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10 Apr 2013 01:13
Hatena::ブログ(Diary)

オススメ系美少女ゲーム形

2013-04-09

エロゲのボリュームアップのネガティブな影響についてAdd Star

フルプライスエロゲの平均プレイ時間は1本あたり20時間 - spring efemeral

う~ん、久しぶりですね。
色々書いてたけど、消しましたからね。日付的にはかなり経ってるように見えます。これも消すかも。

プレイ時間が20時間。
まあ、これはいいんですが、ここで話したいのは「ボリュームが与えるエロゲ業界に対するネガティブな影響」についてで(ポジティブな影響は言うまでもなく、「顧客満足度が上がる」というもの(と言われています))。

ボリュームインフレーションという死神エロフィギュア&エロ漫画 レビュー 【乳之書 】
死神とまで強い表現で言い表している鏡裕之氏の言葉です。

エロがなくなることはないだろうが、5年後には、エロゲーは事実上「死」の状態を迎えているかもしれない

2002年がエロゲ業界最盛期だったことを考えると、早くも鏡氏はエロゲ業界の衰退を実感していたのではないでしょうか。市場規模が半分になったことを考えるとこの予言は相当当たっているのではないかと。
ボリュームインフレーションエロフィギュア&エロ漫画 レビュー 【乳之書 】

問題は、ボリュームインフレーションがすでに制作者の首を絞め、ユーザーの首も絞め始めているということだ。プレイする時間はないのに、ゲームのボリュームはどんどん増えていく。消化する時間はなく、買うだけ買って積んであるだけのゲーム(積みゲーという)は増える一方。

AIR』がボリューミーになったきっかけと言ってますがこれは誤解ですね。むしろ『AIR』はかなり少ない、というより1MBぐらいしかないので。それ以前のeveやYU-NOのほうが全然多いですね。こみパは2.3MBというのだから相当なものです。
数字で見るこの界隈:その2:エロゲのテキスト量 - 萌え理論Magazine

鏡氏の提言の中で言われていることは「単純なボリュームアップは別にカスタマーは望んでいない」「ボリュームアップは自分の首を絞めること」という二つのことが大きいです。
このボリューミーという戦略。どこか戦艦大和を思い出させるというか・・とにかくでかきゃいい! っていう。こういう思い込みは、とっくに戦略のフレームワークが変わっていた・・なんてことになりかねませんね。

2004年の頃からボリューミー戦略の欠点を言っているというのはかなりの慧眼です。そして、2013年minorinbkz氏の話から「なぜエロゲ業界は衰退したのか?」という中で注目された問題の一つが、「ボリュームではないか?」ということでした。
エロゲに必要だったのは本当にボリュームなの? - Togetter

twitterの正しい引用機能を使えない(よね?)なので、長く引用はしませんが、そこで言われていたのは多くの人が「ボリューミーであることが必要だ」とは考えて「ない」という現実でした。
これは注目に値します。
みんなが「これはないよね・・」と思ってるのに、どんどん進んでしまう・・。
そんなこと、会社や大学のサークルでありませんでした? そんな話を読んだり聞いたりしたことはありませんでしたか?
誰もが気づいているのにやめられない・・そして結局、本当に駄目になってしまった。そんな話は割りとよく聞く話です。これがそうなのかどうかは分かりませんが・・。

toggeterの中で橘ぱん氏が『ラノベ二冊分』と「エンタメとして作品を良質にする方向が違う」ということを言われていました。これこそ至言です。
例えば映画ですが、50年前の1962年アカデミー賞作品賞アラビアのロレンス』は上映時間207分でした。それから、映画はどうなりましたか? 「作品をよくするためにボリュームアップを図り」上映時間は700分くらいになりましたか? 2012年のアカデミー賞作品賞アルゴ』は120分です。映画は産業として衰退しましたか? 顧客は「映画社員は努力してない。もう見ないわ」とか言いましたか?

2012年、米国の映画興行収入は史上最高記録に・・・ : ニューヨークの遊び方
史上最高の興行収入ですよ。その年間トップの『アベンジャーズ』は上映時間143分で6億2300万ドル稼ぎました。今ドル98円で610億5400万円です。2012年のエロゲの「市場規模」は矢野経済研究所によれば220億円です。
つまり、『アベンジャーズ』一本で、エロゲ業界2.7年分です。

これが映画だ、と。まあ、爆死フラグ立てながらそれをぶっ壊してトップに輝いた力は素直に称賛すべきでしょう。

話は飛んで、
エロゲのボリュームってどう思うよ?(個人的意見その3): ああかむゲーム制作日記

『内容のボリュームから制作費を算出→8800円』という商品価格をつけていたのが、
『8800円の価格に見合うボリュームでゲームを作る』という形に変化します。

こちらでも重要な示唆が挙げられています。これは、価格に吊り合うように「努力が発生」していることを指します。
これは、鏡氏の提言にも関わってきます。
ボリューム・デフレーションエロフィギュア&エロ漫画 レビュー 【乳之書 】

思い出すがいい。8年前の1998年は、シナリオ容量250KB、背景や差分を含めてCG枚数120枚のソフトを6800円で売っても、誰も文句を言わなかったのだ。シナリオ容量500KBのソフトを7800円で売っても、「少ない!」という怒りの声はなかった。

鏡氏は「ボリューム」に関する提言が多いので、あと何回か引用しますが、これも非常に重要な指摘です。人は慣れてしまうと、以前の状態を簡単に忘れます。それは人に必須の機能だから仕方ないのですが、そのことが重大な間違いを引き起こしてしまうこともあります。
インフレーションという単語で表現されるほどの暴騰するテキスト量。そのことが引き起こすポジティブな面ばかりを見て、ネガティブな影響をまったく考慮しないことに、危うさがあることは否定しえません。そして、いつの間にか、「ボリューム」が「作品の評価」を左右する風潮が出来上がってしまいます。

自業自得のボリューム・インフレーションエロフィギュア&エロ漫画 レビュー 【乳之書 】

エロゲーバブルが崩壊し、1タイトルあたりの売り上げが低下していったとき、経営者や作り手たちが飛びついたのが、「ボリューム」という非常にわかやりすい指標だった。ボリュームをあげるのは、比較的簡単なアピールに思えたのだろう。

鏡氏が書いた長年にわたる「ボリューミー」がもたらすエロゲ業界へのネガティブな影響に関する言葉は引用する価値があります。
ここでは、ボリュームというのが「カスタマーからの要望」ではなく「自社の生存戦略としての経営戦略だった」ことが指摘されています。これは容易に切り離せない問題ではあります。しかし、それは相互に影響しあって、企業と顧客は存在しています。そして、同時に企業はこの時「イノベーションのジレンマ」を抱えます。
「顧客が○○って言ってるから・・」そう言って、いつまでも顧客の言うとおりになっていることは成長の機会を根こそぎ奪うことになります。それはもはやカスタマーの発想と同じわけです。
ボリュームを上げることは、いわば一番安易な道です。目の前の店がコーヒー120mlを100円で出してやがる。じゃあ、うちは200mlを100円で売ってやる。いや、うちは300mlで100円だ。
こんな商売、果たして上手く行くでしょうか? それは映画にも適用できますし、本にも適用できます。
上映時間1000分の超々大作だ! 誰も見ませんよ。
5000ページの大々々著だ! 読め! 誰も読みませんよ。

ここでイノベーションの大家ジョブズから引用。ホントは一つだったんだけど、ちょうどいいのが見つかったので二つ。
【アップル】スティーブ・ジョブズの名言集 - NAVER まとめ
まずひとつは「カスタマーの言うとおりに製品を作ってればいい」という間違いについて。

製品をデザインするのはとても難しい。
多くの場合、人は形にして見せてもらうまで,自分は何が欲しいのかわからないものだ

顧客は自分が欲しいものなんて分かりませんよ。一体誰が『AIR』以前に「『AIR』みたいなのを読みたいな~」なんて思ってましたか? 君望に衝撃を受けたのは、それが「全く予想外の作品」だったからでしょう。「先輩キャラにツンデレ・・忘れずに妹キャラ入れてね。良い感じにギャグとイチャラブブレンドして。適当に各ヒロインにトラウマっつーか、悩み事与えて、主人公がさくっとそれ解決するプロットつけてよ。あ、それとジョジョネタ使ったギャグも入れといて。なんでかって? アンケートにあったからだよ。」
ここで重要なのは、カスタマーは「自分の欲しいものが分かってない」ことを「分かってない」です。自分が欲しいものは絶対に「これだ!」と思ってます。それを要求してさえくるし、そうでなかったら反発すらするでしょう。しかし、飛躍にはそれが必要なのです。Appleがいまだに昔のMacBookiMacのままでよかった、なんてことがあるでしょうか?(しかも厄介なことに「これはダメそうだ」と一度思うと、次に「やっぱりよかった」というように認めることは人間かなり難しいのです。「認知的不協和」と言いますが、「自分が間違っていたことを認めることは難しい」のです。これはいわば本人に意志なく引きずられる結果ですね。なので、制作者さんもあまり重く受け止める必要はないのかな、とは思いますね)

こちらは見てから思い出し、ぴったりだと思いました。

美しい女性を口説こうと思った時、ライバルの男がバラの花を10本贈ったら、君は15本贈るかい??そう思った時点で君の負けだ。ライバルが何をしようと関係ない。その女性が本当に何を望んでいるのかを、見極めることが重要なんだ。

どこかで聞いたことのある話ですね。これは上の言葉と関連があります。つまり、ここでいう「女性」は「何がほしいのかなんてわかってない(ことをわかってない)」んですよ。上のたとえに続ければ「女性」に「君は何がほしいの?」なんて聞いた途端、口説くことは失敗に終わるでしょう。



さて、いくつか伏線をばらまきつつここまで突っ走って来ました。まだまだ行きましょう。

  • 「ボリュームアップは自分の首を締めることになる」

これにはいくつか説明が必要でしょう。
「ボリュームアップを善」とする考え方に対しては、「ボリュームアップをしないでも莫大な売り上げを上げている実績」を参照しました。映画界と本ですね。
とりあえず、それに付け加えれば、ゲーム業界ですね。まあ、こちらも日本のゲーム業界に関しては色々言いたいことがある(というか言った(もう消したけど))んですが、それはスルーして、Call of Dutyという今最も成功しているフランチャイズの話をしましょうか。
4Gamer.net ― 「Call of Duty: Black Ops 2」が発売後24時間で5億ドルの売り上げを達成。歴代最高,4年連続トップ,エンターテイメントジャンル史上最高
文句なしの成功例でしょう。これだけのフランチャイズの成功に導ける人材が果たしてこの国にいるのか・・つーかいないから、アメリカで実現してるんですが。
それはともかく、このCoD。オフとオンがありますが、無論オフのキャンペーンの話で、こちら、キャンペーンについての評判で、過去制作側がキャンペーンのボリュームに全く無頓着だったとは言いません(前作と同等だ、ぐらいの話はしています)。しかし、それが主眼だったことがあったでしょうか? また、キャンペーンに関する評価において、「今作のキャンペーンは長かったから(短かったから)よかった(悪かった)」などという短絡的な評価を聞いたことがあるでしょうか? アマゾンレビューとかのどこの誰とも知れない人のじゃなくて、IGN等の署名つきレビューです。また、「扱える銃器の量が増えたよ!」ということを主眼にしていたりするでしょうか。そのような「単純なボリュームアップ」だけでフランチャイズを支えていたりするでしょうか。
洋ゲーにも大作志向、しかもそれは「大=プレイ時間=作志向」とでも言いうる影は忍び寄っているように思います。しかし、それはまだ表面化している問題ではありません。
ここで言いたいことは、これだけの実績を上げているフランチャイズにおいても、映画や本と同様に「ボリュームが成功の秘訣」などという結論には終わっていないという点です。

以上はいわば、間接的な批判ですが、次に「ボリュームアップすることによる直接的な影響」を考えてみましょう。ここではその「単会社」的影響と「業界」的影響が考えられます。当たり前ですが、全ての会社はお互いに影響を及ぼし合って、全体の業界が成り立っています。
まず一つ言えることが「際限がなくなる」ということが言えます。1,2,3...数はいくらでも増やせます。しかし、コストは有限です。必ず破綻する点がきます。そして、それが一会社でやってればいいんですが、業界全体がその方向性を目指すことを始めたことにより、それはより大きな問題となって跳ね返ってきます。
鏡氏は一部の大手が膨大なシナリオを作り、それに追随することに危険を促している。

わずか数社の大手の真似をする必要はなかった。真似をせず、自分たちは自分たちのボリュームレベルで戦っていればよかったのだ。ところが、自分たちの資金力を超えて、ボリュームをあげすぎてしまった。

自業自得のボリューム・インフレーションエロフィギュア&エロ漫画 レビュー 【乳之書 】
これは一社的な影響である。しかし、それが「本当に」全体にまで波及した時、新たな問題が浮上した。顧客の側にその影響が出たのである。

それが先ほどのtogetterで出た多くの「長すぎる」という意見です。
すでにユーザが「長い」と感じている。それは顧客満足度ネガティブな要因である。
さらに、大きな影響をもたらしたのが「消費する時間がない」という問題。
これはソーシャルゲームという新たな業界が出てきたことによる、面白い転回ですね。
耳にタコですが、ソーシャルゲームの勝利要因として「作業時間が短い」ということが考えだされました。それが当たっているのか外れているのか知りませんが、そう言われることで、いわば重厚長大なゲームに対する見方が変わって来ました。
これはパラダイムの転換とでも言うべき新しいフェイズでした。
そして、そのような新しい思考のフレームワークにそって考えてみることによって、恐らく「エロゲは長すぎる」という意見を「思いついた」人がぽつぽつ出てきたのでしょう。

しかし、これは映画では常識です。
映画では、客の回転率を上げるために上映時間を短くするという改変が作品に施されることがあります。そして、DVD等ではディレクターズカット版として、上映版よりも長い映画が収録されることになります。
つまり、長い映画は単体で言っても「長くて疲れる」し、そういう映画ばかりになったら今度は「映画全体の消費本数」も下がるんです。普通の映画が一本1000分かかるような世界だったら、映画の消費本数は今の半分以下でしょう。
つまり、ボリュームアップすることは、

  • 個々の企業にとっては合理的な選択だが、全体からすると結局は不合理

な選択です。
これを鏡氏は『消化する時間はなく、買うだけ買って積んであるだけ』という言葉で八年前に指摘していました。積みゲーはよく言われていましたがそれが「業界全体の消費本数の低下に作用する」ことまで踏み込んだ指摘は稀だったでしょう。
これが最初の鏡氏の言った「自分の首を絞める」ことです。企業は利益を上げる行動に出ていたはずが、いつの間にか反転しているということです。
(ところで「エロゲー批評空間」にはPOVで「長すぎる」と「短すぎる」というあまりにも短絡的なPOVがありますが、「批評」と名乗るサイトならこのような無意味な価値観が「評価」につながるような言葉の使用は避けるべきだと考えます。このPOVを見せられる度に、徐々にカスタマーの中で「ボリューム」に関するフレームワークが形成され、それが「批評(評価)」につながる(つなげてもいい)という意識が作られてしまっていることも一助になっているのではないかと思います。言うまでもなく、作品が長いか短いかで「批評」できるなどということは全くの間違いです。)

  • 「顧客はボリュームアップを望んでいる」→「それは安易な解決だ」

先ほどはコーヒーの例として言いました。ここでは簡単にいわゆる創作論では常識の「推敲とは削ること」ということを挙げておきます。(言葉に携わっている)クリエイターなら必ず知っているこの常識。顧客の中には知らない人も多いでしょう(彼らはクリエイターではないのだから当然といえば当然)。
もしかしたら、カスタマーは「作品がよくなること=ボリュームアップ」という風に考えている可能性もあります。これは全くの悪意のない行動ですね。
カスタマーはこう思ってるかもしれません。
「このブランドの作品はよかった。次はもっといいものをプレイしたい。そうだ。アンケートでボリュームアップを要望しよう」
彼の中では「ボリュームアップ=作品の『質』の向上」という図式を何の疑いもなく運用しています。クリエイターは当然、「そうか・・ボリュームが足りなかったのか・・」と思うことになります。しかし、ここで悲劇的な誤解が生じています。

カスタマーは本当にボリュームアップを望んでいるのか?

  1. カスタマーはボリュームアップという言葉を「質」の向上として使っている。なぜか。
  2. ボリュームアップとは「一番安易な解決(向上方法)」である。
  3. カスタマーはわざわざ一番独創的な解決(向上方法)を送ってくるだろうか?
  4. むしろ、カスタマーは「一番安易な解決(向上方法)」を送ってくるものではないだろうか?彼らはクリエイターではない。
  5. カスタマーはボリュームアップをすることが『質』の向上につながるという誤謬に気づいていない。
  6. ましてやボリュームダウンが『質』の向上につながるなどということは考えられない。「ボリュームダウン=怠慢」とすら考える。
  7. ボリュームは「質・面白さ・感動体験」とは何の関係もない。

カスタマーは『質』の向上を求めている、と書きましたが、言い換えれば「感動体験」とでも言えばいいのでしょうか。「いい作品だったな」と思いたい。それがカスタマーの望みではないでしょうか。

アンケートがあります。「要望があったら送って下さい」。なるほど。『もっと感動体験を与えてくれるシナリオを作って下さい』これはいまいちだな。どうすりゃいいかな。そうだな・・やっぱりもっと長い話のほうが『よく』なるんじゃないかな・・よし、『ボリュームアップしてください』・・っとこれでいいだろ。

これはどちらが悪いというものでもありません。カスタマーは聞かれたから、思いつく限りの改善策を挙げ、クリエイターはそれに答えたまでです。しかしボリュームアップは「作品の『質』の向上」にはつながりません。結果、カスタマーは不満を抱き、クリエイターは言われたとおりに作ったのに文句を言われてフラストレーションを抱える羽目になります。
では、どうすればいいでしょうか? カスタマーを教育しますか? 「物語(テキスト)というのは削れば削るほどよくなるのであって、推敲の段階では水増しするのではなく、不要な箇所を削除するのが常識なのだ。それと、次回作への要望の際は、オリジナリティに富んだ独創的なストーリー展開と、魅力的なキャラクターをそれぞれ10パターン作り上げ、提出しろ」ナンセンスですね。
無論、結局はクリエイター側の「向上」が求められます(だからと言ってカスタマー側にあらゆる暴虐な行動が許されるわけでもありませんが)。


さて、以上で鏡氏関連の提言の展開を終わります。
次は思いつきです。こんな風になったら面白いかも?という話です。自己責任で読んでね。

先ほどのtogetterで橘ぱん氏が『ラノベ二冊分』と『イベントシーン盛り上げる演出を豪華にした方がエンタメとしては正しい気がする』と述べていました。(エロゲに必要だったのは本当にボリュームなの? - Togetter
これに妙にぴんとくるものがあり・・この発言でかなり「ボリュームアップは間違っている」という思いを強くしました。
さらに言えば、ラノベ二冊分?いいじゃない!ということです。
つまり、エロゲラノベ二冊分でいいんじゃないの?ということです。

俗説があります。

  • ライトノベルはシリーズだから続くのであって、ゆえにボリューム感が出せるのだ。ラノベは一巻ごとに分割してても顧客は買ってくれるが、エロゲは分割されてると顧客は買わない。

これは間違いです。どこが間違いか?
ラノベが分割』という部分です。大きな間違いです。
ラノベは「分割されてません」。ラノベはちゃんと「一巻完結」で作られています。
電撃文庫などでは分割される際は(上中下)という表記がつくのが普通です。つまり、これがついてない巻は基本的に「一巻完結」ということです。
そもそもすべてのラノベが10冊20冊出すことが前提で一冊目が作られているのでしょうか? 違いますね。一巻の売り上げ、もしくは二、三巻の売り上げで続きが決まります。五巻まできてやっと面白くなってきた・・なんてことはやってないわけです。
さらに言えば、(上中下)というのは嫌われます。ラノベにおいてはこれだけでネガティブな評価を受けることすらあります。つまり、ここで真実なのは「(エロゲラノベで)分割は嫌われる」ということだけです。

  • ラノベは話が主眼である。エロを入れると長さが足りない

確かにエロシーンはそれだけで容量をとられます。しかし、美少女文庫など、エロありでラノベチックな話を文庫形式で出してる例はあります。

橘ぱん氏の言う通りに500KBで考えてみましょう。
現行ではエロゲ業界で言われているのは1KB=1000円というなんとまあという賃金体系です。これでは水増しすることにインセンティブが働くからテキストも長くなるわけですよ。まあ、これを利用させてもらって、500KBで考えれば500,000円です。
2MB=200万円。
500KB=50万円。
75%のコストカットができました。
価格はどうしましょうか? 低くする? いえ、そんなことはしません。フルプライスです。なぜなら、これはラノベではなく、エロゲだからです。十何年前から価格は変わらないのです。作品に対する価格とは「恣意的なもの」です。絵も声も音楽もつくんだから、これぐらいの値段は当たり前です。
8800円(店頭価格7000円前後)。
ところで現行のエロゲ損益分岐点は何本でしょうか。nbkz氏の言う制作費3000万円とすると、
3000万/(8800-4400(流通取り分))=6818
リアルな数字が出てきました・・。
では、上のようにテキスト同率でコストカットできるとしましょう(かなり甘め)。75%カットで、
450万/(8800-4400(流通取り分))=1022
1023本売り上げがあれば黒字です。上記は「これでイケる!」ではなく、「考えてみた」です。「演奏してみた」的な。

一本で終わりか? そんなわけありません。
もし第一弾で「イケる!」となれば、第二弾、第三弾と続きます。つまり、「ラブ・あぐりげーたー」の次は「ラブ・あぐりげーたー II」「ラブ・あぐりげーたー III」となります。イメージはラノベと全く同じです。一巻、二巻、と重ねるように重ねていきます。
「難しいだろ・・」と。それは承知です。単にラノベにエロを入れたのでも、ジュブナイルポルノとも違う何かです。しかし、イノベーションなくして何がクリエイターでしょうか?

もちろん一巻ですべての登場した女の子とエッチできるわけではありません。それは「売り上げがよかったら次の巻か(別の女の子になるので)その次の巻で」ということです。あるいは、新規キャラとのエッチということになるかもしれません。それは売り上げと話の流れ次第です。
今のように一巻(一本)になんでもかんでも詰め込もうとするからどんどんボリューミーになってしまうのです。「売れたら次巻で○○ちゃんともエッチできる可能性あるかもよ?」ということです。「買ってもらえないなら、これで終わりだな~」ということです。

人気が出たら? どんどこどーん。一巻に登場した、サブキャラがついに第七巻(弾)でヒロインに昇格! 正妻戦争がさらに激化! なんてね・・

お気づきになったでしょうか? マルチエンドではないですね!

しかし、「エンド」とは何でしょうか?
ラノベは基本的に「一巻完結」です。いつでも打ち切りを食らう厳しい世界です。
エロゲがそうなってはなぜいけないのでしょうか?
つまり、第五弾ぐらいまで予定して、最後の弾でマルチエンド・・(まあせいぜい誰とくっつくか程度)という選択肢。
一巻の中で複数のエッチする相手を選べ、終わりの本筋は一本に戻るというもの。
形態は色々考えられますが、これは今までのエロゲとは全く違うレベルデザイン(ビジネス)です。それぐらいの話をしています(考えてみた、ですが)。そもそも、なぜ『マルチエンドでなきゃいけない』んでしょうか? 誰が決めた? 総理大臣

「ボリュームダウン=分割」というのが発想が違います。
ラノベは一巻一巻厳しい読者の目で吟味されます。勝負しているバイト数は200~250KBです。ジュブナイルポルノも同じです。エロゲは2MBも使ってます。
ボリューミーなことは偉くもなんともありません。逆です。短くまとめることこそ非常に重要な才能です。(『CLANNAD』やほかの長くてよい作品がなぜ素晴らしいのか? それは「話が長いから素晴らしい」などということではない。「素晴らしいから素晴らしい」。ただそれだけである)
「250KBのラノベの一巻を2MBまで膨らませて」プロの手なら不可能ではないでしょう。あれやこれやの展開、日常シーン(いちいち全員に挨拶をして不必要な独白描写やら内心のツッコミやら何やら)、漫才、パロギャグやイチャイチャし続けるだけのシーンやエロシーンをふんだんに混ぜ込んで全ての登場する女の子とエッチする話を作ります(ラノベには結構キャラクターは多く登場します)。逆に「2MBのエロゲを250KBにして。感動度数は下げないで」これは難しいですね。
ですから、500KBで8800円で売るシナリオを作る。これが求められるのです。
発想が逆なんです。
映画は120分の映画の後に、興行成績を上げるために240分の映画を作ったりはしません。
8800円で売るためにテキスト量を増やすんじゃなく、8800円で売れる最小のテキスト量の作品を作るのです。これはシナリオライター一人の問題ではありません。エロゲーというビジネスに関わる全ての人に求められる発想の転換です。

ラノベは一冊300Pで区切ることを分割とは言いません。ちゃんと「一巻(完結)」とします。そうでない場合は(上中下)とつけます。つまり、ほとんど分割していません。
少し厳しいことを言いますが、
「ユーザが求めるからボリュームアップしました」じゃないんです。「ユーザが求めるような短くても感動できる物語を作れる力がないから、(価格に見合う満足度をこしらえるために)ボリュームで誤魔化してるだけ」なのです。
ボリュームは言い訳です。一番楽な逃げ道です。一杯(一皿)で勝負できないから、量で誤魔化す大衆酒場(レストラン)と同じです。
エロゲに必要なのは500KBとかラノベ(文庫)一冊で話をまとめる力です。
「500KBまでね」「え・・じゃあ、分割で」
違う。分割はない。
500KBで『終わり』である。

果たして、エロゲはどうなるのでしょうね。

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