常に勝利にこだわり…ジーコイズムを受け継ぐ小笠原&曽ケ端が鹿島にもたらすもの
17日に鹿島の練習場を訪れ、MF小笠原(中央)、GK曽ケ端(右)と談笑するジーコ氏 Photo By スポニチ |
鹿島の礎を築いたジーコ氏(64)が17日、約5年ぶりに古巣のクラブハウスを訪れた。チームは2日後の清水戦に向けた練習の最中だったが、その姿を見て、真っ先に2人の選手が駆け寄った。MF小笠原満男とGK曽ケ端準だった。2人は“神様”の太い腕で、子供のように抱きしめられた。
91年に住友金属へ入団し、94年まで鹿島でプレーしたジーコ氏。まだ小中学生だったGK曽ケ端にとって、ジーコ氏は当時から、そして今も特別な存在だ。「僕は住金時代のジーコを見ていますし、(Jリーグ)開幕戦のハットトリックも見ている。サポーターとして見ていたところからですから。そんな人が自分の名前を覚えてくれている、というだけでもうれしさはもちろんありますし、僕自身ぴりっとしますよね」。
小笠原もしかり。「わざわざ鹿島に来てくれることが一番うれしい」と言った上で「このチームは、まずは試合に勝つこと、そのためにみんなが一生懸命最善を尽くすこと、そうやって勝ってきたチーム。勝利っていうものを(ジーコ氏に)報告しないといけないし、ずっと強いチームでいないといけないなと思う」。ジーコ氏がクラブに築いてきたスピリットへの尊敬と愛があふれている。
ジーコ氏が住友金属に入団した年から2年後の93年。東京から100キロ離れた地にある鹿島は「99.9999%不可能」と言われた数字を覆してJリーグに加盟した。その年に、ジーコ氏はチームをJリーグ初代チャンピオンまで導いた。
「クラブを設立した時に“何年か後に戦えるチームをつくる”と言われたけど、“今年中に優勝する”と言って、1年目で実現した。私はまずタイトルを獲ることの重要性を知らしめたかった。実際、タイトルを獲ることによって、それが浸透していった」。
ジーコ氏の言葉通り、その後、クラブは今に至るまでに合計19個の国内主要タイトルを獲得。他の追随を許さないタイトルの数が、実績として表れている。そして、今もなお若い選手にまでジーコイズムが強く浸透しているのは、プロ20年目の小笠原と曽ケ端の存在によるところが大きい。どんな勝負でも勝利にこだわる。しかるべき時に静かに強く、勝つことの重要性を言葉にする。練習でも試合でも絶対に手を抜かない。そんな2人の姿勢を見て、若手も自然とそう育っていく。
自身が残した勝負への強いこだわりを継承する2人について、ジーコ氏は今回、こんなメッセージを残していった。
「昨年の試合を見ていると、彼らがもたらすチームへの安心感が、非常に大きいと感じる。チームが若くなれば若くなるほど困難な状況が試合の中にある。そういう大変な時に、ベテランの選手は“こういう時はこうやればいい”という方法論を身に染みて分かっている。そういった彼らの言葉の重みは(若い選手とは)違う。彼らがチームに影響する部分はまだ大きいと思う」
小笠原と曽ケ端はともに38歳。奇しくも、ジーコ氏が住友金属に入団し、異国・日本に常勝軍団の礎を築き始めた91年当時の年齢も38歳。時の巡り合わせを思えば感慨深い言葉だった。(記者コラム)
[ 2017年8月18日 13:00 ]
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