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【コラム】

筆洗

 「この間、南部でレストランに入ったんだ。そしたら白人のウエートレスが飛んできてこう言うんだ。『うちの店じゃ、黒人は食べられないよ』。オレは言い返したよ。『大丈夫、オレは黒人を食べないから』」▼米国では有名なジョーク。誘われるのは爆笑というよりもちょっと引きつった笑いか。発表されたのは黒人差別がなお強い一九六〇年代。この作品をはじめ、差別に対する辛口のジョークで一世を風靡(ふうび)した黒人コメディアンで人権活動家のディック・グレゴリーさんが亡くなった。八十四歳▼米国には黒人の進出を許さぬ、さまざまなカラードバリアーがあったが、グレゴリーさんは六一年、白人相手にスタンダップコメディーを初めて見せた黒人だったと聞く▼その芸は笑いに巧みにまぶした差別への敵意と悲しみである。「黒人の宇宙飛行士が実は大勢いると聞いた。何でも最初の太陽着陸のためだってさ」。自伝の題名は黒人の蔑称である「ニガー」。許せない呼び方にもかかわらず、そう付けたのは「もし、どこかで白人が黒人をそう呼べば、本を宣伝することになる」▼差別や差別する者をちゃかし笑う。その笑いが広がれば世の中は変わる。「よくできたジョークには力がある」。しなやかな武器で、差別と闘った人である▼大統領が白人至上主義者に遠慮する時代。「よくできたジョーク」が聞きたい。

 

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