連載
» 2017年08月16日 08時00分 更新

Enterprise IT Kaleidoscope:「Windows 10 Pro for Workstations」はなぜ生まれたのか (1/2)

現地時間の8月10日、Microsoftが「Windows 10 Pro for Workstations」を発表した。Windows 10の新たなエディションとなるのか、追加ライセンスのような形になるのかは不明だが、従来のWindows 10よりもサーバOSに近い位置付けの製品になるのではないかと見ている。

[山本雅史ITmedia]

 9月にリリースが予定されているWindows 10 Fall Creators Update(以下Win10 FCU)のプレビューが大詰めにさしかかったところだが、Microsoftから新たなWindows 10に関する発表があった。米国時間の8月10日にアナウンスされた「Windows 10 Pro for Workstations(以下Win10Pro WS)」だ。Win10Pro WSは、ワークステーション向けにチューニングされたWindows 10 Proという位置づけ。今回は、このWin10Pro WSの詳細を見ていこう。

Windows 10 Pro WorkStation Microsoftのブログで公開されたWin10Pro WSの特徴。ReFS、Presistent Memory、SMB Direct、CPUソケット数と最大メモリ容量の増加などが特徴となっている(Microsoftのブログから転載)

CPU 4ソケット、メモリは6TBをサポート

 Win10Pro WSの最大の機能としては、最大4ソケットのプロセッサをサポートし、最大メモリ容量も6TBにまで拡張されていることが挙げあられる。現在のWin10 Proは、最大2ソケットのプロセッサしかサポートしておらず、最大メモリ容量も2TBまでになっている。

 現状、Windows 10に関しては、ソケット数の制限はあるが(Homeは1ソケット、Proは2ソケット)、コア数/スレッド数に関する制限はない(OSとして最大256スレッドとなっている)。一方、Windows Server 2016は、ソケット数に制限はなく、スレッド数は最大512となっている。さらに、最大メモリ容量に関しては24TBに拡張されている。Windows Server 2016から、ソケット数での課金から、コア数での課金に変更されている。

Windowsの各エディションがサポートするCPUとメモリ
OS CPUソケット数/論理プロセッサ(LP)数 最大メモリ容量
Windows 10 Home(32ビット版) 1ソケット/32LP 4GB
Windows 10 Home(64ビット版) 1ソケット/256LP 128GB
Windows 10 Pro/Enterprise/Education(32ビット版) 2ソケット/32LP 4GB
Windows 10 Pro/Enterprise/Education(64ビット版) 2ソケット/256LP 2TB
Windows Server 2016 Datacenter(64ビット版のみ) 512LP 24TB
Windows 10 Pro for WorkStation(64ビット版のみと思われる) 4ソケット/LPに関しては不明 6TB
Windows 10の各エディションでサポートしているCPUソケット数と最大メモリ容量。比較対象として、Windows Server 2016の仕様も入れた

新ファイルシステム「ReFS」をデフォルトで利用可能に

 Win10Pro WSの特徴としては、高い信頼性が挙げられている。これを実現する機能として、Windows 8.1やWindows Server 2012から搭載されていた「ReFS」(Resilient File System)をデフォルで利用できるようにしている。

ReFS Win10 Creators UpdateでもReFSは利用できる。一度NTFSでフォーマットしたドライブを再度フォーマットしようとすると、フォーマットとしてReFSが選択できる。ブートドライブなどにはReFSは使用できない

 ReFSは、NTFSよりも高い回復性や可用性を実現しているのが特徴だ。例えば、ReFSでは、ファイルシステムが破損しても、破損した部分だけを抽出して、その部分だけをメタデータなどから修復する。この場合も、ドライブ全体をオフラインにして修復するのではなく、破損した部分だけをOSが修復するため、修復にかかる時間も短くなり、ドライブ全体をオフラインにすることもない。また、ReFSでは、データの整合性を逐次チェックしている。もちろんエラーが見つかれば、できる限り修正を行う。

 ReFSの最大ボリュームサイズは4.7ZB(ゼタバイト。テラバイト、ペタバイト、エクサバイトの次の単位)に拡張されている。NTFSは最大256TBなので、およそ1800万倍。当面ここが問題になることはないだろう。

 なおReFSは、NTFSの機能上位版というわけではない。NTFSでサポートされていたデータ圧縮/暗号化や、データ重複排除など、一部の機能がReFSではサポートされていなかったりする。このあたりは、Microsoftとしては、将来的にNTFSが持つ機能をReFSでサポートしていこうと考えてはいるのだろう。ただ、ファイルシステムの移行は、Microsoftだけで進められるわけではないという問題もある。多くのアプリケーション ベンダーがReFSをサポートすることで、進んでいく。現状では、まだまだReFSはスタンダードとはいえない。

 ReFSが最もその能力を発揮するのが、複数のハードディスクやSSDなどを組み合わせて、大容量の仮想的なドライブを構築するストレージプールだ。ストレージプールでは、複数のドライブを組み合わせ、耐障害性を高めたり、SSDなどを組み合わせて階層化ストレージを構築したりできる。階層化ストレージでは、1つの仮想ドライブをSSDとハードディスクで構成し、アクセス頻度の高いデータはSSDに保存し、アクセス頻度が落ちてくると自動的にHDD領域にデータを移動する。

ストレージプール ストレージプールは、Windows 10 Creators Updateでも使用できる。ただし、コントロールパネルから「新しいプールと記憶域の作成」を選んで設定する必要がある
ストレージプール ストレージプールとして使用するドライブを複数指定する。この画面では、すでに使用しているドライブばかりのため、ストレージプールとしての指定はできなかった。ストレージプールとして利用する時は、複数台の未使用のドライブを用意する必要がある
       1|2 次のページへ

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

「Windows 7」サポート終了 対策ナビ

Special

- PR -

「ウチの会社、競合と比べてセキュリティは大丈夫か?」 グローバル1700社の調査から 見えてきた、日本独自の「弱点」とは

ITmedia Virtual EXPO 2017 秋 事前登録受付中 > 早期登録で当選確率が2倍!

地味で工数がかかるうえ、少しのミスでコンプライアンス違反につながる「IT資産管理」。「それならいっそプロに任せよう」――東京スター銀行が選んだ相手とは?

Windows 10への移行は、今までのOSアップデートとは違います。更新の方法や、気を付けるべきポイントを把握していますか?迫り来る“その日”に備えておきましょう。

既存のドライバ、ライブラリと完全互換、使い慣れたツールでアプリ開発可能。バックアップは自動取得され、自動フェイルオーバー機能でアプリは高可用性に

Azureが進化を続ける理由――それは"あらゆるアプリ開発者"が"あらゆる言語"で記述された"あらゆるアプリ"を"あらゆるプラットフォーム"で作成、稼働できるようにするため

情報収集から移行手順の検討まで、自社ですべてまかなうのは大変です。専門家の助けを借りながら、今まさにWindows 10への移行を検討している企業の事例をご紹介。

働き方の可視化、顔認証によるセキュリティ向上施策など、情シスが今押さえるべき最新ニュースを紹介

Special

- PR -

2020年1月に延長サポートが終了。今からWindows 10移行を着実に進めよう。

ハードウェアレベルのセキュリティリスクを防ぐアプローチとは?

メーカー以外の事業者が保守を行う「第三者保守」、そのメリットと品質とは

ランサムウェア対策、市場動向など、セキュリティに関する最新情報をチェック

面倒な「IT資産管理」をアウトソーシング。コストも減るし、リスクも減る!

東証が実践するアジャイル開発、ちょっと意外なスピードと品質の両立法とは

グローバル1700社の調査から見えてきた、日本独自の「弱点」とは

OSSのコーディング/テスト環境で作られたソフトをAzureで「そのまま」稼働

業務効率化するには?企業間のデータを自動連携するクラウドサービス

BYODやってるけど、皆がセキュリティソフト入れてくれてるか自信ない人は必読

操作のムダや違和感を徹底排除して開発されたERPの"効率化に効く新機能"とは

働き方の可視化で生産性を向上!顔認証など最新技術のニュースをお届けします

ワークショップや移行サービスを利用すると何がいいのか、導入企業に聞く。

「現代の魔法使い」と呼ばれる落合陽一氏の『超AI時代の生存戦略』とは

業務、データ、金、物の流れをリアルタイムに把握しデータドリブン経営を実現

高速WordPress実行環境「KUSANAGI」がAzureを選んだ理由とは?

既存のドライバ、ライブラリと完全互換、使い慣れたツールでアプリ開発可能

製造業で進む現場作業の効率化。課題解決の最適なソリューションとは

ピックアップコンテンツ

- PR -

注目のテーマ