、プロダクション・アイジーが縦型動画の配信サービスに乗り出したのはなぜか。今後の狙いなどを聴いた