リクルート創業者の江副浩正氏の書いたビジネス書。読書メモをご共有です。Kindle版も出てるんですね。




リクルートの成功の秘訣



●経営理念とモットー
一、誰もしていないことをする主義
二、わからないことはお客様に聞く主義
三、ナンバーワン主義
四、社員皆経営者主義
五、社員皆株主
六、健全な赤字事業を持つ
七、少数精鋭主義
八、自己管理を大切に
九、自分のために学び働く
十、マナーとモラルを大切にする

・業績だけでなく、適性テストや、他者評価によるROD(Recruit Organization Development)で、自らを理解する機会を増やすことにした。RODでは、同じ質問項目に、本人による自己評価と部下による上司の評価を求める。研修では、自己評価と部下の評価を項目事に集計、グループに分かれそのデータをもとに合宿で徹底的に議論し合って、自らの問題点を知り、自己変革の答えを自分で見つけ出す。

・盛田さんも大賀さんも指揮者のヘルベルト・フォン・カラヤンと親交があり、敬愛の念を込めて「カラヤン先生」と呼ばれていた。指揮者には、それぞれのパートの演奏者の能力を最大限に引き出すことと、オーケストラ全体のすばらしいハーモニーを作り出すことの同時的な実現が求められる。そのことは経営にも通じるものであろう。

・重ねて述べるが、ベンチャーで成功するには、時代を一歩先取りする、つまりその事業をはじめる「天の時」が大事だと思える。

・成功した起業家には"名番頭"がいる。松下幸之助さんには高橋荒太郎さんという大番頭が、豊田喜一郎さんには「販売の神様」と呼ばれた神谷正太郎さんがいた。ホンダも、本田宗一郎さんを藤沢武夫さんが影で支えた。(中略)リクルートも私ひとりで創業したと思っている人が多いが、鶴岡公という創業時からのパートナーがいた。

・私はリクルートのPC(プロフィットセンター)制を「社員皆経営者主義」と呼んだ。私の退任時、PCは500ほど、グループ会社のPCも加えると600を越えていた。そのような形の「社員皆経営者主義」で社内に経営者が育ち、リクルート自身も高い業績を上げるようになっていった。

・私は新入社員が初受注したとか、大口受注したとか、あるいは新しい手法を考えたとかいったときには、みんなの前で手を叩いて褒めるだけではなくて、机をどんどん叩いて「よくやった」と褒め讃えた。池田友之からは「大げさすぎる」と言われたが、私は大げさでいいと思っていた。逆に叱るときには、個室に呼び出し誰にもわからないように叱っていた.大勢の前で叱るのは社員間に徹底させるのには効果的だが、本人の人格を傷つけるし、自由闊達な組織風土にはマイナスの要因になる。

・リクルートでは、社員が退職することを「卒業」という。各人の「卒業式」は、ホテルの小宴会場やレストランで、会費制で行われる。百人くらいが集まり、「卒業」する人に向かってそれぞれが壇上で好き勝手なことを言い、二次会へと流れていく。入社式より盛大なイベントになることが多い。

・リクルートは雑誌の点数は日本一、印刷ページ数でも日本一。しかし平均発行部数は少ない。入力工場を持ち、印刷工場を持たないことがいまでもリクルートの強みである。リクルートをメーカーに見立てれば、ファブレスの会社、そして少人数のグループで製品を作るセル方式の会社といえよう。

・人に対する好き嫌いがあってもそれを表に出してはいけない。社員に対しても取引先に対しても非常な面と温かい面の両面を持たなければならない。ときに攻め、ときに守る「攻撃と防御」の両面に強くなければならない。このような多面的な要素を求められるのが経営者の職能である。したがって経営者は孤独である。


僕の周辺でもリクルート出身者は多いのですが、みなさん独立心が旺盛で、話していて楽しい人ばかりです。企画屋という感じの人が多い印象。また、前職時代はリクルートの方々と一緒に仕事をすることもありましたが、彼らのクオリティチェックの厳しさには正直恐れ戦いておりました。かなり鍛えられましたね…。




古典的な一冊ですので、経営に関わる方は読んでおいて損はないでしょう。「手を出すのが早すぎて失敗した事業」のエピソードは考えさせられます。