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【社会】

戦争って何? 想像を ペリリュー島舞台の漫画 反響大きく

「ペリリュー-楽園のゲルニカ-」を手にする漫画家の武田一義さん=東京都千代田区で

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 太平洋戦争後期の一九四四年、日米両軍が多数の犠牲者を出した西太平洋のペリリュー島(現パラオ共和国)での戦いをテーマに、青年誌で連載中の漫画「ペリリュー-楽園のゲルニカ-」(白泉社)が反響を呼んでいる。かわいらしい絵柄ながら、壮絶な戦場を描き、青年誌としては異色の題材。作者の武田一義さん(41)は「兵士は、自分たちと変わらない普通の人だった。今も世界で起きている戦争に想像力を向けてほしい」と話す。(小松田健一)

 きっかけは二〇一五年四月、戦没者慰霊のため天皇、皇后両陛下がペリリュー島を訪問されたことだった。ちょうど次回作のテーマに戦争を考えていた時、目に留まり、昨年二月から青年誌「ヤングアニマル」で連載を始めた。副題の「楽園のゲルニカ」は一九三七年、スペイン内戦に介入したドイツ軍の無差別空襲を受けた都市ゲルニカと、美しい自然に囲まれたペリリュー島を重ね合わせた。

 主人公の「田丸一等兵」は、漫画家を目指す二十一歳のおとなしい青年。武田さんは「田丸は兵士として人生を全うするつもりがない。読者が自分たちに置き換えて読める主人公にしたかった」と説明する。

 次々と倒れる両軍兵士、傷病兵の集団自決…。死が日常だった戦場を描写しながら、漫画として成り立たせることに苦心した。「残酷さを伝える一方、戦場で亡くなった人、その遺族への謙虚な気持ちも忘れてはいけない。常に悩みながら描いている」

 ペリリュー島の戦いを研究している「太平洋戦争研究会」の平塚柾緒(まさお)さん(79)が、戦闘経過や兵士の服装、兵器の考証などで協力。平塚さんは「漫画にすると聞かされた時は驚いたが、一読者として引き込まれていった。若い世代が、これを入り口に戦争へ目を向ければいい」と期待する。

 担当編集者によると、反響の目安となる読者アンケートの数は、一回当たり二百~三百本と連載作の上位。「グラビアを目当てに買い、たまたま読んだら面白かった」という声もあるという。今年六月には本年度の日本漫画家協会賞優秀賞を受賞した。

 物語はこれから、日本軍の組織的戦闘が終結後、田丸らが生き残るために身を潜める様子を描いていく。武田さんは「個々人の生き方に迫りたい」と意気込んだ。

 <ペリリュー島の戦い> フィリピンの東に位置するパラオ諸島・ペリリュー島は、日本軍が大規模飛行場を置く重要拠点だった。約4万人を投入した米軍が1944年9月15日に上陸。洞窟陣地にこもった約1万人の日本軍守備隊は緒戦で米軍に大きな被害を与えたものの、次第に物量に勝る米軍が圧倒した。持久戦を命じられた守備隊には補給がなく、11月24日に指揮官らが自決。生還者は軍属の朝鮮人労働者を含めて446人だった。

 

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