「もの忘れ」と「認知症」の境界線は○○ これを忘れるとヤバい…

 人の名前が思い出せなくなったり、物をしまった場所を忘れたり。一見紛らわしい、老化による「物忘れ」と認知症による記憶障害。忘れ方にはどのような違いがあるのだろうか? 好評発売中の週刊朝日ムック「家族で読む予防と備え すべてがわかる認知症2017」からお届けする。

*  *  *

「ほらあの人! 冷蔵庫のCMに出ている、若い男で」

「誰ですかね?」

「あの昔、朝ドラにも出ていた。しょうゆ顔の……」

「もっとヒントをください」

 こんなクイズ形式の会話が、年をとると増えていく。飲みの席ならば「酔っていたから」と言い訳ができるが、シラフだと「もしかして認知症かも?」と疑心暗鬼になってくる。

 では、老化によるもの忘れと認知症の境界線はどこにあるのだろうか。

 両者とも記憶に不具合が起こっている点は同じだ。その違いは、ヒントによって思い出せるかどうか。老化によるもの忘れならば、通帳を「どこにしまったか」を忘れても、「書斎の机の中だったよね?」と言われると思い出せる。しかし認知症は、「しまったこと」自体を忘れているので、人に教えられても思い出せないのが特徴だ。

 この差は、記憶のどの段階に問題が起こるかによるものだ。記憶には、1.覚える→2.保持する→3.引き出す、という三つの過程がある。加齢によるもの忘れは、3の引き出す機能が衰えることで起こる。頭の中にある膨大な情報から的確な内容を呼び出せなくなるのだ。ただし記憶自体は残っているので、きっかけがあれば「あ、そうだった!」と思い出せる。しかし認知症は、1.2にも障害が起こるので、記憶自体がなくなる。

“忘れる対象”にも違いがあると、認知症専門医であるお多福もの忘れクリニックの本間昭医師は話す。

「テレビで見たタレントの名前を忘れるなど、人の名前や地名といった『固有名詞』を忘れるのは老化なので心配いらないでしょう」

 冒頭のような会話ならば、老化の範囲内ということだ。

 しかし、テレビを見たという「体験」を忘れると認知症の可能性が高くなる。表で違いをチェックしてみてほしい。たとえば、手紙に書いた内容を忘れるというような記憶の一部を忘れるのは老化だが、手紙を書いた記憶をまるごと忘れるのは認知症の可能性がある。「もの忘れの度合いが自分で客観的にわかる段階は健康な状態です。認知症は忘れている自覚がないので、独居の方は気づきにくいのです。ただし記憶は、ストレスや飲酒、体調などによっても影響されます。もの忘れがあったからといって過度に心配しすぎずに、まずは生活に支障があるレベルかどうかで判断しましょう」(本間医師)

 もの忘れは誰にでも起こり得る。「もしかして」に備える判断基準を持っておきたい。

<もの忘れ>

・ドラマに出ていた俳優の名前を忘れる

・小説の主人公の名前を忘れる

・知人の名前を思い出せないが、ヒントをもらえば思い出せる

・財布をしまった場所を思い出せない

© Asahi Shimbun Publications Inc. 提供

・買い物に行って卵を買い忘れる

・友人との待ち合わせで、時間や場所を忘れる

・洗濯機に洗剤を入れ忘れる

・手紙に書いた内容を忘れる

・電話で聞いた内容を忘れるが、メモを見れば思い出す

・買い物に自転車で行き、置いた場所を忘れる

・夫婦で旅行に行った年や場所が思い出せない

<認知症>

・ドラマを見たことを忘れる

・小説を読んだことを忘れる

・知人の名前を思い出せず、ヒントをもらっても思い出せない

・財布をしまったことを忘れている

・買い物に行ったことを忘れて、卵を何度も買ってしまう

・友人と待ち合わせしていることを忘れる

・洗濯機の操作方法を忘れる

・手紙を書いたことを忘れる

・電話で聞いた内容を忘れ、メモを見ても思い出せない

・買い物に自転車で来たことを忘れて家に帰る

・夫婦で旅行に行ったことを忘れている

※週刊朝日 2017年8月11日号

 
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