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連載コラム内田麻理香「科学しちゃうぞ!」

なぜメレンゲは泡立つのか?

2014/2/15

内田麻理香

(サイエンスライター/サイエンスコミュニケーター)

しかし、卵白に含まれるたんぱく質の「気泡性」と「空気変性」という二つの性質と温度の絶妙な関係が、メレンゲの泡立てに重要な役割を果たしているのです。

「油」と「砂糖」が邪魔になるのはどうして?

 また、メレンゲを作るときのレシピの注意書きに必ずと言ってよいほど「泡立て器やボールに油分がついているとダメ」と記載されています。これは、サラダ油やバターなどの油脂が、卵白にできた気泡であるたんぱく質の膜を破壊するからです。

 また砂糖も、卵白が空気変性を起こして膜状に固まるのを抑制する働きがあります。したがって、最初の段階から加えてしまうとなかなか気泡の膜を作ることができません。ですから、まずは卵白だけを泡立て始め、かなりしっかりと泡立った状態で一部の砂糖を加え、さらに泡立てながら残りの砂糖を少しずつ加えていきます。こうすることで、最も効率的に状態の良いメレンゲを作ることができます。しかし、ハンドミキサーを使って泡立てる場合、撹拌力が強いのですぐに泡立てが過剰になってしまう可能性があります。ですから、最初の段階から砂糖を加えておくなど、砂糖を加えるタイミングも重要な要素です。

「砂糖」と「酸」の良い働きとは?

 しかし、その一方で砂糖は、きめの細かいしっかりしたメレンゲに仕上げてくれる作用もあります。砂糖は水を引き付ける力が強いので、できた気泡の安定性を高めてくれるのです。また、「酸」も泡立てを助ける作用があります。卵白は本来アルカリ性を示す食品ですが、中性に近づく方が泡の安定性が高くなります。ですから、少量のレモン汁を加えると泡の安定度が高くなります。また、シフォンケーキに、クレーム・タータと呼ばれる酒石酸水素(しゅせきさんすいそ)カリウムの添加物を加えることがあるのも、レモン汁と同じ働きがあるためです。

 卵白と砂糖だけで簡単にできてしまうのがメレンゲです。ただ焼くだけでもクッキーになりますし、応用編としてはシフォンケーキもマカロンも作れます! 今までは、ちょっと面倒に思えたメレンゲ作りも、科学的に理解すると身近に感じ、作ってみたくなりませんか?