島地: 山は男だらけの世界だと思うけど、アッチのほうは?
野口: テレビとビデオデッキがあれば、やっぱりアダルトビデオですね。息抜きにはもってこいというか、その瞬間だけは別の世界に飛んでいけるから。ただヘッドホンをしないと、ヒマラヤにAV女優の艶めかしい声が響くことになります。
日野: それはなかなかシュールな光景ですね。でも、標高が上がっていくとビデオは無理ですよね。
島地: そこはやっぱりエロ本の出番だろう。
野口: おっしゃる通りです。標高の高いキャンプには、それこそ世界各国の、いろんな言語のエロ本が山積みです。書いてあることはわからなくても、写真で載ってるのは万国共通なので。
島地: その中で一番人気なのは日本のエロ本?
野口: 実はそうなんです。
日野: 低酸素状態なら、そのものズバリの洋ピンのほうが話は早いのでは?
島地: まったくお前は、情緒というものがわかってないな。いい歳して風俗通いなんかしてる場合じゃないぞ。
野口: 情緒は大切ですね。そのものズバリだと、すぐお腹いっぱいな感じになってしまいます。そりより、見えそうで見えない日本のエロ本のほうが、「ああ、この薄い布一枚の向こう側はどうなってるのかなぁ」と妄想することになるので、置かれている環境の厳しさを一瞬でも忘れられるんです。実はそこが重要。
いろんな国のエロ本を見ましたけど、女性の肌をしっとり見せるために、霧吹きで濡らしているのは日本だけですからね。
島地: 確かに、「濡れる」っていい響きだよね。低酸素で意識がもうろうとしていても、そういう感性を失わないとは、やっぱり野口は、このシマジが見込んだだけのことはあるね。では改めて乾杯といきましょう!
〈後編につづく〉
(構成:小野塚久男/写真:峯竜也)
〔撮影協力〕D'arbre's Bar