魚のすり身や野菜をコロッケにした津久見市の名物「太田のぎょろっけ」 津久見市のソウルフード「太田のぎょろっけ」が味や製法を引き継ぎ、新たなスタートを切っている。後継に悩んでいた老舗の製造会社「太田商店」を、市内の水産加工会社「カスガ水産」が事業継承した。きっかけは、市内外のファンから愛される味を守り、伝えていきたいとの思いだった。 太田のぎょろっけは、新鮮なスケトウダラやエソなどのすり身に野菜をたっぷり加えて作る魚のコロッケ。市内港町に店を構えていた同商店が70年以上前に開発した。唐辛子の辛みや濃い味付けが特徴で、酒のつまみから子どものおやつまで幅広く食卓に登場。贈答やゴルフコンペの景品などにも愛好されていた。 ただ、後継者の不在や従業員の高齢化などで商店は廃業の危機に。名物が窮地に陥った昨年度、カスガ水産が「地元の味を守りたい」と名乗り出て、会社と事業を引き継いだ。 長年使っていた石臼など機材一式やレシピなども同時に引き取り、市内千怒に工場を新設。従業員3人がフル稼働で製造し、4月から市内高洲町の物産館「うみえーる つくみんち」などで1個110円(税込み)で販売している。 「魚がおいしい津久見ならではの味を受け継いでくれてありがたい」と話すのは、商店を経営していた太田恵子さん(59)。うみえーるにぎょろっけを買いに来た市内の女性(32)も「なくなるとうわさがあり、心配していた」と胸をなで下ろす。 カスガ水産は新商品の開発や工場見学などを検討しており、三木繁社長(47)は「ぎょろっけの知名度や味を生かし、おいしさをさらに広めたい」と話している。