その昔、『旋風の用心棒』という作品の#16で、ことあるごとにやたら俯瞰、というのをやったことがある。
映像をお持ちの方は観返してほしい。
田野倉家?だっけ、その人々の宿業のようなものを、神の視座で冷酷に突き放し、しかし見守るように捉えたのだ。
我ながら上手くいったと思う。
そして『あたしンち』の「さくら、サクラ」だっけか?宮嶋先生が桜を愛でる回。
そこでは徹底的にローアングルで攻めた。
当時、小津をどうしてもやりたかったのと、優しさと人情でカメラを寄り添わせたかったからだ。
このように、僕はアングルの決定はドラマとキャラの心情描写次第だと思っている。
絵作りが優先であってはならない。
「絵コンテ6」でも述べた通りだ。
今はアイレベルアングルが多くなった。
キャラに誠実に相対するには、これが一番合理的だと思ったからだ。
それにしても、上の絵は描いてて「俺の作品にはなかなかないアングルだな・・・」と思ったが。
これには『私の優しくない先輩』の影響がかなり大きい。
カメラマンの藤井さんは、クランクイン直前にこう言ってのけた。
「監督はとにかく役者!芝居を作ってください!絵は僕らが合わせますから!」
まぁだんだん時間がなくなって、結局カット割りは僕がほぼほぼやったのだが。
でもこの時の「芝居優先」の考え方は、大いに勉強になった。
僕らは商売柄、どう撮るかにこだわりすぎだ。しかし大事なのは、何を撮るかだ。
最近TVがやらせだガセだと騒がしいのは、そのせいもあると思う。
取材の話題性ばかり気になって、肝心の当事者と向き合うことをしていないのだ。
だから裏取りをしない。
あらゆる分野で「リテラシー」が問われている。