18歳、19歳って、どんな人たちだろう?高校生、大学生、社会人、浪人生…。NHKは、18歳選挙権の導入をきっかけに、この世代を対象にした世論調査を行っています。今回のテーマは、「平和」。18・19歳のデータと比較するため、20歳以上の成人を対象にした調査も同時に実施しました。調査結果を3人の専門家の分析とともに、見ていきます。
いきなり質問!いま日本は平和?
「平和だと思う」が多数。その理由は…
北朝鮮は脅威?
あなたは、北朝鮮による核開発や弾道ミサイルの発射について、どの程度脅威を感じますか?
>一方、中国は?
あなたは、中国の軍事力増強や海洋進出について、どの程度脅威を感じますか?
>差があるね。
【東京工業大学・西田亮介准教授】
北朝鮮と中国で「脅威」の感じ方に差があるのは、ミサイルという、具体的でわかりやすい脅威の有無が関係していると思います。テレビなど、ニュースで流れる報道の量や、発射されるミサイルそのものの映像のインパクトも北朝鮮の方がより「脅威」を実感させているのではないでしょうか。
【明治大学・藤井剛特任教授】
18歳・19歳の主な情報源は「スマホのニュース」などです。「北朝鮮ミサイル発射」や「パリで大規模なテロ発生」などは、自分の生活と直接関係なくとも、ある意味興味本位でクリックしますが、ベトナムやフィリピンでは重大な関心事となる「中国の脅威(例えば、空母を持った、南沙諸島に飛行場が建設されたなど)は、自分の生活には関係ありませんので「脅威」になりません。
>次に「平和」にとって欠かせない外交のあり方を聞いてみた。
若者は各国と「仲良くしたい!?」
あなたは、次の4つの国との関係を、今後どのようにすべきだと思いますか?
>若者の方が、より「関係を深めること」に重点を置いている。どうしてなんだろう?
【東京工業大学・西田亮介准教授】
中等教育の社会科教育、公民教育の教科書は「国際協調」を基調に書かれており、社会科教育は「国際貢献」「平和主義」を念頭に置いたものになっています。学校教育では、どこか特定の国と仲良くしなくて良いということは教えていません。こうした教育を受けて、どれだけ時間が経っているか、「教育効果」がどこまで残っているかが、差として現れていると思います。
【NPO法人YouthCreate 原田謙介代表理事】
若者の情報源はテレビ・新聞よりもSNSです。年上の世代に比べて、堅いニュースに接する頻度は少なく、歌手や芸能人など「興味・関心」のある情報により多く接しています。このため、外交についても、「国レベル」でどうかではなく、旅行での経験やネットで得た情報など、「個人レベル」の体験を元に、関係を深めた方が良いと判断していると思います。
【明治大学・藤井剛特任教授】
若者が感じる「脅威」は身近なことです。彼らにとって「謎の国」「訳の分からないこと(ミサイル発射)をする国」「ヤバい(危険な)国」は北朝鮮です。その北朝鮮に対抗するためには、どこの国とでも「関係を深めた方がよい」という考えが現れています。アメリカ→ロシア→韓国→中国と「関係を深めた方が良い」という割合が下がっていることも注目です。若者たちの「親近感」が出ています。
>次に日本にとって極めて重い意味を持つアメリカとの関係を聞いてみよう。
同盟国アメリカとのつきあい方は?
日米安全保障条約は、アメリカの日本に対する防衛義務を定めたうえで、アメリカ軍が日本で基地や施設を使うことを認めています。あなたは日本とアメリカが結んでいる日米安全保障条約は、日本の平和と安全にどの程度役立っていると思いますか
あなたは日米安全保障条約に基づくアメリカとの同盟関係を今後どうしていくべきだと思いますか
「同盟関係をより強化していくべきだ」または「現状のまま維持していくべきだ」と答えた人がそう考える最も大きな理由は
>若者の方が、「同盟関係を強化」と答えているね。理由で「防衛以外の分野でも重要」というのも特徴だね。
【明治大学・藤井剛特任教授】
「政治的中立」などの関係で、授業で「日米安保条約」の是非等、価値を伴う授業を行いにくくなっています。入試でも、淡々と事実関係を問う問題がほとんどで、高校の現場では、安保の意味や国際的な位置づけなどをキチンと教えていない傾向があります。ですから質問で「防衛義務……」などと聞かれても何を質問されているか分からない若者が多いのです。そのことが確認できるのは、「同盟関係を強化する理由」です。「アジア太平洋地域全体の安定につながる」という視点を教わっていない=理解していないため、「経済関係」と日米安保を中心に結びつけています。安保条約の知識が欠けていることが理由です。
【NPO法人YouthCreate 原田謙介代表理事】
18・19歳が日米安保をより強化すべきだと考えているのは、現在、日米安保が役立っていると思わない、実感できないから、強化をすれば「役立つようになる」と考えているからではないでしょうか。同盟関係を強化していく理由として、「アジア太平洋地域の安定」ではなく、「経済など防衛以外の分野でも重要」が一番となっているのも、「自分自身に関係があること」を重視する考え方の表れではないかと思います。
>次に、あまり考えたくないけれど、平和が損なわれるようなことが起きたら。
いま日本が侵略されたら…
いま、日本が他の国から侵略を受けて戦うことになったら、あなたはどうしますか
>「海外に逃げる」と答えた若者、想像以上に多いかも。
【NPO法人YouthCreate 原田謙介代表理事】
18・19歳で「海外に逃げる」というのが注目ポイントです。非常に素朴な反応ですが、20歳以上の人に比べて「家族・地域・仕事」などのしがらみが比較的少ないことや、国に対する愛着の低さも現れていると思います。また、「侵略されて逃げる=難民となる」わけですが、逃げることをネガティブにとらえていない、若者像もうかがえると思います。
>さらに、戦争放棄などを定めた憲法9条を含む、憲法改正の議論について聞いてみよう。
憲法の議論、身近に感じていますか?
現状満足、将来も幸せ!?浮かび上がる若者像は?
あなたは、今の自分の生活にどの程度満足していますか
あなたは、いまから20年後、自分は幸せだと思いますか
>若者の方が、生活への満足度が高く、将来も幸せになるかもと感じているのはなぜだろう。
【東京工業大学・西田亮介准教授】
18歳・19歳は、いまの自分の生活への満足度が高く、将来の見通しについても20歳以上と比べると楽観的です。これは若い人たちが、まだ「現実」に触れていない側面があるからだと思います。政治への関心や投票への意欲も、若い人は低めにありますが、政治への関心は年をとるほど、知識・情報を得て詳しくなる「加齢効果」があります。教科書などの記述は、昔から大きく変わっていないので、社会・世の中は変わっていますが、「若い人たちの気質」は実は言われているほど、大きく変わっていないのではないかと思います。
【NPO法人YouthCreate 原田謙介代表理事】
生活実感などからなんとなくだした回答かもしれませんが、18歳・19歳が現状の生活や将来予測が20代以上に比べてポジティブなことは肯定的に捉えます。若者が将来を悲観する社会よりはずっと良いと思います。考えなければならないのは、この答えに行きついた要因は何かということです。他の世代と異なる若い世代の感覚を政治行政や他世代が知り、また若い世代も社会や政治のことを知り考えていく機会が教育現場や街の中で増えていくような変化が起きるとよいと思います。課題に直面していなくても政治への意識がある主権者を増やすための不断の努力が民主主義社会には必要です。
【明治大学・藤井剛特任教授】
18歳・19歳は「もっとよかった時代」=「高度経済成長期やバブル」を知らないから「今のままで幸福」と答えていると思います。教育や政治が「よりよい社会」を示せていないことも問題ですし、昔を知っていたり、いまの生活が苦しかったりしないと政治には関心が持てないところもあるとも思います。今後は多様な情報源に接している人と、スマホだけしか情報源がない人とで2極化がより進む可能性があります。これを防ぐためにも、政治や選挙の意義を理解してもらう、若者向けの主権者教育は重要だと思います。
>いまの生活には満足で、将来も幸せ。言うことないような気もするけど、そんなに楽観していい話でもないらしい…そんな18歳・19歳への世論調査、全文は以下をご参照ください。
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(関連リンク)
日本国憲法70年 みんなの憲法
国会での議論や基礎知識など、憲法について分かりやすく解説するNHKのWEBサイト。憲法についての世論調査の結果を掲載しています。