文科省は8月18日、依存症予防教育に関する調査研究報告書を公開した。各種調査のうち、学校現場の依存症予防教育の実態を調査したアンケート結果では、依存の種類によって学校側の予防教育の意識や実施状況が異なり、特にアルコールやギャンブル依存には危機意識が薄く、対策が十分ではない現状が浮き彫りとなった。また、家庭の予防教育に対する課題も挙げられた。
同報告書は、▽薬物▽アルコール▽喫煙▽ギャンブル▽インターネット――の各依存症に関する青少年の実態と、予防教育の取り組み事例について調査した。国内だけでなく、アメリカやヨーロッパ諸国、韓国などとの各種のデータ比較や、予防教育の取り組み事例の調査も行われている。
第4章で、学校現場の依存症予防教育に関するアンケート調査の結果をまとめている。調査対象は全国の公立中学、高校、特別支援学校のサンプリング調査で、1232校のうち540校から有効回答を得た。
依存について過去1年間に生徒や保護者から相談を受けた比率では、インターネットが全体で27.8%と最も高く、次に喫煙が6.9%、薬物が2.2%だった。また、学校側が生徒の依存・依存傾向について危惧している度合いでは、インターネットが75.7%で突出して高く、次いで喫煙19.5%、薬物7.4%だった。
依存教育の必要性に関しては、全ての依存で50%を超えたものの、アルコールやギャンブルの比率は他と比べてやや低い傾向にある。
予防教育での外部機関との連携状況をみると、依存ごとに連携度合いや連携先に差があった。特に、インターネット、薬物、喫煙では行政機関や警察との連携を挙げた学校が多かったのに対し、アルコールやギャンブルでは「連携していない」を挙げた学校が最多となった。
ギャンブル依存に関しては、予防教育が十分ではないと答えた学校は77.9%と突出して高く、学校側も課題を認識している状況がわかった。しかし自由記述をみると、「中学校でアルコール依存・ギャンブル依存の予防教室を行う必要性をあまり感じない」「ギャンブル依存に関しては、生徒の実態把握が困難なため実施していない」といった意見もあった。
こうした予防教育を家庭でも実施する点については、ほとんどの学校が賛成と答えたが、「家庭の教育力の低下」「子供に飲酒、喫煙を許すなど家庭の危機感が薄い」「家庭環境に問題がある」といった課題が指摘された。
自由記述では、「保護者の協力が必要不可欠なのに、聞いて欲しい保護者が参加しないことが多い」「保護者が依存及び依存傾向で治療等を行っている生徒への心のケアが必要となる」などの課題も挙げられた。
同報告書ではこのほかに、国内外での依存予防教育の先進的な取り組み事例・教材もまとめている。