USB Power Deliveryの規格について調べた

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USB Power Delivery (USB PD)という規格がイマイチよくわからなかったので調べてみました。

USB Power Deliveryとは

USB Power DeliveryとはUSBでの電力供給に関する規格で、最大20V/5A=100Wの給電が可能となっているのが特徴です。

USB関連としては最も大きい100Wまでの電力を供給できる

従来のUSB規格を大幅に上回る100Wまで流せるということで、MacBookシリーズなどの電源の規格として採用されています。

USB PDを利用できる機器

USB PDは、『USB PDに対応したUSB Type-Cポートを搭載した機器』でのみ利用することができます。

USB PDで充電可能なMacBookのUSB-Cポート

最近はUSB Type-Cを採用しているノートPCやスマートフォンも多いですが、必ずしもUSB Type-CであるからといってUSB PDを利用できるわけではないので注意しましょう。

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USB PDの給電能力について

記事作成時点でUSB PDはRevision 3.0まで策定されており、その出力は原則として以下の “Power Rules” という規格に沿って行われます。

Revision 2.0 / 3.0
出力 5V 9V 15V 20V
0~15W 最大3A 必須ではない 必須ではない 必須ではない
15~27W 最大3A
27~45W 最大3A
45~60W 最大3A
60~100W 最大5A

60Wまでは所定の電圧で最大3Aまで出力し、60Wより大きい場合にのみ最大5Aの給電を行うというのが基本的な仕様になっています。

Revision 1.0は?

『Revision 2.0/3.0は分かったけど、Revision 1.0は?』と疑問に思う方もいるかもしれませんが、現在ではほぼ見かけない仕様なので、あまり気にする必要はありません。

一応説明しておくと、Revision 1.0では出力をPower RulesではなくProfileと呼んでおり、その仕様は以下の通りとなっています。

Revision 1.0
出力 5V 12V 20V
Profile 1 (~10W) 最大2A なし なし
Profile 2 (~18W) 最大1.5A
Profile 3 (~36W) 最大3A
Profile 4 (~60W) 最大5A 最大3A
Profile 5 (~100W) 最大5A

鋭い方はお気づきかもしれませんが、1.0と2.0/3.0では使用する電圧が違います。(1.0の12Vは2.0で9Vと15Vの2つに分かれた)

一部のサイトでは『USB PDは5V・12V・20Vの電圧で~』といった解説がされていますが、その情報はRevision 1.0に基づく古いものであるため、そのことに留意して読む必要があります。

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USB PDを利用するには

3A以下の電流を流す場合 (≒60W以下の場合)

端末と電源の2つがUSB PDに対応している必要があります。

ケーブルも対応したものを用意する必要があるように思えますが、ちゃんと規格通りに設計・製造されたC to CケーブルであればUSB PD対応を謳っていないものでも動作します。

3Aより大きい電流を流す場合 (≒61W以上の場合)

端末・ケーブル・電源の3つ全てが3Aより大きいUSB PDに対応している必要があります。

3Aよりも大きい電流を流す場合、端末と電源に加えてケーブルにも『5Aの電流に対応しているか』というチェックが入ります。そのため、対応していないケーブルを使った場合ではチェックをパスできないため、たとえ端末と電源が3Aより大きい電流に対応していたとしても、3A以下のUSB PDとなります。

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粗悪品が存在している

うまく使えれば便利なUSB PDですが、一部の製品は設計不良により機器の破損を招いたり、正しく動作しなかったりする場合があるようです。

ACアダプタ

一部のACアダプタでは、USB PDの通信で設計以上の出力を通知してしまう設計不良が存在しています。

例えば以下のACアダプタは、30W出力が謳われているにも関わらず、実際にはUSB PDの通信で『45Wまで出力できる』と通知する設計不良品です。

このACアダプタはMacBook(12インチ)と組み合わせて使う分には恐らく問題ありませんが、MacBook以外の “31W以上を消費する製品” と組み合わせて使用した場合、設計以上の負荷が掛かって機器が破損する恐れがあります。

ケーブル

いくつかのケーブルではうまくUSB PDのネゴシエーション(認証)が行われなかったり、機器の破損を招くような重大な設計ミスが存在しているようです。(主に日本未発売の海外製品)

そういったケーブルはUSB PD対応機器のみならず、USB Type-Cデバイス全般を破損させる恐れがあるため、購入したり使用してしまわないよう注意する必要があります。

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USB PD対応製品まとめ

主に日本で発売されている製品の規格適合・不適合をまとめました。

ACアダプタ

○が “完全にor概ね問題なし” 、△が “Power Rulesに欠陥あり” 、✕が “致命的な欠陥あり” です。

規格適合 メーカー/ブランド 製品名/型番 USB PDでの出力 (最大値) Amazon.co.jpリンク メーカー製品ページ レビュー 備考
Apple 29W USB-C電源アダプタ (MJ262J/A) 14.8V / 2.0A Apple GTrusted 通知しているPDOが5V-2.4Aと14.8-2Aのみ
61W USB-C電源アダプタ (MNF72J/A) 20V / 3.0A Apple 5Vの出力が2.4Aまで
87W USB-C電源アダプタ (MNF82J/A) 20V / 4.3A Apple 5Vの出力が2.4Aまで
Anker PowerPort+ 5  [ブラック] (A2053111) 20V / 2.25A Amazon.co.jp Anker Nathan氏 Split PDO / 外装の記載は最大30Wだが、実際に通知しているPDOは最大45W
PowerPort+ 5  [ホワイト] (A2053521) Amazon.co.jp Anker
PowerPort Speed 1 [30W] (A2014112) 15V / 2.0A Anker HANPEN-BLOG 通知しているPDOが15Vではなく14.5V
PowerPort Speed 1 [60W] (A2015111) 20V / 3.0A Anker Nathan氏 15VのPDOで通知している出力が2A
Aukey PA-Y7 Aukey Nathan氏 理由はソース元を参照のこと (書ききれないため)
Google 18W USB-C 電源アダプター 9V / 2.0A Google
iVAPO 65W USB Type-C ACアダプタ Amazon.co.jp HANPEN-BLOG CC Bridged / 外装の記載は最大65Wだが、実際に通知しているPDOは最大60W
Nintendo HAC-002(JPN) 15V / 2.6A Amazon.co.jp Nintendo (株)メディアロジック 通知しているPDOが5V-1.5Aと15V-2.6Aのみ
RAVPower RP-PC017K Amazon.co.jp Nathan氏 30W出力で設計されているが、端末側には45Wまで出力できると通知している
RP-PC017B Amazon.co.jp Nathan氏 同上
RP-PC018 Amazon.co.jp RAVPower Nathan氏 同上
UGREEN 30W USB-C PD充電器 (CD127) Amazon.co.jp HANPEN-BLOG 30W出力と謳われているが、実際に通知しているPDOは最大45W
Xiaomi ZMI 45W USB PD充電器 (CDQ02ZM) 20V/2.25A Xiaomi HANPEN-BLOG Quick Charge 3.0対応
ミヨシ IPA-C01/BK Amazon.co.jp
IPA-C01/WH Amazon.co.jp

ケーブル

USB PD対応が公式に謳われているケーブルです。

規格適合 メーカー/ブランド 製品名/型番 USB PD データ転送 長さ Amazon.co.jpリンク メーカー製品ページ ソース
Apple MLL82AM/A 5A USB 2.0 2m Apple Nathan K.氏
Apple (Belkin) HHSN2ZM/B (F2CU023yw1M-WHT) 3A USB 3.1 Gen2 1m Apple Nathan K.氏
Belkin USB認証品 F2CU030 3A USB 3.1 Gen2 1m Amazon.co.jp Belkin
BUFFALO USB認証品 BSUCC312P05 5A USB 3.1 Gen2 0.5m Amazon.co.jp BUFFALO
ELECOM USB認証品 U2C-CC5Pシリーズ 5A USB 2.0 0.5~4.0m Amazon.co.jp ELECOM
USB認証品 USB3-CCPシリーズ 3A USB 3.1 Gen2 0.5m / 1.0m Amazon.co.jp ELECOM
USB認証品 USB3-CC5Pシリーズ 5A USB 3.1 Gen2 0.5m / 1.0m Amazon.co.jp ELECOM
J5 create USB認証品 JUCX01 5A USB 3.1 Gen2 0.7m Amazon.co.jp J5 create Nathan K.氏
JUCX03J 5A USB 3.1 Gen1 0.9m Amazon.co.jp J5 create Nathan K.氏
JUCX03 Amazon.co.jp
Plugable USB認証品 USBC-C100 3A USB 3.1 Gen2 1m Amazon.co.jp Plugable Nathan K.氏
StarTech USB31CC1M 3A USB 3.1 Gen2 1m Amazon.co.jp StarTech
サンワサプライ USB認証品 KU-CCP5シリーズ 5A USB 2.0 1m / 2m サンワサプライ
USB認証品 KU30-CCP3シリーズ 3A USB 3.1 Gen1 1m / 2m サンワサプライ
USB認証品 KU31-CCP310 3A USB 3.1 Gen2 1m サンワサプライ
USB認証品 KU31-CCP510 5A USB 3.1 Gen2 1m サンワサプライ

MacBook (2015)に同梱されていたUSB PD対応ケーブルはAppleによる自主交換が発表されています

欠陥品は型番が “MJWT2AM/A” で、改良品は型番が “MLL82AM/A” に変わっています。Appleストア以外の小売店では未だに欠陥品の在庫が残っている可能性もゼロではないため、購入する際は注意してください。

モバイルバッテリー

メーカー / ブランド 製品名 / 型番 容量 出力 (最大値) Amazon.co.jpリンク メーカー製品ページ ソース 備考
ASUS ZenPower Max 26800mAh 20V / 3.0A ASUS Shop
Razer Razer Power Bank 12800mAh 20V / 2.25A Razer
RAVPower RP-PB058 26800mAh 20V / 1.5A Amazon.co.jp RAVPower Nathan K.氏 付属のACアダプタに設計ミスあり
RP-PB059 20100mAh 20V / 1.5A Amazon.co.jp RAVPower

Split PDOとは

Split PDOというのは、 “充電開始直後としばらく経過した後で、端末に伝達されているPDOが異なっている状態” のことを指します。

例えばAnkerのACアダプタ A2053111は、充電開始直後は5V/3A、9V/3A、15V/3Aの3つのPDOを端末側へ伝達しているものの、その後5V/3A、9V/3A、15V/3A、20V/2.25Aという4つのPDOを通知しているそうです。(ソース:GTrusted)

このSplit PDO自体はUSB PDで認められた挙動であるものの、正当な理由なしに実装しているACアダプタがほとんどであるため、Benson氏やNathan氏は問題視しているようです。

所感

ケーブルは良品が増えてきましたが、ACアダプタの方がまだまだといった感じです。

参考

USB Type-C Cable and Connector Specification 1.2
http://www.usb.org/developers/docs/

USB Power Delivery Specification Revision 3.0 V1.0a
http://www.usb.org/developers/docs/

Nathan K.
https://plus.google.com/102612254593917101378

Benson Leung
https://plus.google.com/+BensonLeung

GTrusted
http://gtrusted.com/