トップ > 滋賀 > 8月17日の記事一覧 > 記事

ここから本文

滋賀

14年間の猪子山観測、冊子に 能登川の石井さん

長年にわたる鳥の観測を生かし、冊子を作った石井さん=東近江市躰光寺町で

写真

 東近江市能登川地区で自然保護に取り組む「伊庭内湖の自然を守る会」が、地元で見られる猛禽(もうきん)類をまとめた冊子「秋の猪子山 タカの渡りと伊庭内湖周辺のタカ」を発行した。日本野鳥の会滋賀の会員でもある石井秀憲会長(80)=同市躰光寺町=が十四年間続けた調査活動の集大成だ。

 広島県出身の石井さんは大阪の自動車部品メーカーに就職後、二十八歳で彦根市に転勤になった。趣味の釣りで訪れた伊庭内湖の美しさに魅了され、一九六五年から能登川地区に住んでいる。

 鳥の観測を始めたきっかけは、定年退職後の九八年秋、近くの猪子山(二六七・五メートル)の上空を、大型の鳥がたくさん群れて飛ぶのを見つけたこと。南を目指して一斉に飛ぶ迫力に興味を持った。群れの正体がタカだと分かり、その姿を追い続けた。

 石井さんによると、秋にタカが東南アジアなどを目指して渡るルートは大きく分けて二つ。一つは、北海道や青森県から長野県の白樺峠を越えるもので、もう一つは、関東から愛知県の伊良湖岬を通る。二ルートに挟まれた場所にある猪子山では、多くのタカが見られるという。

 中でも、風が猪子山にぶつかってできる上昇気流に乗って、渦を巻きながら飛び上がっていく「タカ柱」が見ものだそうだ。

 石井さんはタカの観測を二〇〇二年九月から開始。タカが飛ばない雨の日をのぞき、九月上旬から二カ月間、猪子山に通い、午前八時から午後四時まで記録を取り続けた。空を見上げっぱなしの体勢。「のめり込んでたら、首が痛いなんて気にならん」と笑う。

 一人きりだった観測も、いつしか仲間が増え、今では十人ほどのグループに。後進に託そうと自身は昨年、毎日の観測から身を引いたが、地元の小学校や公共施設から依頼される講話や観察会に生かしたいと冊子作りを思い立った。

 猪子山で多く見られるタカ科のサシバ、ハチクマ、ノスリを中心に、ハヤブサやオオタカも紹介。迫力あるタカ柱や、愛好家でにぎわう山頂付近の様子など、守る会会員が撮影した写真も交えた。猪子山へのアクセスなどガイドブックとして役立つ情報もある。

 石井さんは「能登川の自然に関心を持ち、ぜひ出掛けてもらいたい」と話す。A4判、四ページ。希望者には無料で進呈する。(問)石井さん=0748(42)0259

 (小原健太)

 

この記事を印刷する

中日新聞・北陸中日新聞・日刊県民福井 読者の方は中日新聞プラスで豊富な記事を読めます。

新聞購読のご案内