一面<語り継ぐ 戦後72年> 憲法の理想、これから実現十五日の終戦記念日は戦没者の慰霊だけでなく、戦争体験を継承して平和への決意を新たにする日でもある。旧満州(現中国東北部)から引き揚げてきた作家で作詩家のなかにし礼さん(78)=写真=が、自らの体験と憲法への思いを語った。 終戦直前、ソ連軍が満州に侵攻するや日本軍は真っ先に避難列車で去った。当時六歳のなかにし少年は「軍人への夢や希望は崩壊した」と振り返る。その列車に日本人開拓民が後から押し寄せると、最後尾に乗っていたなかにしさんは将校から「指を振り払え」と命じられる。「はがされる人の指の感触も、顔も覚えている」。心身に罪の意識が刻み込まれた。 そのうえで「あの戦争でアジア全体で二千万人以上が亡くなった。大変な犠牲を払い、手に入れたのが日本国憲法」と言及。憲法について「奇跡的な、最高の芸術作品。戦後日本の世界に向けた再出発の宣言書だ」と表現した。 戦前の軍国主義に「美しい日本」を求める昨今の風潮に「愚かな戦争でどれだけの若者が無駄死にし、飢え死にしたか。忘れるのが早すぎる」と嘆く。そして「日本の理想はまだ実現されていない。この憲法のもとにこれから実現するべきだ」と訴えた。
|
|