なんでひとはふくをきるの?なんでかなしいとなみだがでるの?きみも「なんで?」でいろんなぎもんをかんがえてみてくれ。
うんじゃあな〜!
(木づちの音)
(裁判長)それでは開廷します。
これから始まるのはちょっと不思議な裁判。
裁かれる被告人は乙姫。
玉手箱を使って浦島太郎を殺そうとした罪に問われている。
私は滝沢奈緒。
今回裁判員の一人に選ばれた。
私たち裁判員の下す判決が被告人の人生を大きく左右する。
責任重大だ。
検察官今回の「浦島太郎」裁判で乙姫はどんな罪を犯したというのか述べて下さい。
はい。
起訴状を読み上げます。
被告人の乙姫は竜宮城のあるじ。
カメが地上から連れてきた浦島太郎と出会いました。
乙姫は浦島と恋仲になり夫婦同然の暮らしを送るようになりました。
しかし3年後両親の事が心配になった浦島は「地上に帰る」と別れを切り出しました。
その事に強い恨みを抱いた乙姫は浦島を殺す事を決意。
殺傷能力の高い煙が詰まった玉手箱を渡したのです。
地上に戻った浦島は煙を浴び急激に老化。
甚大な苦痛を受けました。
乙姫が犯した罪は刑法第199条第203条の殺人未遂罪にあたります。
(裁判長)被告人今検察官が読み上げた事実に間違いはありませんか?…はい間違いありません。
(裁判長)弁護人の意見はいかがですか?はい。
本件は浦島太郎の心ない言動で追い詰められた末の犯行であり十分に同情の余地があります。
刑を軽くして執行猶予を求めます。
人を殺そうとし普通なら刑務所に入る乙姫を執行猶予にしてもいいんだろうか?まず検察官は被害者である浦島太郎を証人に呼んだ。
浦島さんどうしてあなたは竜宮城へ行ったんですか?漁を終えて浜辺を歩いていたらカメが子どもたちにいじめられてたんで助けました。
そしたらどうしてもお礼がしたいって連れていかれて…。
まさかこんな目に遭うとは思いませんでした。
地上に帰ったら300年もたってたなんて…。
竜宮城での1年が地上での100年だと聞いていなかったんですか?聞いてませんよ!しかも玉手箱を開けたらこんなじいさんになってたなんて…。
裁判員の皆さん玉手箱の中の煙の正体は地上で過ぎていた300年の時間です。
同じ煙を使った実験映像がありますのでご覧下さい。
(ざわめき)やばいでしょこれ。
つまりこの煙を浴びると一瞬で300歳年を取ってしまうという訳です。
浦島さんは箱を開けた時たまたま浜風が強かったおかげで直撃を免れ老化するにとどまったと考えられます。
でももし直撃していたら…。
あなたが竜宮城にいる間乙姫との関係はとても良好だったそうですね?仲はよかったかな。
じゃあなぜあなたは突然帰ると言いだしたんですか?あれですよ。
地上に残してきた両親が心配でしたから…。
3年も音信不通にしておいて今更心配はないでしょう。
あなたはその直前乙姫から何か告げられたんじゃありませんか?おなかに子どもができたって告げられました。
(ざわめき)じゃあなおさら帰るなんておかしいでしょう。
うれしくなかったんですか?怖かった。
怖い?何が?親になる事とか海の中で一生暮らす事とか…。
いろいろ…。
それで逃げ出したのか。
子どもができて幸せの絶頂にいた乙姫をあなたはどん底に突き落としたんですよ。
あなたが少しでも乙姫の気持ちを思いやっていたらこんな事にはならなかった。
そう思いませんか?続いて弁護人は竜宮城のカメを証人に呼んだ。
浦島太郎に別れを告げられた乙姫はどんな様子でしたか?痛々しいくらい落ち込んでいました。
もう何が正しくて間違ってるのか分からなくなっていたんだと思います。
では次に浦島が地上に帰る時の様子を教えてもらえますか?玉手箱を受け取った浦島は私の背中に乗って地上に向かいました。
すると乙姫様の声が聞こえてきました。
「開けないで!その箱は絶対に開けないで!」と何度も叫んでいました。
犯行を思いとどまろうとしたんですね。
(カメ)そうです。
乙姫は自分の過ちに気付いたんだ。
それは浦島にも聞こえていましたか?聞こえていました。
「オーケーオーケー分かってる」と軽く流して「早く行け」と私に指示しました。
私が玉手箱の中身を知ってさえいればこんな事には…。
(すすり泣き)乙姫が言った「開けないで」という言葉なんですがこれは本当に犯行を思いとどまろうとして言った言葉なんでしょうか?どういう意味ですか?立派な箱を渡されて「開けないで」。
そう言われたら逆に開けたくなるのが人情でしょう。
(カメ)えっ?つまり乙姫は確実に玉手箱を開けさせようとしてあえて「開けないで」と繰り返した。
(カメ)そんな!異議あり。
臆測です。
検察官質問を変えて下さい。
もし本当に乙姫が思いとどまろうとしたのなら「開けないで」ではなく「返して」と言うのが自然でしょう。
そんなのへ理屈ですよ。
あなたは乙姫の裏切った男は絶対に許さないという冷酷な一面を知らないだけなのではありませんか?乙姫様はそんな人じゃありません。
でもな〜さっきの実験を見ちゃうと…。
検察官の言う事も納得しちゃうんだよな。
いよいよ被告人の乙姫への質問だ。
まずは弁護人から。
浦島太郎と過ごした3年間はどんな日々でしたか?一緒にいて本当に楽しかった。
ごはんを食べて「おいしいね」と言ったり2人で並んで散歩したり。
ずっと1人だった私にはそんなたわいもない事がうれしくてしかたありませんでした。
だからおなかに赤ちゃんができた時もただ喜んでもらえると思ってました。
殺意を抱いたのはいつですか?太郎さんが地上に帰る直前です。
私は「あと1分でいいから一緒にいて」って頼みました。
そしたら彼は「じゃああと1分だけね」って言って時計の秒針が1周するのをじっと眺めてました。
もうこれっぽっちも私の事を愛していないんだなって思いました。
幸せだったこの3年は一体何だったんだろうって。
悲しくて悔しくてたまりませんでした。
この人を一生許したくない。
生まれて初めて感じるその気持ちを私は抑える事ができませんでした。
それであなたは玉手箱を渡したんですね?乙姫の傷ついた気持ち。
浦島を恨む気持ちはよく分かる。
それでも人を1人殺そうとした乙姫を許しても…いいのかな?乙姫さんあなたは浦島太郎に裏切られた。
でもあなた自身も大切な人を裏切ったんですよ。
えっ?玉手箱を渡す前にどうしておなかの子の事を考えなかったんです?生まれてくる子どもが自分の父親を殺そうとした母親を愛してくれると思いますか?いいえ。
愛せるはずがないと思います。
乙姫さんあなたは実刑になった場合刑務所の中の病院で子どもを産む事になります。
そして服役中はその子とは離れて暮らさなければなりません。
…はい。
でも今のあなたにはその時間こそが必要だと私は思います。
自分にとって何が一番大切なのか問い続けて下さい。
そして犯した罪をしっかり償って下さい。
そうして初めて母として力いっぱいその子を抱き締めてあげられるのではないでしょうか。
以上です。
これからの乙姫と子どものためにはどうするのがいいんだろう?裁判員の皆さん本件は危険極まりない犯行であり同情の余地はありません。
乙姫は浦島太郎に甚大な苦痛を与えました。
乙姫も刑務所に入り同様の苦痛を負うべきです。
裁判員の皆さん本件は浦島太郎にひどく裏切られた末の犯行でありその心情は身勝手のひと言で済まされるものではありません。
更に乙姫は犯行を思いとどまろうとしました。
これらは十分に酌量されるべきです。
執行猶予を求めます。
(裁判長)これで全ての審理が終わりました。
これから裁判員の皆さんと判決を話し合います。
乙姫を刑務所に送るべきか。
それとも執行猶予にすべきか。
どうすればいいんだろう?
(木づちの音)それでは開廷します。
ある裁判が始まろうとしている。
2017/08/14(月) 09:15〜09:30
NHKEテレ1大阪
昔話法廷「“浦島太郎”裁判」[字]
昔話の登場人物を裁判にかける法廷ドラマ。今回は「浦島太郎」。玉手箱を使い浦島太郎を殺害しようとした乙姫は実刑にすべきか?それとも情状酌量で執行猶予にすべきか?
詳細情報
番組内容
「昔話の登場人物が訴えられたら?」という設定で、丁々発止のやりとりを描く法廷ドラマ。今回は「浦島太郎」。被告人は乙姫。地上に帰る浦島太郎に、殺傷能力の高いガスを入れた玉手箱を渡し殺そうとした罪に問われる。容疑を認める乙姫。しかし、弁護人は、「乙姫には情状酌量の余地がある」として、執行猶予を求めた。乙姫は、実刑にすべきか?それとも刑務所には送らない執行猶予にすべきか?出演:奥貫薫、平田満 ほか
出演者
【出演】奥貫薫,平田満,清水くるみ,横内正,光宗薫,森大,平川和宏,【声】前野朋哉
ジャンル :
趣味/教育 – 中学生・高校生
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