ものすごいセリフの量で覚えるのが大変でした。やっとの思いで覚えたのに、寝て起きたら少し忘れていて…。「これはまずい!」と思って何度も何度も台本を読み返しました(笑)。なんとか覚えて本番に臨んだのですが、当日は当日で大変。バー「月時計」にあるたくさんの時計がカチカチいうので「早く言え、早く言え」とせかされている気がして、セリフが頭から抜けそうになって。最後はもう時計との戦い(笑)。終わったときは爽快感でいっぱいで、思わず有村架純さんに抱きついてしまいました!
由香はこれまで自分のことを誰かに話したり、人前で泣いたりすることはなかったと思うんです。だから、みね子(有村架純)の前で泣いたのは特別なことのような気がします。きっと、みね子が亡くなった母に重なるということも大きかったのでしょうね。
以前、省吾さん(佐々木蔵之介)も月時計にみね子を連れていって、私のことを語っていましたよね。そのシーンを放送で見たときに、由香と省吾さんはやっぱり親子なんだなと思いました。みね子には不思議と自分や家族のことを話せてしまう。2人ともみね子に対して何か感じるものがあったんでしょうね。
台本で「(家族が)私を見て悲しそうな顔するの見てると、イライラした」というセリフを読んだとき、きっと由香は自分のことを腫れ物に触るように接する鈴子さん(宮本信子)たちに“悲しさ”を感じたのかもしれないと思いました。悪いことをしても怒ってくれないし、誰も何も言ってくれない。そのうち、自分でもどうしたらいいかわからなくなって、家を飛び出してしまったのではないかと。私もそんなふうに自分のことがわからなくなるときがあるので、由香の気持ちが少しわかります。
それに、本当は家を出るときも止めてほしかったんじゃないかな。もし本当に2人のことが嫌いだったら、家出する前に家族写真を撮ったりしませんよね。不機嫌な顔をしながらも撮ったということは、そういうことなのだと思います。
台本を読んでいると、自分が日頃思っていることがセリフに時々書かれていてびっくりします。脚本家の岡田惠和さんが私をイメージして由香を書いているからか、私が由香を演じているからそう思うのかわからないけど、心の中を読まれているみたいで不思議な気持ちになりました。
私は人から“何を考えているかわからない”と言われることがあるので、いつか岡田さんにお会いしたら「なんで私の気持ちがわかるんですか?」と聞いてみたいです(笑)。